【JリーガーのSPLYZA Teams活用事例】ロアッソ熊本・浅川隼人選手&分析担当三宅さんインタビュー

2021.02.26 written by SPLYZA Inc.

2019シーズンにYSCC横浜でプロ初出場し、いきなり13ゴールをマーク。昨季は主戦場をロアッソ熊本に移し、移籍先でもシーズン11ゴールを挙げた浅川隼人選手。選手個人としてもSPLYZA Teamsを利用した自分自身のプレー分析を行う分析チームを立ち上げ、日々映像でのフィードバックに力を入れているそう。今季2021シーズンも躍進が期待されるそんな浅川選手と、分析を担当している三宅さんにインタビューを行わせていただきました。



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ーリーグ戦開始前のお忙しい時期にありがとうございます。手始めに浅川選手のことを伺わせてください。まず、ご自身が「プロサッカー選手になりたい!」と思った初期衝動はどういったものでしたか?

浅川選手
おそらく8歳くらいだったかと思いますが、当時セリエAのレッジーナに所属していて、日本代表でも大活躍していた中村俊輔選手(現:横浜FC)に憧れてサッカー選手になろうと思ったのが最初のきっかけですね。そのあとすぐにサッカーを始めたのちに、中学でジェフ千葉のジュニアユースに所属し、高校は八千代高校に進学しました。当初のプランとしては高校からプロを目指すというのが理想的だったんですが、今後のキャリアも考えて桐蔭横浜大学に進学しました。

大学2年か3年の際に、一般就職しながらサッカーができるチームがあることを知り、まずはサッカーを続けながらプロを目指しても良いのではないかという選択肢を持つことができました。そのタイミングで改めて、僕にとっての初期衝動を与えてくれた中村選手がサッカー少年達に夢を与えていたように、自分自身もプロとして子供たちに夢や希望を抱いて欲しいと強く思いました。そこで「だったら最低限Jリーガーにはならないといけない」という具体的な目標を設定しました。




ー今後のキャリアを占ううえで、非常に大切な時期だったんですね。

浅川選手
はい。そのあと4年次に様々な企業チームのオファーを全て断って、YSCC横浜のセレクションを受けました。一般向けのものだったのですが、セレクションを受けた300人中、有難いことに僕1人だけ合格をもらえて、結果的にYSCC横浜に入団しました。

1年目の2018シーズンは全く試合に出場できなかったりと苦しい時期もありましたが、FWなので試合に出場したらゴールという結果を出すということにこだわって鍛錬を続けました。お陰様で、現在はロアッソ熊本でプレーできています。もちろん、プロとしても上を目指し続けたいので、チームのJ2昇格のため、日々頑張っています。




ー浅川選手のブログを拝読しましたが、サッカー選手のキャリアとしては苦難の連続だったとありました。高校時代はキャプテンを降ろされたり、大学では同期に先を越されたりと。

浅川選手
振り返るとキツいことばかりだったかもしれませんが、1番のターニングポイントはYSCC横浜での1年目だったかと思います。大学や高校ではトップチームで出場できなくても、カテゴリーを下げれば公式戦には出場できますが、その年は公式戦に1試合も出場できなくて本当に焦りました。

今思えばその経験をしたことによって、改めて自分にしかない特徴というか、強みを見つめ直すきっかけになりました。自信を持つためにもまずはプロ初ゴールを目指そうと。そして、それが実行できたのは2年目の開幕戦です。プロとして公式戦初出場で初ゴール挙げたのですが、そのときに自分がこれまでやってきた事が間違いではなかったと確信に変わりました。順風満帆ではないからこそ、自分なりに模索して得たものは非常に大きいと感じています。




ー浅川選手は「レンタルJリーガー」等といった興味深い取り組みを数多く行われていますが、SPLYZA Teamsを利用するきっかけになった『はやととあなた』というオンラインサロンについてもお聞かせ願えますでしょうか。

浅川選手
僕が主宰するオンラインサロンは「参加メンバーが叶えたい”夢”を追い続けられるプラットフォーム」として運営しています。例えばサッカーの分析が大好きな学生さんが「プロのアナリストになってJリーグクラブで働きたい!」と思っても、プロのクラブやプロの選手といきなり関わり合いを持つことは難しいですし、そもそも目標に対して何をすればいいかもわからない人が多いと聞きます。それだったら、僕自身を介して、彼らのサポートができればいいなという部分と、せっかくなので彼らの分析力を活かして、1人のサッカー選手としてのプレーの幅を広げることが出来ればと思い、僕個人のプレー分析チームも立ち上げています。







ー現在では映像を活用した分析をみっちり行われているとのことですが、もともとそういった視点で試合を観戦されていたのでしょうか?

浅川選手
いえ。それが、腰を据えて試合映像を見始めたのはDAZNのサービスが始まってからなんです。それまではなかなかフルで試合をみる機会がありませんでした。僕自身がプロになる少し前から日本でもDAZNのサービスが展開されて、その頃からよく利用しています。1試合をフルで観るというよりは、得点シーンの前後をピックアップして「このFWの選手はどう動いてゴールを挙げているのか」などをチェックする感じですね。




ーご自身の分析チームを通じて、浅川選手の中ではどういった変化がありましたか?

浅川選手
いままではプレーの言語化はできていたかと思うのですが、自分がチームの戦術的にどうフィットしているのかが曖昧で…具体的に言うと、自分のゴールシーンしか振り返っておらず、意識して試合全体を見ることが殆どありませんでした。

ちなみに分析メンバーに欧州サッカーに精通されているメンバーがいて、ロアッソ熊本と同じフォーメーションで戦うチームの、特定の選手の細かなプレーを分析してくれていたんです。分析チーム立ち上げ当初から、そういった分析担当の方々の情報共有が非常に役にたちました。

チームが本格的に稼働してからは、ゴールだけではなく守備やボールの受け方など、FWとしてのゲームの関わりにロアッソ熊本のチームスタッフの皆様も気づいてくれて、普段の分析のフィードバックが、自身のプレー自体に影響し始めたんだと感じました。監督からもゴール以外の他のタスクもこなせるという評価もして貰えています。SPLYZA Teamsを通じて分析メンバーとコミュニケーションを取り続けた結果、選手として良い方向に向かうことが出来ていると思います。




ー昨シーズンの第28節、今治戦のゴールが非常に印象的でしたが、ご自身で昨季を振り返ってみていかがでしょうか?

浅川選手
昨シーズン、分析チームによく言われていたのは「できるだけ相手の最終ラインと中盤の間で受けるほうが良い」ということですね。いままでは前線でのポストプレイが主で、相手DFに背を向けてプレーしていましたし、受ける際もDFを引き連れながら動いていたので、上手くボールを収められずボールを失うことが多かったように思います。

分析チームの助言を実行出来るようになってからは、徐々にボールを持った状態でフリーで前を向けるようになってきました。例の今治戦のゴールは、相手が特定のスペースでボールを受けた際に、前を向かせてくれることが前半を通して判りました。あれは分析チームとのコミュニケーションによって生まれた得点でもあります。分析チームさまさまです。




ー浅川選手の分析チームは、普段はどのような活動をされていますでしょうか?

浅川選手
今は7名で、週に1度必ずミーティングをしています。オフの期間は、去シーズンの(浅川選手自身のプレー)全てのボールタッチをエリアごとに集計してもらったりしました。あとはみんなで一緒に(リモートで)欧州サッカーの試合をフルで観戦するというのもやりましたが、収穫もありましたし楽しかったです。試合を観ながら「これはロアッソのこういう戦い方に近いよね」であるとか「FWがこう動いたけど自分だったらこう動いている。でもこういう動きもあるよね」といったやりとりを時間をかけて分析チームと行いました。

SPLYZA Teamsはタグ機能を駆使しています。分析チームにはボールタッチ以外に「動き出し」のタグ付け担当や「クロスに対しての動き」等のタグ付け担当がいて、そのタグを見ることで自分の動きにフィードバックするように心がけています。一般的な分析ツールだと作業者が1人で対応することになると思いますが、遠隔で複数人同時に映像を編集できるのは画期的だと思います。今はあまり大勢で集まったりできない分、こういった形で作業を分担したり、みなさんの知恵をお借りできるのは非常に有難いですね。







ーさきほど欧州サッカーのお話も出ましたが、浅川選手が普段から参考にしている選手はいたりしますか?

浅川選手
リバプールのロベルト・フィルミーノ選手ですね。ゴールの部分はもちろん、どちらかというと動き出しの所を主に見ています。どうやったらもっとパスをもらえるか、成功率を高められるかなどを研究していました。彼はファーストディフェンスのトリガーでもあるので、攻撃だけでなく守備面も参考になるのでとてもためになります。

あとはマンチェスター・ユナイテッドのエディソン・カバーニ選手ですね。彼に関してはボールを受ける際にボールサイドの逆に動くプレーがよくあるので勉強になります。他にもセンターフォワードの選手でいうと、圧倒的に僕に足りていない引き出しをたくさん持っている、マンチェスター・シティのセルヒオ・アグエロ選手も参考にさせてもらっています。




ー分析担当の三宅さんにもお話をお伺いできればと思います。三宅さんが浅川選手のプレー分析を始めたきっかけと、現在の分析チームでの役割を教えてください。

三宅さん
僕個人としてはサッカー経験がなく専門的な素養は元々無かったんですが、サッカーの試合を分析するのが大好きで、映像を使った分析や書籍、戦術的なアプローチで書かれているブログなどをたくさん読んで常に勉強していました。色々と縁があって今の分析チームに所属することになってからは、主に欧州サッカーの試合を参考に、ロアッソ熊本での浅川選手の役割に落とし込めそうな動きをピックアップしたりしています。あとは浅川選手の実際の試合でのプレー分析などです。




ー浅川選手に分析内容を伝える際、工夫している事などはありますか?

三宅さん
さきほど浅川選手の話にも出ましたが、リバプールのフィルミ―ノ選手のプレーをタグ付けする場合だと、ポストプレーで背負う場面だったらどの位置にいることが多いかを重点的にピックアップして共有しています。例えばフィルミーノ選手は試合のなかで平均的に15回前後、相手DFを背負ったポストプレーをするのですが、そのうち10回程度のポジショニングをタグ付けして「この◯◯のシーンでは相手が△△の動きをしているので有効的」と全てのシーンを解説するようにしています。

SPLYZA Teamsで共有を行う際に映像に直接、図や書き込みができるのは大きいです。話しながら流し見しているときに図を描いているポイントで映像が勝手に止まってくれるのが便利で、多少説明が長くなっても問題ありません。字幕機能もあるので必要事項を前もって書けるのも、自分の意図を伝えやすい要員になっています。







ー分析担当として、分析チームとしての方向性を改めてお聞かせください。

三宅さん
様々な試合における多岐にわたる選手の映像を分析して、結果として浅川選手のプレーの幅が広がれば良いなと。いまのところ分析チームに"分析のプロ"はいませんが、みなさんサッカーを見る目は確かだと思うので、プロのサッカー選手である浅川選手に我々からの情報を取捨選択してもらって、試合に活かしてもらえればと思います。




ーでは浅川選手に最後の質問です。分析チームの今後のビジョン、そしてご自身の選手としての目標をお聞かせください。

浅川選手
分析チームとしては、僕自身のプレーに結果として繋げていきたい点はもちろんあるのですが、メンバーの皆さんが、僕を介してJリーグクラブとのコネクションやメンバー間の横のつながりを作るなどして、各々が掲げている夢や目標へのステップアップにして欲しいと強く願っています。そういう良い循環をどんどん回していきたいですね。

Jリーガーとしてはもっともっと上を目指していきたいです。まずはFWとして得点を多く挙げる事、そして結果としてチームをJ2昇格に導くことが直近の目標です。監督やメンバー、クラブスタッフの皆さんと一丸となって戦っていければと思います。もちろん、僕自身の分析チームも、より高みに導いてくれると信じています。あとは、このインタビューを読んでいただいた方には少しでも良いので、DAZNでロアッソ熊本の試合を観ていただけると嬉しいです。




ー今シーズンもロアッソ熊本の試合、そして浅川選手を引き続きチェックさせていただきますね。本日は長い間お時間いただき、ありがとうございました。