【チームが求めている情報だけを明示する】元中京大学男子ハンドボール部選手 兼 アナリスト・三石さんインタビュー

2022.04.26 written by SPLYZA Inc.

中京大学男子ハンドボール部で選手 兼 アナリストとして活躍し、2022年4月からは大阪体育大学大学院スポーツ科学専攻に進学された三石 祐馬さん。ハンドボール部のない高校に通っていた三石さんが、強豪大ハンド部でアナリストを始めることになったきっかけや実際の活動内容、そしてアナリストとして意識していたことなどをうかがいました。(*インタビューは2022年3月21日にオンラインにて実施)



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ー本日はよろしくお願いします。まずは、三石さんがハンドボールを始めたタイミングときっかけを教えていただけますか?

三石さん
ハンドボールを始めたのは中学1年生の時です。小学生の頃からの友人の多くがハンド部に入ったのと、ハンドボールは中学から始める人がほとんどなので他競技に比べてスタートラインが一緒、というのが選んだきっかけでした。
地元・和歌山県内では常に一・二を争う強豪チームで、有名な監督の下で真剣にハンドボールに取り組んでいましたが、自分たちが中学3年生の代では全国大会に出ることができませんでした。
また、当時JOCの和歌山県選抜チームのキャプテンを務めており、高校に進学後もハンドボールを続けたかったのですが、進学した私立高校にはハンドボール部がなかったため、高校生の間は和歌山の社会人チームに週に一度お世話になっていました。




ー高校生にして、社会人チームに飛び込んでいく行動力はすごいですね。その後、高いレベルでハンドボールをするために中京大学を選ばれたのですか?

三石さん
そうですね。せっかくハンドボールを続けるならスポーツ学部が良いと思い、和歌山の社会人ハンドボールチームの先輩で中京大卒の方がいた縁などもあって、進学を決めました。




ー中京大学ハンドボール部では、当初はプレーヤー専任だったと思います。選手 兼 アナリストをすることになったきっかけは何だったのでしょうか?

三石さん
アナリストを始めたのは大学2年次の10月頃です。その直前の9月に監督との進路面談があり、大学教員になりたい夢を伝えた際に、監督からもらったアドバイスがきっかけでした。
ちょうどその時期にSPLYZA Teamsの説明会の案内が監督に届いており、「大学教員になってハンドボールの指導者を目指すのであれば、こうした分析ツールを扱えるようになっておくと良いのでは?」ということで、一緒に説明会を受けることになりました。







ー当時、SPLYZA Teamsの説明を聞いた感想はいかがでしたか?

三石さん
スポーツには「する」「見る」「支える」の3つの関わり方があると思いますが、こういう形で「支える」こともできるのか、という点に衝撃を受けました。
また、大学2年になって後輩ができていたのですが、全国トップレベルの選手たちが揃っていました。彼らとの競争に勝って選手として試合出場を目指すだけでなく、プレー以外でもチームに何かを還元できそうだと感じ、当時「アナリスト」という役職がチームにあったわけではないのですが、ツールの活用に取り組んでみようと思いました。




ーSPLYZA Teamsの導入以前は、自チームや相手チームの分析はどのようにされていたのですか?

三石さん
中京大学ハンド部では選手一人一人に役職が与えられていて、その中に「分析」という役職もありました。対戦相手のビデオを2~3試合を見て、危険なプレーヤーや特徴的なところを切り出して映像化して見る、という感じです。そこにデータ等は何もなくて、分析担当が数試合プレーを見た主観を基につなぎ合わせられた映像をみんなで共有していました。




ーでは、三石さんがアナリスト活動を開始した後の取り組み等についてお聞かせください

三石さん
まず、私はアナリストとして、「チームで求められている情報だけを明示すること」をとても大切にしています。
たとえば、対戦相手選手のシュートコースの割合等をきれいに出してチームに伝えることも可能ですが、それが100%正解だとは思いません。上のレベルに行けば行くほど、データ上は「特定のコースへのシュートが多い」という選手であっても、キーパーをよく見て臨機応変にシュートコースを変えてきます。
アナリストの自分が多岐にわたるデータをチームに伝えすぎても、選手は覚えきれないだろうし、試合の1発目でデータと反する動きを相手にされた時に「データへの不信感」が募ってしまう恐れもあります。
チームから必要とされる情報が、たとえば「自チームのミスの数」のような些細なことであっても、それをきっちり提示できることがアナリストにとって大切だと思います。







ーチームでのミーティングの進め方に変化はありましたか?

三石さん
何か特別な方向転換をしたわけではないですが、従来のものにデータを加えて説得力を持たせながら話をするようになりました。(自分を含む)分析班がしっかり準備したものに対して、アナリストの私がデータで裏付けをしていくようなミーティングの進め方ですね。




ーミーティングでの伝え方で意識されていたことはありますか?

三石さん
中京大ハンド部では、オフェンスリーダーとディフェンスリーダーがビデオを中心に発表しており、ミーティングは長くなりがちでした。なので、「どれだけ簡潔に伝えるか」を意識していました。
たとえば、「タグ付けをしてデータを出す」までであればSPLYZA Teamsを使ってタグ付けをするだけできれいに出るので、その作業は1年生に担当してもらい、“自分のシュート成功率”のような簡易なデータはSPLYZA Teamsのアプリが入った各選手のスマホで自分自身で確認してもらいます。
その上で、ミーティングでは自チームと相手チームのデータを比較し、相手の特徴を踏まえてどういう戦い方をするのか、自チームの長所を活かして相手の長所をどう消していくのかを、簡潔に5分以内で伝えるようにしていました。
あとは、練習中の空いた時間などに、各ポジションの選手に相手チームの細かい特徴を伝えて補足していました。




ーなるほど。他にもいろんな試行錯誤をされてきたと思いますが、アナリストをしてきて面白かったことや、やりがいに感じたことはどんなことですか?

三石さん
従来とは違う視点で、データでハンドボールを見れるようになったことです。
また、いち選手としてだとミーティングでもそこまで発言力はなかったですが、分析を専門的に行う中で他の選手よりもハンドボールを深く知り、別の視点で発言できるようになれたことにも面白さを感じました。
あとは、大学でスポーツのことを勉強していたので、例えば他競技に関する知識を学んだ際に、「ハンドボールに置き換えたらこうなるのでは?」と思いながらそれをデータで確認し、知識とデータが結びつく瞬間には感動を覚えました。自分が思っているだけではなくて、データで証明できることの喜びはやはり感じますね。この部分は、大学院でまだまだ研究を続けていくことになると思います。







ーアナリストとして活動する中で、印象に残っているエピソードなどはありますか?

三石さん
自分が入学時には少し成績を落としていたチームにおいて、自分たちの代で久しぶりにインカレベスト8に残り、日本選手権でも良い試合ができたのですが、その要因の一つとして「分析がすごく役に立った」と言ってもらえたのが嬉しかったです。後輩たちも、この分析の伝統を今後も引き継いでいきたいと言ってくれているので、やってきて良かったと思います。
また、アナリスト活動とは少し異なるのですが、分析で映像を見るついでに映像編集をしてチームのモチベーションビデオを作り、Instagramに投稿していました。コロナ禍で試合を見に来れない保護者の方向けに始めた取り組みなのですが、多くの方から「ビデオ見てるよ!」と声を掛けてもらえたことも嬉しかったです。さらに、そうした活動がきっかけで、企業の方と連携してチーム作りをご一緒させてもらうことも大学4年次には増え、多方面でチームのサポートができるようになりました。
アナリストとして視野が広がり、チームに貢献することの喜びを知れて良かったです。



※中京大男子ハンド部Instagramアカウントはこちら



ーではここからは今後について。大学院で学ぶ内容と将来の展望についてお聞かせください。

三石さん
将来的には大学教授になり、ハンドボールの監督をしたい、という気持ちが一番強いです。
目先の話で言うと、学部生時代に経験したアナリスト活動や、企業との連携にも関心はあるのですが、スポーツの中でも「スポーツ心理学」に興味があり、その分野に進みます。




ースポーツ心理学について少し教えていただけますか?

三石さん
すごく幅の広い科目だと思うのですが、私の学部時代の卒業論文では、心理的競技能力を測る「DIPCA.3」というものを題材にしました。
スポーツの「心」「技」「体」の「心」の部分ですね。「技(技術)」と「体(体力)」については、トップレベルに行けば行くほど拮抗してくるので、最後に勝負を分かつのは「心」の部分だと思っています。
ハンドボール以外の競技でもメンタル面の重要さが注目されていますが、大学院で専門的に学び、ゆくゆくはハンドボール界に還元していければと思っています。




ー最後に、ハンドボールに限らず、アマチュアスポーツチームでアナリストをしている人や、今後目指している人に向けて一言お願いします!

三石さん
私自身、ハンドボールを高校では満足に出来ていなくても、大学ハンド部でアナリストとしてチームに貢献できるまでになれました。データの事細かな詳細まで出せる必要はなく、チームが求めている情報を何か一つでも明示できれば、それはもう立派なアナリストと言えると思います。「アナリストだから…」とかしこまらず、気軽にチャレンジしてみて欲しいです。チームに貢献できる新しい形だと思いますし、スポーツの新しい一面が見れたりもしますよ。