【初の選手権全国大会出場!】近江高校サッカー部 前田監督&現役大学生分析官 金侑輝さんインタビュー

2020.12.10 written by SPLYZA Inc.

2016年に学校指定強化クラブとなり、その2年目には1・2年生のみでインターハイ滋賀県大会を制覇。その後着実に力をつけ強化5年目となる2020年、ついに冬の選手権(全国大会)出場を決めた滋賀県近江高校サッカー部。2015年からチームを率いる前田監督と、チームの躍進を裏で支えた現役大学生アナリストの金さん(筑波大学蹴球部2年生)にインタビューを行いました。



ー改めて、全国大会への出場おめでとうございます。まずは近江高校に就任してからの、これまでの道のりを振り返っていただけますでしょうか。

前田監督:
ここまで長かったですね。一期生が70人来たところから始まって…特に就任一年目は思い入れがあります。当時はデータ分析といったものは無縁で、どちらかというと根性論というか気持ちで戦うというところからのスタートでした。そこから徐々に良い方向に変化はしているとは思います。


ーでは、今年を振り返ってみていかがでしょう。

前田監督:
よく言われるような「感染症の影響でリーグ戦や公式戦がなくて大変だった」ということは個人的には感じませんでした。逆に、練習試合でいろんなことが試せましたし。強いて大変だったことを挙げるならば、彼らにとっての選手権が今年一発目の公式戦だったということですかね。その難しさはあったかもしれません。ただ、去年決勝に出ていたことが良い教訓になっていて、今回の決勝戦が2回目という選手が半数ほどいたので、それは良い方向に働いたと思っています。


ー近江高校サッカー部でのSPLYZA Teamsの活用方法を教えていただけますか。

前田監督:
普段はコーチが気になるシーンを動画付きコメントで残して共有したり、選手が気になったシーンを書き込んだりしています。土日しか来れないGKコーチもよく使ってますね。

大会期間中は、主に対戦相手のスカウティング分析で使用していました。具体的には「相手のどの選手がボールに関わっているか」「誰から縦パスを入れているか」といったデータをレポートで確認して、スタッフが感じていたことの裏付けにしていました。あとはAチームのビデオMTGの映像をアップして他のカテゴリーの選手も見れるようにして、チーム全員が情報共有できるようにするなどフルに活用できていたかと思います。


ーデータ分析の部分で言うと、今年から分析スタッフとして金さん(筑波大学蹴球部2年生)に参加してもらったとのことですが、何か変化はありましたでしょうか。

前田監督:
彼が分析スタッフとしてデータ分析のレポートを挙げてくれるようになって以降、自分たちの得意な形が明確になったことは大きな発見でした。主観的な部分が客観的なデータで裏付けされて確信になったというか。今回の選手権(予選)の期間中でも交代を使う時に、得意な形が出ていないときはそれを出すにはどうしたらいいのかを考えて交代選手を選んだりして試合を進めることができました。

あとは個人のデータもレポートで出してくれるので、個人に対しての働きかけがしやすかったですね。例えばチームの中心的な選手が、これまでの成績はよかったのに選手権に入ってガクンと落ちたことがありました。その時に彼に「お前の力はこの選手権で出しきれていない、それはなぜなら…こういうデータがあるよと。」という話をできたことで、パフォーマンスが改善に向かったこともありました。

今回分析スタッフが入って強く感じたことは、データを使うとなったら、ある程度のプレーモデル・再現性のあるチームでなかったら反省もできないという点ですね。指導者としてもそこの部分(プレーモデルの構築)をしっかりやっていく必要があるなと。設計や計画がないと、データが出てきただけでは活かせないと思います。なので、指導者としてもサッカーへのアプローチを徐々にアップデートしていかないといけない訳ですね。


ー最後に、今月末から始まる選手権への意気込みをお願いします。

前田監督:
今回、選手権に出場することができて、近江高校サッカー部としてもようやくスタートラインに立てたかと思います。これまでインターハイには出場していたんですが、ここからは選手権という舞台で一番を目指すということが現実的になってきました。参加して終わりではなく、滋賀県の代表として強い想いを持って戦いたいですね。




ー金さんは数ヶ月前から近江高校に分析スタッフとして携わっていた訳ですが、全国大会出場が決まった時はいかがでしたか?

金さん:
単純に嬉しかったですね。最初はアルバイトで淡々とやる感じだったんですが、練習試合からデータ分析をさせてもらっていて徐々に愛着というか、遠隔での作業なので現地で関わっている訳ではないんですが、気づいたら近江高校のサッカーが好きになっていましたね。県予選決勝の当日もずっと速報を見てました。


ー分析スタッフとして関わって半年ほどになりますが、この期間を振り返っていただけますか?

金さん:
改めて、サッカーにおける「データの重要性」が判ったことに尽きます。あとは前田監督から毎度、かなり細かいフィードバックを頂けることも個人的には学びになりました。

あと、SPLYZA Teamsは自由度が高いというか…やろうと思えばどこまでも最限がなく出来てしまうので「もっと効率の良い方法がありそうだな」といった感じで常にやり方を模索していました。おかげで成長したというか、自分自身の知識や引き出しも増えたと思います。


ー例えばレポートを提出するにあたり、金さんとしてどのような工夫をしていたのでしょうか。

金さん:
パス本数など所謂ありきたりなデータを出すのも大事だとは思うんですが、前田監督の助けになるようなデータ、つまり「誰が見ても判るようなデータ」をただ抽出するのではなく、チームの狙いや戦術が絡みそうな数字やデータを出来るだけ報告できるよう心がけていました。


ー前田監督もそこはとても助かったかと思います。近江高校サッカー部に分析スタッフとして加わろうと思ったそもそもの動機もお聞かせ願えますか。

金さん:
筑波大蹴球部でもデータ班に籍を置いてはいるんですが、そこでは”自分から何か発信する”といった感じではなく、あくまで「データ班の1人」といった感じで埋もれてしまっていました。なので、外へ出て勉強して成長したいし、そこで得たことをさらに筑波大蹴球部に還元したいという思いが強くあったからです。


ー実際に近江高校サッカー部の分析スタッフをやってみて感じたことなどあれば。

金さん:
とても良かったです。全部自分に任せてもらえていたので、筑波だったらコーチに言われたデータを取るだけですけど、全部自由に出来たので、そこを考えるのも楽しかった。前田さんからこういうことが知りたいと提案されて、そのためにどのようにデータを取ろうか考えたり、筑波は最先端のものを取り入れているので、そこで良さそうなものを近江で取ってみたりしていました。自分で考えるっていうのは結構難しかったですけど、いろいろなものを得られました。


ー今後取り組みたいこと・改善していきたいことはありますか?

金さん:
前田監督とも会話をしたのですが、いままで前田監督に渡すためだけのレポートを作っていたのですが、今後はどの選手にフォーカスしたデータも取っていければと思っています。それにあたってフォーマットというか、データの見せ方もより工夫したいですね。


ー現段階で将来設計はどのように考えているのですか?

金さん:
在学中は筑波大蹴球部での取り組みにより力を入れようと思ってます。今はデータこそ取ってはいますが、Jリーグのハーフタイムに出るような割とベーシックなデータなので、もっと戦術に直結するようなデータを取りたいなと思ってます。

卒業後ですが、第一希望としてはサッカーの分析に関する仕事を考えています。ただ大学では工学部に所属しているので、そちらの就職先も念頭に置いてはいるけど…という感じですね。まだ時間はあるので、じっくり吟味して決めようと思います。