【スポーツは考える力を育む】第3回SPLYZA CUP - 早稲田大学高等学院バスケットボール部・金巻先生 / アースフレンズU18・末宗HCへのインタビュー

2024.03.04 written by SPLYZA Inc.

第3回SPLYZA CUPに参加された早稲田大学高等学院バスケットボール部・金巻先生と、アースフレンズU18・末宗HCに、大会参加に対する感想やチームにおける大会参加後の変化などをインタビューしました。

ー今回のSPLYZA CUPへの想いを教えてください。

金巻先生:
選手たちが課題解決に向かって主体的に取り組み、その中で課題解決能力やコミュニケーション能力が育つところにバスケットボールの教育的意義を感じています。

昨年度から課題を見つけるためには、映像を使った分析が非常に重要だと考え、SPLYZA Teamsを利用し始めましたが、簡単なタグ付けのみの利用に留まっていました。

さらに、どうしても試合に絡むAチームの分析が多くなってしまっていたので、そういった点でもチームに関わる全員が、自分ごととしてバスケットボールの分析作業を捉えるために、SPLYZA CUPが良いきっかけになればと思っていました。
末宗HC:
今金巻先生もおっしゃったように、私もバスケットボールの勝敗を競うというよりも、質やバスケットボールを通したIQやコーチングを披露し合うような機会があると良いなと考えていたので、SPLYZA CUPを開催したいと思いました。

あとは、SPLYZA Teamsを使っていると、チーム内での使い方に偏りがあったので、SPLYZAの方や他のチームから色々な使い方も学べる機会になるかなと。


ー実際に今回の大会に参加してみていかがでしたか。

金巻先生:
大会当日の様子を思い返してみると、AチームもB1チームもB2チームも全員が本当に楽しそうで、選手たちも「とても楽しかったです」と言っていて本当にいい機会を与えていただきました。その楽しさの要因を考えてみると、「何を頑張らなきゃいけないか」というのが自分たちで主体的に考えるきっかけになっていたからではないかなと思っています。

SPLYZA CUPでは最初にプレゼンがあったので、自分たちでスクリメージや練習試合を見てKPT法を使って事前準備をしていました。

今の子達は与えられることには非常に慣れているので、指導者から与えられるのではなく自分たちで1回「時間をとって考える」という経験ができたことが非常に彼らも満足していましたし、僕も「あるべき教育の在り方」だなと見ていて成長を感じられました。
末宗HC:
すごくいい大会だったと思います。先ほども話したように、競技の勝敗ではなくて各チームの表現力やゲームの分析の質という部分にフォーカスすることによって、全員が参加するような空気感がチーム内にありました。そういう要素を見ていて非常にいい大会だったなと。

あと、他のチームのプレゼンや選手がどういう着眼点で日頃SPLYZA Teamsを使って分析しているのかを知れたのもコーチとしてとてもいい学びでした。

ユースチームなので、部活動より選手と関わる時間が非常に少ない中で、密度の濃いコミュニケーションをしないといけないというのが課題でした。その点に関して言うと、SPLYZA CUPのおかげで、コーチとして選手とバスケットボールを通したコミュニケーションの取り方を改めて学び直しました。大会が終わった後も、映像分析の捉え方がすごく変わったなと感じています。実際プレイも変わりましたし、チーム全体としても変化が見られた大会でした。


ー本大会のメインである「分析会」はいかがでしたか。

金巻先生:
非常にいいなと思いました。そのまま「文字を使ってプレゼンテーションする」という1つの成果物を作ることがゴールになっていて、その成果物を作る過程で、付箋に書いて貼り付けて、貼り付けてたものを順番入れ替えて・・・など具体的に目にみえるので事前準備も含めてとてもやりやすかったです。

社会に出てからも、ホワイトボードや模造紙を使って自分たちの抱えてる課題を可視化して「ああでもないこうでもない」と言いながら考えていく作業が必要になってくると思うので、とても貴重な経験だったと思います。
末宗HC:
"自己表現ができる場"ということがすごくいい機会だったなと思いました。特にユースは、選手それぞれ学校も違いバラバラな文化形成の集合体がで成り立っているチームなので、それぞれが自分の考えを言語化する機会はあまりないです。

この大会に向けて、準備をしたことでSPLYZA Teams内でのコミュニケーションも活発になりましたし、自分のイメージを他人に伝えるための言語化をしようという努力がすごく芽ばえてきました。

あと、「プレゼン大会」がすごく良かったです。やっぱり映像を使いながら自分の言語と自分の話す技術を駆使して伝えることがバスケットボール以外の部分でも非常に大きな役割を担ってくると思っています。その機会を実際にプレゼン”大会”という形で経験できたことは、選手にとっては非常に良かったと思います。クオリティの高いプレゼンを見られたこともすごく大きかったですね。ゲームでは勝てるけど、ああいうプレゼンでは負けてしまうという部分もすごくいい刺激になりました。

自分たちのプレゼン力の高い低いは考えると思うので、人に伝える時にどういう風にしたらより分かりやすく伝えることができるかを考えるきっかけにもなったと思います。今回は模造紙でしたが、PowerPointとかでもできたら面白そうですね。





ー分析会の発表から始まった大会でした。事前に準備をしていたと思うのですが、分析会に向けた準備を通してチームへの変化もありましたか。

金巻先生:
「何を自分たちで頑張るか」を明確化する作業というのが、普段は指導者が言ってしまうことが多いと思うので、選手たちが自分たちで結論を出して、「これを頑張ろう」と決めていたことが事前にやっていて良かったと考えます。

それぞれ映像を見て意見を出し合う作業は、今までもミーティングでもちろんやってはいたんですが、「KPT法」というフレームワークが与えられたことによって、より活発に議論をしていました。

事前に部員全員が集まってる中で、SPLYZAスタッフから分析会のやり方やKPT法について説明をしていただきましたし、前回のサッカーで行われたSPLYZA CUPの例も示してもらっていたので、選手たちはイメージ がつきやすかったようでした。

たくさんKeepやProblemが出た中で、何を「”Try”にしようか」というのは、たくさんの情報から絞り込む作業になるので、これも非常に良かったかなと思います。 例えば「トランジションを突き詰めたいです」とか「そのエネルギーを出してプレイしたい」っていう結論に行きついた チームはやっぱりそれそれをちゃんと実行していたと思いますし...

SPLYZA CUP前に他校と練習試合をしたのですが、その時にはすでにこの大会の日程も決まっていたので、逆算して何に取り組めばいいかというのも見えやすくなっていましたね。
末宗HC:
早大学院さんみたいに緻密に準備したかというと、そこまではできていなかったです...ただ、役割やKPT法というのが初めてだったんので、今回 SPLYZA CUPを通してまずこのフレームワークに慣れようと「Keep/Problem/Try」のタグ付けを習慣化しました。SPLYZAスタッフからレクチャー受けた後に、選手たちもどんな大会なのかというイメージをした上で、練習試合の映像分析とかをしたんですけど、やっぱり意識を出すと最初やり方がよくわからない・やらない選手も少しずつ自分でやるようになりました。

そうしたことで、練習中の共通言語というのがかなり生まれてきて、今まで選手個々で認識違いがあったんですけど、このKPT法を活用することで自分たちの課題を解決するための共通言語を使うようになってきました。これが非常に良かったなと思っています。実際準備した上で大会に望めたので、選手たちも当日の分析会の話し合いの時も選手たちがかなりディスカッションできていたので事前の準備期間が活きていたなと。





ー大会終了後の変化はありましたか。

金巻先生:
全員にしっかりプレイタイムがあって自分たちのチームをしっかり分析して、「何が足りないのか」というものがかなり明確化されていました。この大会を通して非常にバスケットボールに対するモチベーションは大きく上がったなという印象があります。

指導者としては、環境作りがすごく大事だなということを強く感じました。同じ1日でも例えば1日練習で終わるのと、練習試合で終わるのと、あとはこのSPLYZA CUPのような練習プラス分析のセットでやるのは大きく違うなと。

初めての試みでしたが、自分たちでPDCAサイクルをしっかり1日で回せたのは本当に意味のある1日でしたね。PDCAサイクルを回していく体験を積み重ねていくと、自分たちで課題解決していく力が育っていくんだなと指導者としても改めて感じました。

チーム全体としては、「スクリメージの言葉がけの質」が変わったなと感じました。分析会で行ったプレゼンを通して、言語化をしようと努力した結果かなと思ってます。少し時間がかかる子もいましたけど、理解力が高い選手がやり始めるとだんだんそれが波及していって、いつのまにかチーム全体として変化が見られたのはすごく良かったです。

末宗HC:
選手の変化としては、自分のプレイをただタグ付けするのではなく、 自分のいいプレイ・課題・トライしたいことなどを言葉にして、自分のプレイを何度も見てる選手は明らかにコートの使い方が変わりましたね。SPLYZA Teamsで「自分で言語化することで見え方が変わりました」と言っている選手もいました。コーチが時間をかけて言うよりも、自分でそうやって映像見て自分のプレイを言語化する方が断然効率がいい、という変化があったので非常に良かったと思います。

指導者としては、僕もずっと部活動で常に選手がいるの当たり前みたいな環境でやってきたんですけど、今ユースをやってみてコミュニケーションというのは課題です。限られた時間でどうやって「質の高い攻撃」をするかと12年間悩み続けていたんですが、今回SPLYZA CUPを経験してみて、ツールを使ってなんとかなるなと発見できました。 例えば、選手がコメントしたことに対して、僕がコメントを返したりするとやっぱりちゃんとそれに答えてくれて、次の練習で表現しようとしてましたし、そういうコミュニケーションツールとしても画期的感じました。


ープレゼンの機会は選手にとっても良い影響はありましたか。

金巻先生:
模造紙という成果物を作ってそれを伝える(プレゼンテーションする)という過程も含めて、非常にいい経験だったと思います。南平さんのプレゼンも非常に上手でしたし、授業以外でプレゼンをする機会はなかなかないので有意義でした。今後も継続して取り組んでいきたいなと思います。
末宗HC:
何が良いかってやっぱりバスケットボールを通したプレゼンというところですよね。授業なんかでいくとやっぱどうしても、やらされ感がちょっと出ちゃうみたいな中で、自分が好きなものを使って自己表現する機会があることが、非常に良いと思いました。

特にユースチームなんで、あくまでもプロ選手を目指すというそこのミッションがある中で、プロ選手が例えばメディアの前で喋るとか、カメラ越しで話をする時にいわゆる「プレゼン力」は非常に重要になってくると思います。そういった意識を芽ばえさせるという観点からしてもすごくいい機会でした。今後もチームとして何らかの形で続けて いきたいなという風に思ってます。


ー指導者側から感じるKPT法の印象を教えてください。

金巻先生:
KPT法は非常に取り組みやすいなと感じました。昔からPDCAサイクルはありますけれど、KPTって自分たちの課題や映像などを見て、そのいいところと改善していきたいところを、具体的に「どういう風に」「何を」「どう改善するか」という3本建てになっているので、とても取り組みやすい印象です。今後も是非続けていきたいです。

1つ思うのは、細かく一つ一つ指示されるのではなく、「誰が考えてもそれって正しいよね」というような原則的なものを、今の子たちは求めているような気がしています。

バスケットボールで言うと例えば「ドライブをした時の合わせ」などはカテゴリーが違えど「こういうサークルムーブをして合わせる」とかカテゴリーが違えど、どこのチームでも「確かにそうだよね」と納得する原則だと思います。その原則に基づいた指導というのが非常に重要で、細かく細かく教えるというよりは原則を教えてそれで選手たちに考えさせて、困ったことがあれば指導者が手助けするというようなやり方が今の子たちに合う指導の在り方だなと今回改めて感じました。
末宗HC:
すごく分かりやすくていいというのが一番ですね。僕も会社でKPT法を評価提示する時にやっていたんですけど、これをバスケットボールで使えるんだなというのがすごくいい発見でした。バスケットボールを通してこうやってビジネスシーンでも使うようなものを使って、またこれを使いこなせるようになってできていくというのがすごく僕は大事だなと思っています。バスケットノートとか書くよりも、こうやってはっきりKPTで明確に振り返る視点をはっきり示してあげた方が今はすごい振り返りやすいし、 取り組みもしやすいので今の子供達に合っているものだなと思いました。

本当にとにかくバスケットでバスケットボール以外の学びを得られるというのがすごく大きくて、それを知るきっかけとしてこのKPTは非常にいいので、「このKPTはバスケットボール以外でも使えるんだよ!っていう風に落とし込めたらすごくいいな感じているので、そういったアプローチを選手たちにやっていこうかなと思っています。





ーSPLYZA CUPを通じて、指導者目線での新しい発見はありましたでしょうか。

金巻先生:
PDCAサイクルが回せるような仕組みの中で選手が取り組むことができれば、極端な話かもしれないですけど、ヘッドコーチがその日にいなくても選手たちで非常に大きな学びを得られる時間にできるのかもしれないと感じました。

私も当日はそれぞれのチームにほとんど指導はしませんでしたが、それでも選手たちは高い強度でプレーしていましたし、非常に主体的に取り組んでいたので、今後の指導のヒントになったような気がしています。こういった大会が公式戦以外にもあることがすごく大事かなと思います。

今はバスケットボールでもリーグ戦を行う仕組みができてきましたが、リーグ戦文化の良さは自分たちでKPTを出しながら、より改善していく作業を繰り返せることにあると思うので、その具体的な改善の仕方を学ばないと結局トーナメントでもリーグ戦でもあまり変わらない気がしています。しっかり「振り返る文化を大切にする」ということが今後のスポーツ指導で重要なのではないかと改めて感じる機会になりました。
末宗HC:
指導者としての発見は、”コミュニケーションツール”としてのSPLYZA Teamsの使い方というのはすごくありがたいなと感じましたね。どうしても、練習に来た時にコートの中で選手とコミュニケーションを取ることがメインになる中で、練習を行い、その映像を使って映像内でコミュニケーションを取り、そしてまたリアルの世界で合わせて確認するというサイクルができます。

なので、共にする時間は短いんですけど、このSPLYZA Teamsを使うことで、常に繋がってる状態を出すことができるっていうのは非常に発見でした。今までみたいな学校生活も見て、体育館に来て、寮でも世話をしてみたいなことじゃなくても選手に寄り添ったコーチングってのは可能なのかなっていうのを今回感じさせてもらいました。

あとは、コーチ自身も選手に言語化を求めるように、コーチ自身も選手に伝わるような言語化をすごく心がけたので、僕もSPLYZA TeamsでKPTをタグ付けしてコメントする時も選手目線に立って言語化できたので、ここは非常に学びでしたし成長のきっかけになりました。もっとこういう大会が広がって、本当に色々な理解者が増えるとまた1 つ日本のスポーツ界のコーチングのあり方が変わるんじゃないのかなというのをすごく感じました。


ーありがとうございました。これからも応援しています!