【祝!2021シーズンよりJ3参入!】テゲバジャーロ宮崎・倉石圭二HC(ヘッドコーチ)インタビュー

2021.02.12 written by SPLYZA Inc.

倉石コーチは2017年からテゲバジャーロ宮崎のコーチとして加入し2018年のシーズン途中に監督に就任。チームを率いて3年目となる昨シーズン、JFL2位の好成績を残し見事Jリーグ参入を果たしました。2021年からは再びヘッドコーチとしてテゲバジャーロ宮崎を支える倉石さん。これまでのサッカー人としての人生や哲学、そしてこれからのテゲバジャーロ宮崎について色々と語っていただきました。



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ー昨季のJFL2位という結果、そしてJ3リーグへの参入おめでとうございます。我々が前回倉石さんに行わせていただいたインタビューは2年以上前ですが、当時は監督就任したてでチームは降格圏内であったかと思います。そこからの立て直しとJへの昇格は素晴らしい手腕ですね。

倉石コーチ
ありがとうございます。




ー2020シーズンはコロナ禍でJFLもレギュレーションが変更となり、各チーム1試合ずつしか対戦がないという状況でした。加えて宮崎は試合毎の移動も非常に大変かと思うのですが、倉石さんが監督として指揮をとっていた昨シーズンを振り返っていかがでしたでしょうか。

倉石コーチ
JFLでのテゲバジャーロ宮崎は、SPLYZA Teamsを用いて対戦相手の特徴を分析して、1回目の対戦の経験などをもとにして2巡目の後半戦で勝ち点を挙げるという尻上がりによくなるという傾向がありました。それが昨シーズンは1発勝負だったので、多少の割り切りは入れつつも、例えば監督や主力選手が大きく変わっていなければ過去のデータを活用したりと、とにかく「勝ち点1を根気強く積み上げる」ことを大事にしていました。




ー昨シーズンは15試合中8勝で勝ち越しているのも素晴らしいのですが、3敗しかしていないのは驚きでした。何かシーズンを通しての秘策などはあったのでしょうか。

倉石コーチ
チームとしてのプレー原則などを明確にするのはもちろんのこと、例えば日々の映像分析のなかで「JFLはクロスからの得点が多くを占める」という傾向があったりしたので、サイド攻撃を多用してくるチームに対しては「相手がサイドでボールを保持している局面での守備セットはどうするか?」であるとか、あとは「このエリアで奪ったらどうする?」「この時間帯で奪われたらどうする?」といった想定される状況を、チーム全員で前もって意識して共有できていたのは大きいかなと。負けが少なかった要因としてはその辺りでしょうか。







ーテゲバジャーロのチームカラーとして、トランジションの局面を大事にしているという印象が強くあります。倉石さんにとっての”ボールが宙ぶらりんになった状態”からのチームとしての狙いやこだわりなどはありますでしょうか。

倉石コーチ
ネガトラもポジトラも瞬間瞬間に発生することであり、再現性を突き詰めるのはかなり難しいので、例えば自分達がボールを保持している際の立ち位置を微調整したりですね。あとは「このエリアで縦パスを選択すると奪われやすいので、別の選択肢をいくつか持っておこう」という感じで、トランジションが発生するタイミングから逆算して日々のトレーニングを行っていました。攻撃のアクションでトランジションの発生するポイントがある程度予測できれば、選手もどこでパワーを使ってボールを奪いにいくべきか準備ができますので。

ただ、どれだけプレー原則や戦術面を整備&浸透させたとしても、ボールを奪うという局面において必要なのは馬力であり精神力です。なのでまずは足腰をより強固にという想いがあったのと、中断期間に宮崎の地の利を何か活かせないかな?と思い、昨シーズンは”浜トレ”を導入しました。昨シーズンの結果につながったかどうかの根拠はありませんが、今後もそういった"チーム独自のカラー"を日々のトレーニングにも反映していければと思います。




ーGPSも活用されているとのことですが、具体的なデータの活用というのは選手のトレーニング負荷管理といったもの以外で何かありますか?

倉石コーチ
もちろんハイパワー、強度管理みたいなものもやってるんですが、スプリントの5段階評価であったり、スプリントの質をいかに上げるかというのを普段のトレーニングで意識してやっていますね。うちのスタッフにJクラブでGPSシステムを扱っていた者がいるので、かなり細かく数値をみています。




ーJFLではかなり映像を活用したスカウティング(相手チームの分析)に力を入れていらっしゃったと思いますが、倉石さんが監督として対峙した相手で、ここはやりにくかったというチームはありますでしょうか。

倉石コーチ
吉武さんのいたころのFC今治は手強かったですね。あのやり方に対して、当時は私としても戦術的な引き出しが少なくて、太刀打ちできなかったのを覚えています。







ー倉石さんの指導者としてのルーツを振り返っていただけますでしょうか?

倉石コーチ
国見高校時代に指導を受けた小峰忠敏先生(現・長崎総附サッカー部監督)の影響は非常に大きいですね。あのサッカーにかける情熱やバイタリティを植え付けてもらったのは感謝しています。専修大学ではテクニカルな指導者の方に師事することはできたのですが、ちょっと期間が短かったように思います。そのあとホンダロックSCにプレーヤーとして加入するのですが、結局選手としてプレーしている間に「なぜあそこでああなったのか」といった自分の疑問をロジカルに説明、解決できる手段を持てていませんでした。

サッカーはそういうものだ。と割り切ってしまえばそうなのかもしれませんが、私個人としてはモヤモヤが残るというか…そこは明確にしたかったんです。それを、縁があって指導者になったときに、そういった同じ疑問や課題を持つ選手を少しでも減らしたいという想いがありました。今後は問題解決のためのアプローチを選手であったり、若手の指導者に伝えていければ良いなと思っています。




ー倉石さんは高校で指導をされて、そのあとテゲバジャーロ宮崎に指導者として加入したわけですが、実際に学生に教えるのと、プロに指導する際の勝手の違いなどはありますか?

倉石コーチ
全く別物だと思います。わかりやすく言えば、高校生は△(さんかく)という評価があるけれど、プロは◯(マル)か×(バツ)しかないというところですかね。育成年代は教育的な観点であったり、選手の伸び代をみないといけないんですけど、プロは選手の成否のジャッジを明確に、そしてスピード感を持ってシビアに判断しないといけません。クラブの成績は直接経営面にも影響してきますからね。




ー現在のオフ期間はJFLからJ3仕様に移行していく時期かと思いますが、J3に挑戦するための準備として何か行っていますか?

倉石コーチ
特にJリーグだからという意識はしていないです。今季については昨シーズンから継続になる選手が多いので、チームとして去年まで取り組んでいた内容をベースアップして、同じスタイルを貫ければと思っています。







ー改めて最後に、今季J3リーグに挑戦するにあたり一言お願いします。

倉石コーチ
2021シーズンは何もかも初めてのことばかりで、さらには降格もなければ(Jリーグクラブライセンスの関係で)昇格もないということで目標設定は難しいんですが、まずは中位あたりを目指してシーズンを過ごせれば良いかなと思います。コロナ禍ということもあり普段のトレーニングや移動、試合前後と神経を擦り減らす1年になることは間違いありませんが、まずは1シーズン通して自分たちのスタイルで戦い抜くことで、テゲバジャーロ宮崎として次のステップに進んでいければと思います。