【祝!4年ぶりインターハイ出場】中京大学附属中京高等学校サッカー部、大野TC(テクニカルコーチ)インタビュー

2021.09.17 written by SPLYZA Inc.

2021年の今年、4年(3大会)ぶりに愛知県大会を制し、愛知県代表として全国大会(インターハイ)への出場を果たした中京大学附属中京高等学校サッカー部(以下中京大中京サッカー部)。今回はそのチームにテクニカルコーチとして携わる大野陽介さんに、自身の役割、チームでの分析・トレーニングなど実際に取り組んだ”準備”についてお話を伺いました。



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ー本日はよろしくお願いします。まずは大野さんと中京大中京サッカー部の関わりについて教えていただけますか?

大野TC
中京大中京には今年からチームに関わらせてもらっています。チームには監督、ヘッドコーチ、アシスタントコーチ、テクニカルコーチ、GKコーチ、トレーナー2名の現場スタッフは計7名です。その他、顧問の先生方に多くのサポートしていただいています。その中で僕はテクニカルコーチとしてチームに携わってます。

今年就任した鈴村監督が中京大学サッカー部の先輩で、大学時代に一緒にプレーをしていました。その当時からすごい仲良くしてくださっていて、自分が指導者になってもずっと気にかけてくれていて中京大中京が「今年1人指導者が欲しいな」という中で声かけてもらったのが入ったきっかけですね。自分自身も、挑戦するという気持ちでこちらでお世話になることに決めました。




ーテクニカルコーチとは具体的にどのようなことを行っているのですか?

大野TC
様々ではあるんですが、大会の期間中は、今後想定される試合に向けて対戦相手チームの分析をして、それを打ち合わせで伝えて、トレーニングの計画を立てて、実際にやって、という試合に向けた準備の部分でしたね。

分析結果を伝えた後に、監督から次の試合のプランを聞いて、それに対して「これはどうですか?」などより具体的な提案をしていって、その中でやりたい事の優先順位を決めて、起こりそうなシーンを切り取ってトレーニングに落としこむというのをやっていました。







ー分析を踏まえて、監督がやりたいことを具体的かつ現実的にしていくような役割ですね。

大野TC
そうです。監督から「これをやりたい」っていう内容を聞くと、僕が「でも、もしこれをしたら、これが何回ぐらい起きて、何回ぐらい起きたことに対してはこうしていきたいですよね。ここまでは取り組んでおきたいですよね」みたいなやり取りはよくあります。




ーちなみに相手チームの分析はどのタイミングで行われるのでしょうか?

大野TC
愛知県大会の場合だと、対戦相手が決まる前に、次対戦する可能性のあるチームの分析は終えていました。対戦相手が決まってからすぐにスタッフ陣にその分析した情報を流して、その後集まってプロジェクターで映像見ながら「ここがこうです~」と傾向についての考察を話しています。その後、監督と会って打ち合わせして、トレーニングを決めていくって流れです。こういったプレゼンで使う分析内容については、自分で「何日の何時までに結論出す」って日を決めて、それに向けて動いています。

ただ、正直な話、僕自身は映像はあんまり得意じゃなくて「見とかなあかんな~」という思いでやってます(笑) 大学の時は「みんなのために汗かいて頑張る」っていうタイプのボランチでめちゃめちゃハードな選手でした。この前鈴村監督とも話してたんですが、僕が大学の時はサッカーのことなんて全くわかってなかった。当時は周りからも「フィジカルが大切!」と言われて、「目の前の相手を絶対に吹き飛ばすぞ!」ぐらいの感じでやってたんですが、それで自分が指導者になってから悩むんです。

サッカーへの思いに差がある選手たちに、サッカーを伝えていかなきゃいけないじゃないですか。僕は全てを投げ打って高知から出てきて「サッカーだけやるぞ」という覚悟があったからフィジカルに対して取り組めたんですが、その覚悟が無い選手たちにそういった部分を求めようとすると不具合が出てきてしまう。そこで「これじゃあかんな」って思って、サッカーの理論、戦術について色んな方から刺激を受けながら勉強をしました。

前に所属していた大同高校で、清水智士さんと仕事をしたのは自分にとってもすごく大きな刺激でしたね。今は「分析や戦術も大事だな」という思いになってます。大学時代の友人に「戦術のことやってる」って言うとだいぶ驚かれますね。中京大中京では選手たちの分析班にも入って一緒にやってます。





(左から大野テクニカルコーチ、鈴村監督、木村ヘッドコーチ)


ー分析班はどういったグループなのですか?

大野TC
試合の動画を撮影したり、データとったり、メモったりと選手が試合を分析するグループですね。そういったことをスプライザ(SPLYZATeams)を使ってまとめてやっている部署です。普通は指導者が入らないんですが「みんなと一緒にやりたいから~」って僕だけ入れてもらっていて、今後がとても楽しみです。




ーSPLYZATeamsは具体的にどんな使い方をしていますか?

大野TC
選手達は試合映像をアップロードして、選手自身で映像に書き込んで振り返ったり、分析班がコメントしたり。あとは監督が映像に書き込んで選手たちにフィードバックしたりと使ってますね。僕もテクニカルコーチとして見て欲しい映像集なんかをスプライザ入れて見てもらうような使い方してます。




ー使っていて良かったことはありますか?

大野TC
まず分析した映像を選手たちに手軽に見せることができるのは良いですね。誰にどのタイミングで映像を見せるのか?というのを結構意識していて、ファーストチームだけ、攻撃陣だけ、個別でとか、伝えたい内容によって相手を選ぶようにしてるんです。そういうのをスプライザ使うとかなりやりやすいですね。その中で誰が見てるっていうのが分かるのも良いです。見てないからといって強制するつもりも、押し付ける気もないんですが、選手とコミュニケーションをとる時の参考になります。

ただみんなよく見てくれるんで。「こういう映像スプライザに入れたから見てね~」って言うとすぐに反応してくれる。スプライザに行って見るっていうのは、サッカーへの気持ちがないとそこに向かっていかないので、そういうのを感じてすごい良いなと思ってます。あと試合映像とかに選手が書き込んでくれて、そうふうに見えてるんだって感心することも多いですね。選手たちが一人一人の考え方の違いを知るっていう意味でもすごい良いと思ってますね。




ー選手たちに変化はありますか?

大野TC
選手たちがより映像見るようになったっていうのはあります。それはテクニカルコーチとしてはすごいやりやすかったです。ただ、今回あったのは、ファーストチームじゃなくてもめっちゃ映像を見てくれてる選手がいたんです。その選手は2年生なんですが、1年生の映像も全部見てるんですよ。それに気づいて「めちゃくちゃ見てるけど、どうした?」って聞いたら「楽しいんです」って。それで分析班に誘ったんです。

正直セカンドチームでも試合に出れてなくて、前向きになれていない時期があった選手なんですが、今は「自分は役に立ちたいし、映像見るのも好きだし、みんながやってることも知りたいから、やりたいです」って。そこで新たな価値が生まれて、前向きにチームのために頑張ってくれてるっていう、大きな変化はありましたね。




ーそれは素晴らしいですね。

大野TC
嬉しかったですね。1年生のトレーニングマッチ見て「これまでに無い得点パターンですね~」とか言ってましたよ。監督ともこのアプリをきっかけにアナリストとしての才能を発掘することができるんじゃないかなと話しています。





(SPLYZATeamsを使った、選手による描き込み)


ーテクニカルコーチとして愛知県大会を戦って、分析・トレーニング等をしてきた中で、大野さん自身手応えを感じた部分はありますか?

大野TC
1番はセットプレーですね。そこはGKコーチと二人三脚でやって、立ち位置のトレーニングだったり、映像で見せたりとうまく準備してできたなと思っています。伝え方としては気をつけていたのは「選手が肌で感じたら変えていいよ」という言い方で、やっぱ僕らは客観的に見てるんだけど、選手からしたら「半歩邪魔だな」「ここにいられたら嫌だなとか」ゲームの状況に応じて感じたら変えて良いと言っていましたね。自分が「ここだけやってれば良い」ってなっちゃうのは無しだよって。この大会で改めて「セットプレー大事だな」っていうのは強く感じましたね。




ー全国大会(インターハイ)に向けてはどんな準備を行っていたのですか?

大野TC
愛知県大会中と違って時間が取れたっていうのがあるので、ベースアップを計りつつ、その中で「実は対策になってます」みたいなのは意識してトレーニングに入れていきました。初戦の立正大淞南さんの分析結果を踏まえて、勝つためのプランをスタッフで考えて、様々な方法でトレーニングしていました。攻守で分けたり、エリアで分けてなどやっていたのですが、一番頭を悩ませたのは、35分ハーフってところでしたね。

この時間フルパワー出し切ることを考えてトレーニングしたかったのですが、愛知県のリーグは45分ハーフなので、ベースアップは45分向けでインターハイは35分っていうので、トレーニングでは非常に悩みましたね。





(中京大中京 vs 立正大淞南)



ー初戦を戦っていかがでしたか?(中京大中京 1-2 立正大淞南)

大野TC
正直めっちゃ悔しかったですね。先制して、その後もチャンス作ってというのはできていたので。後半逆転された後もうまく戦えてたと感じていますし、本当に「惜しかったな~」と思ってます。実は”先制して逆転されて残り10分”っていうシチュエーションでの練習もしてたので、実際その状況になった時に慌てることはなかったんです。準備してた部分は発揮できたと思いますが、あと一歩届かなかったですね。ただ選手達にとって、この全国大会の舞台に立てたというのは非常に良い経験だったんじゃないかなと思ってます。




ー最後に、今後への意気込みを聞かせてください。

大野TC
今のファーストチームは本当にすごくて、自分たちで問題解決する能力がめちゃ高いなと。試合の状況に応じて選手達で話し合ってうまく対応するシーンもよくあるんです。そういうの見て「すごいな~」って。これは去年まで監督されてた岡山さん(現アドバイザー)の功績が大きいと思ってます。

ポテンシャルはすごい高いので、僕としては、チーム、監督のやりたい事、相手のやりたい事、やられたくない事に頭を巡らせて、みんなが良いところ出して勝てるように準備して、チームに貢献できたらなと思ってます。