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大同高校サッカー部・清水コーチインタビュー

2019.08.08 written by SPLYZA Inc.

サガン鳥栖のテクニカルコーチとして、2014年からJリーグでのキャリアをスタートさせた大同高校の清水智士コーチ。その後Kリーグの蔚山現代、日本に戻りベガルタ仙台を経て2018年から大同高校サッカー部のコーチに就任されています。今回は清水コーチの育成年代での映像活用方法や指導者としてのポリシー、今後の指導者としての目標などについてお伺いしてきました。


ー早速ですが、大同高校サッカー部でのSPLYZA Teamsの活用方法を教えてください。

清水コーチ:
今はタグ付けは生徒が1人5分ずつで分担しています。長くても15分〜20分くらいで終わりますね。当初は色々と懸念していましたが、特にエラーもなくサクッと作業完了するレベルまで持ってこれています。週末の試合のあと、その週の火曜日までに終わらせて水曜日にビデオミーティングを行う流れです。

生徒達には気づいたことは何でもいいので各々スモールトピックをあげてもらってるんですが、中には「僕の主観とデータで出てきた数値がかけはなれている!」みたいに結構突っ込んだことを言ってくる生徒もいて、「じゃあ検証してみよう!」とそこで議論になったりしていて、とても良いサイクルが出来ています。たかが1人5分くらいのタグ付け作業なんですけど、「ここの競合いは試合中はイーブンな感じだったけど、映像で見ると勝てているな。」と映像を観ることで客観的に評価できる習慣がつくのは大きいと思いますね。

ーちなみにこのアプリではプレーのお尻を決める必要はないんですけど、逆に不便に感じたことはありますか?

清水コーチ:
私としては気にならないですね。頭出しできれば十分だと思います。

ーもともと映像の編集は何のソフトをお使いになっていたのでしょうか?

清水コーチ:
エディウスを使っていました。ただこれ(映像の頭からお尻までの時間を決めること)のメリットは実はあって、例えばプロの現場で働いていたときに監督から「次の対戦相手のスカウティング映像を作成してビデオミーティングで20分喋ってくれ」って言われると、大体12分くらいの映像を用意して喋ると尺的にちょうど20分で収まるんですね。なのでその時はそのやり方が一番フィットしていました。

今はコーチなので、MTGの時間の制約がほとんどありませんし、今日長くなったなと思えば次の日に回したりも、選手たちの様子を見ながら調整できます。なので今はタグ付けで頭出しさえすればそれで十分ですね。あとは選手も一緒に分析を行うので、映像を切り貼りして次のシーンにどんどん進むよりも、生徒たちに意見してもらうという意味でも流しっぱなしにできる方が便利かもしれません。

プロ相手だとチームMTGもサクサクやらないといけないので、映像の切り替えにモタモタしていると選手からも怪訝な顔をされかねません。そういう意味で映像編集ソフトが主流なのは仕方ないかもしれないです。今は学生が相手ということもありますので、むしろサクサク行きすぎず、頭の整理をする余裕を持たせながら進んだ方が良いと思いますので、この機能でも十分にコーチングの現場でやりたいことはできるかと思います。

▼大同高校サッカー部での映像へのタグ付け画面


ー今はどのような内容でタグ付けされていますか?

清水コーチ:
全員で局面ごとのタグ付けをしています。例えば「フィールド1で局面が始まって、フィールド3まで進んで局面が終了した」といった感じで映像を仕分けしています。先ほども言いましたがタイムスケジュール的には週末の試合を火曜日までにタグ付けして、水曜日にそのデータをもとに少人数のグループを作ってディスカッションを行う感じです。今後は個々がもう一工夫して自分のプレーをポジティブに振り返れる仕組みや、分析班を組織してより深い分析をしていく雰囲気を作っていきたいと考えています。

ーミーティングの際に工夫されていることがあれば教えてください。

清水コーチ:
グループディスカッション自体は毎週やってるんですが、ルーティーンとして毎回映像を使ってミーティングをするとメリハリがなくなるので、ここぞ!っていう時だけにやるようにしています。その辺は生徒達も飽きないように毎回少しずつテーマを変えたりはしています。

ー分析したデータをトレーニングに落とし込んだりはしますか?

清水コーチ:
こういうトレーニングをしたいなという時に、前の試合でこんなデータが出ているから、もっとこのくらいできるようになろう!という根拠としてデータを使うことはよくあります。トレーニングの内容を考える時も、例えばゾーン3でどういう状況になっているか?っていうのを映像からヒントを得てっていうのはありますね。ゾーン3まで進んでても、結局ロングボールでギリギリな感じで侵入してるだけっていうのもありますし。それはデータというよりも、映像で確認しないとわからない部分ではあるんですが。

ーそういった日々の生徒さんとのやりとりや指導の中で、難しいなと感じている部分はありますか?

清水コーチ:
選手がある局面において、理解しているようなまだ理解不足なような状態の時の見極めや、理解はしているけどプレーとして無意識レベルに出来ないところ、そのあたりの状況把握→判断→実行のスピード感の部分ですかね。頭で考えるベースは絶対に必要だと思いますが、最後は選手がピッチ上でどこまで無意識的に良い判断や実行ができるか?というのはボトルネックになっている部分があります。戦術メモリーの引き出しをいかに増やすかっていうのは今後の課題ですね。

▼大同高校サッカー部のタグ付け集計結果画面


ー話変わって。大同高校のお話をお聞かせください。現在の大同高校のリーグ戦での立ち位置を教えていただければ。

清水コーチ:
トップチームが県の1部リーグ所属で、前期終わって9位。下から2番目の位置です。思ったより勝ちきれていないという現状です。課題として得点が少ないので、守備のベースは崩さずにそこをやり切れるようにしたいですね。2年生が多いチームなので、この夏で勝てるチームに変えていきたいと思っています。もちろん、3年生の最後の夏のもうひと伸びにも大きな期待をしています。大同高校としてはここ10年くらいでサッカー部に力を入れ始めて、去年初めて県1部に昇格しました。現状は残留+少しでも上のレベルにという段階です。

ー大同高校に就任されたのはどういった経緯があったのでしょうか。

清水コーチ:
僕自身もともと育成をやりたいというのがあって、どこかのアカデミーや育成年代のチームでやれたらなと思っていたタイミングで声をかけてもらって。大同高校からはプレーヤーとしてももちろんですけど、指導者であったり、専任のアナリストやトレーナーのような裏方仕事であったり、いろんな人材を輩出できたらなと思っています。サッカー好きをしっかり育てて、サッカー界に送り込めたら理想的ですね。

ー大同高校が参考にしているプロのクラブチームなどあれば

清水コーチ:
特にここというのはないのですが、敢えて言えば近年のトッテナムや欧州3連覇時のRマドリードですかね。自分たちがボールを持っていてもOKだし、相手が保持していても守備から自分たちのペースに持っていけるっていう、オーソドックスなんだけどチームとしてどんな状況でも何でもできる、その中で個々の特長がしっかり発揮できているというか。選手たちと実際にスパーズやRマドリードの映像を使って勉強したりもしています。Jリーグでいうと去年のエスパルスやFC東京の試合は部分的にビデオミーティングで使っていたりはしました。もちろん、監督やコーチの縛りもなく、選手の判断で柔軟にできるのが究極の理想です。



ー清水さんの教育方針として、生徒達にどのようなアプローチをしながら育成をしていくのでしょうか?

清水コーチ:
良い選手になるには3つ条件があるって生徒たちにはよく話すんですけど、1つ目は食事や睡眠のコンディションの自己管理ができること、2つ目はどんな環境でもどんな監督の元でもパフォーマンスを発揮できる賢い選手であること、最後は絶対的な武器がある選手であること。っていうのを最初に提示します。あとは外部コーチやゲストを招いて、生徒たちの世界観を広げるというか、本気の大人と出会う機会を作ったりしますね。そういう意味では育成年代のメンタルの作り方に関しては取り組みとして力を入れている部分だと思います。限られた時間をどれだけ有用にできるかという所はしっかり伝えたいと思っています。

ー中学や高校は選手(生徒)の在籍期間が約2年半という縛りもあるので、難しいところはありますよね。

清水コーチ:
そうですね。難しい部分はありますが、時間が限られているからこそうまくマネジメントしないといけない!という点では指導者としても腕のみせどころですね。

ー清水さん自身がサッカーを学ぶことに対して積極的な姿勢を続けることによって、生徒さん達にも良い影響を与えそうですね。

清水コーチ:
学ぶという点でいくと、やはり試合から多くのことを学べるというか。相手チームのスタイルや良いところなんかも、積極的に伝えるようにしています。保持するサッカーに対しても、放り込んでくるサッカーに対しても、良いとか悪いとかではなく、どういう仕組みになっているのかという部分から触れて、噛み砕いて伝えるようにしています。マッチメイクもいろんな高校や大学とやりますし、あとは社会人チームともやります。映像だけじゃなくて現地に生徒達を連れて行って観戦会みたいなのもやってますね。そのような様々な経験から多くのことを学び、成長していってほしい。彼らの可能性を閉じないようにという想いが強いです。

ー素晴らしいですね。もうシーズンが始まってだいぶ経ってますが、大同高校サッカー部の今季の目標を教えてください。

清水コーチ:
まずはリーグ戦勝ち点を落としすぎたんで、きちんとやってきたことを結果に繋げることと、しっかり県1部に残留したうえで、選手権で全国大会に行きます!

ー最後に、清水さん自身の指導者としての目標はありますか?

清水コーチ:
ちょっとスケールが大きな話になってしまうんですが、最近思うのは、自分がイメージしているようなサッカーアカデミーが作れたらいいなと思っています。でも1人ではできないので、同じ理念を持ったそれぞれのその道のプロフェッショナルたちを募って、学校みたいなものがあればいいなあと。なので個人の夢というよりも、いろんな人を巻き込んでやっていきたいなっていうのが意欲として出てきてますね。



ーいいですね。今思いついたジャストアイディアですが、例えばサッカーをベースに英語も学べるし、数学も学べる。大学にも行けるし企業に就職もできる。そんな教育機関があれば人も集まるかもしれませんね。いいサッカー選手を育てるっていうのは結局、いい社会人を育てるっていうのと同義だと思いますし。

清水コーチ:
それはいいアイデアですね。それなら出来る気がする。言語も英語やスペイン語に重点を置いたり、サッカーを通じて経済や歴史なんかも飽きずに学べる。そういう意味だとそれぞれのジャンルでのぶっ飛んだ人も参加してくれそうですし(笑)

ープロになるだけの出口だと親も不安で預けられないですよね。そういう意味でも需要はある気がしています。本日は楽しい話をたくさんありがとうございました。