【映像を使って共通理解を図る】八戸学院光星高校男子バスケットボール部・佐々木彰彦監督インタビュー
2020.08.13 written by SPLYZA Inc.
昨年インターハイ、ウインターカップ共に青森県予選を突破し、本戦に出場した八戸学院光星高校男子バスケットボール部。そんな青森県のトップチームを率いる佐々木彰彦監督に、映像の活用方法だけでなく、指導する上で心掛けていること、新型コロナでの自粛期間中の取り組みなど、色々とお話を伺ってきました。(インタビューは7月13日にリモートにて実施)
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ー本日はお忙しい中ありがとうございます。新型コロナウイルスの影響で活動自主期間もあったと思いますが、現在は練習を再開されているのでしょうか。
佐々木監督:
今はおかげさまで再開できています。県によって状況も違いますが、青森県では月末に高校総体の代替大会も予定しているので、今の自分たちの中でできる限りのことを行っています。(7月23-26日かけて行われた代替大会では高校総体の記録としてカウントされないが4年連続優勝)
ーおめでとうございます。この状況の中、パフォーマンス向上のために色んなことに取り組んでいるとお伺いしました。まずは映像の活用方法について教えていただけますか。
佐々木監督:
遠征や大会で撮影した試合を、次の練習までに私自身がSPLYZA Teamsを使って編集して見せるようにしています。
ー監督ご自身で編集されているのですね。
佐々木監督:
はい。ただ最近はこれと並行して、チーム全体でタグ付けの時間を設けるようにもなりました。私が編集したものを見てもらった際「プレーに対してどこの部分の話をしているのか」「話をしても言葉が彼らに伝わっているのか」という疑問を抱いたことがきっかけです。そこで、私だけでなく彼らにもタグ付けしてもらうことで、チームの中でプレーの共通言語ができ、こちらからの一方通行がなくなったと感じています。また、どのくらい自分たちがそのプレーに対してやられているのか、どこが課題なのかを実感として掴めるのではと思っています。共通理解を図るツールとしても、今年はSPLYZA
Teamsを活用していきたいと考えています。
ー先ほど動画を拝見しましたが、生徒さんもコメントもしていましたね。
佐々木監督:
本当に今年からの話なんですけどね。先日、能代工業高校に遠征に行ったときにリバウンドがかなり課題でした。どのくらいやられていたのか、また自分たちが今やりたいと思っているオフェンスが実際どこで詰まってしまっているか、これは主力の選手だけ分かっていても駄目です。チーム全体で共通理解として持たせていくために、タグ付け作業を共通言語として使っていきたいと思っています。また、プレイヤーである彼らにどう当事者意識を持たせることができるのかという点でとても可能性があると感じています。
ーちなみに、導入以前も映像は活用していたのでしょうか。
佐々木監督:
iPadで撮影したものを切ってプレーごとに繋げて…と編集作業を行っていました。ただ、自チームの振り返りもスカウティングもやっていたのでかなり時間がかかっていましたね。iPadの動画のタイミングの微調整がやりにくかったのも煩わしかったです。今は微調整も簡単にできるし、見ない部分は簡単に飛ばせるので作業効率も上がりました。
映像のデータもiPadだけでなくて、ビデオカメラやDVDの動画データも使えるので凄いなと感じています。あと、月15時間分の容量があるので保存先に困らないですね。例えば新人戦が終わって次は夏の大会だというときに、前の試合の動画を引っ張ってくる場合、これまでは行っていた「DVDで必要な箇所を探して…」という作業が要らなくなりましたし、自分のアカウント1つでiPadやスマホ、PCなどで作業を共有できるのでとても使い易いです。
ーフル活用していただき、ありがとうございます。チームに関しても教えていただきたいです。「八戸学院光星高校男子バスケットボール部」として大事にしていること、チームで掲げている理念はありますか?
佐々木監督:
今シーズンのテーマに関しては”目標の共有と自己管理”です。食事や体調の管理、毎日のシューティングの進捗を目標設定して、それに対して我々も評価をしながら見ていっています。目標の共有という部分では、目標に到達するための課題を明確にすること、チームの課題、どういうバスケットをやりたいかということも含めて、いろいろな部分に関わってくると思っています。
チームの理念は大きく3つ掲げています。チームの旗にも記されていますが、「全力」「役割」「責任」です。そこにもう1つ「プライド」というのもあります。チームとして、もちろん育成にも力を入れていますが、どうしても全国に行くとサイズが小さかったり、総合的な能力では上回れない部分が目立ちます。そういった中で自分の役割を持ち、それを全うすること、これは試合に出る以外にもスカウティングやベンチサポートなども含めて役割があると思うので、全員で責任を持ってやっていこうという話をしています。そして、学校の代表、また市や県の代表にもなるので、しっかりとした振る舞いを(プライドを持って)行うよう心がけています。
ーちなみに、青森県外からきている生徒さんはいるのでしょうか。
佐々木監督:
おかげさまで少しずつ増えてきています。今は県内の生徒が軸になって頑張ってくれていますので、そこに軸足を置きながら高いレベルにチームを押し上げていきたいと思っています。高校の事業で地域総合型スポーツクラブを目指して、立ち上げていく活動のなかで、男子バスケットボールが先にU-15のクラブチームを結成し、9月始動を目標に準備しているところです。
ーそのクラブの目指す形はどのようなものでしょうか。佐々木監督が見られるのですか。
佐々木監督:
クラブとしては「子供たちの試合経験を増やしたい」「バスケットだけでなく、そこにスポーツ教育を入れていきたい」という思いがあります。バスケットボールの指導だけでなく、身体操作や栄養指導、コミュニケーションスキルを高めていきたいと考えています。また、指導者の育成を私の中ではテーマとして持っています。
例えば中学校でバスケットの指導に関わりたいけれどチームを持てていない先生や、地域の若い意欲あるコーチに、指導の場の提供や、このチームの取り込みから吸収して、いずれ所属するチームに持ち帰って広がっていけばいいなと思っています。もちろんメインになるコーチはいます。私の主軸は高校なので、どちらかというと最初に枠組みを作ったら、基本的にはマネジメントを中心に関わっていくつもりです。地域のレベルアップのために、力を入れてやっていきたいなと思っています。
ーそれは地域貢献でもありますし「のちのちは八戸学院でプレーしたい」という動機にもつながりますよね。
佐々木監督:
そうなるとありがたいですが、光星には強いクラブがたくさんあります。今は男子バスケットボールが先がけて活動していく中で、他競技にも広がるベースを作っていきたいと考えています。これから青森県の場合は少子化の問題もありますので、チームが組めないという可能性もでてくると思います。そういうときの選択の場としても、機会を提供できればということで動いている状況です。
ー青森県のことを考えた素晴らしい取り組みですね。
佐々木監督:
実は私が光星高校に赴任する前からある小中学生のスクールをずっと指導しているのですが、スクールの限界を感じてて。週1回でも積み重ねていけるものはありますが、試合もないし、様々な角度から専門的な指導できないか考えていました。私は2017年から青森県の少年国体チームでヘッドコーチもやっています。それ以前からもスタッフとして関わっていて、2025年の青森国スポも見据えて、もっと地域の強化や連携を進めていくことを考えた上で、こういったことも鍵になればいいなと思っています。
ー地域のレベルアップもそうですが、八戸学院光星が県内でより応援されるチームになりそうですね。
佐々木監督:
青森県で頑張りたいという気持ちももちろんありますが、他県からも生徒が魅力を感じて入学してくれるようになっているのがありがたいです。さらに地元の子どもたちを成長させる機会や、選択の場を提供していきたいです。自分もなにか関わって行動できないか、と考えてやっています。
ー素晴らしい取り組みですね。先ほどすでに練習は再開している、とのことでした。再開までの自粛期間中はチームとしてどんな取り組みをされていたのか教えてください。
佐々木監督:
今年の3月に新しく寮が完成して23名ほどが入りました。埼玉と大阪、あとは県内の子も居て、自粛期間に入ったときにまず彼らを「自宅に帰すべきかどうか」という話になりました。もちろん親御さんと相談して、必要であれば帰しました。ずっと寮の中にいるのは精神衛生上良くないと、学校の体育館を開放して個人練習という形で一日2時間程度、身体を動かしていました。
自宅からの通学生については、少しでもチームとして同じ時間を共有できるようにと、オンラインのZoomを使いながらトレーナーが与えてくれているメニューを30分から1時間程度やったり、インナーマッスルのトレーニングをみんなで取り組んでました。通学生の子たちも彼らなりに出来る範囲で出来ることを頑張っていました。
八戸学院光星高等学校男子バスケットボール部は、帰省できない寮生を中心としてオンラインでトレーニングし、時間を共有しています。#八戸学院光星高校#男子バスケットボール#トレーニング#コロナ#コロナに負けるな#自粛期間にできること#インナーマッスル#Zoom#仙骨#モチベーション pic.twitter.com/YYPEWcgR7G
— 八戸学院光星高等学校男子バスケットボール部 (@kosei_sparks) April 25, 2020
ー「チームとして同じ時間を共有」これはチーム作り以上に生徒の安心に繋がりそうですね!このあとは夏に向けてですが、遠征も難しそうですね。
佐々木監督:
そうなんです。今のところ8月に岩手、秋田、青森の近い3県でやろうと計画しています。ただ、また状況が悪くなってきているので、状況に応じて柔軟に対応したいと思っています。
ー次は佐々木監督の指導面に関してお聞かせください。今、高校生を指導する上で気をつけていることはありますか。
佐々木監督:
色々ある中の1つとしては、SPLYZA Teamsで映像を活用して分かりやすく視覚的に訴えることは大事だと思っています。スマホやタブレットを見て育ってきている世代なので、ただ話をして動かしてというよりは映像で共有すると落とし込みやすいのかなと思っています。
あとはコミュニケーション自体が苦手な子もいるので、そこは気にかけるようにしています。言えなくてストレスを溜めてしまったり、悶々としたりすることもあるので、バスケット以外でお互いに主張できるような環境を作っています。例えば、お互いの居場所をちゃんと作れるように、人間関係を整えるグループワークなどを行ったりですね。バスケ自体が特別上手くなくても自分自身の評価されている部分がわかったり、話を聞いてこの子はこう捉えているんだ、と成長している部分が相互理解できたり。あとはバスケット以外で互いの承認欲求を満たすなど、フォローするようにしています。
ー「承認欲求」は育成年代を指導する上で外すことのできないキーワードの1つですよね。
佐々木監督:
難しい部分ですね。チームの中でもいろんな子がいますが、自分たちのチームの活動を保つときに、規律やチームで大事にしているところの線引きはしっかりして、そこに満たないときに声かけをしたりして、みんなを引き上げることを意識しています。
ー”引き上げる”という言葉に、チームだけでなく生徒1人1人の個性を大事にされていることが伺えます。他にもまだバスケットを教えるという点で気を付けていることはありますか。先ほど視覚的な話はでましたが、例えば「教えすぎない」であるとか、スポーツの指導という部分で何かあれば。
佐々木監督:
おっしゃる通り「教えすぎない」や「関わりすぎない」は気をつけています。チームとしてここは押さえてほしいところはありますが、プレーのなかで、彼らの判断に任せている部分で起きた失敗に関してはなにも言いません。
他にも練習ですと、効率を大事にするようにしています。なるべく全体の練習を止めすぎないように、個別に呼んで話すようにしていますし、部員38名で使えるのがコート1面と横にある2つのリングなので、全員が強度を維持しながらちゃんと練習できるようにグループ分けしたりしています。同じコートの中でも、コートの脇でトレーニングをやっているグループとコートの中でポジション別にルーティーンワークをやっているグループに分けて交代しながら練習をしていますね。みんなチーム全員でコートの中にいて、昔みたいにBチームは上走ってろ!みたいなことはないようにしています。
あと、まだやり始めて1、2ヶ月の取り組みもあるんですが、生徒たちに「自分が次のレベルにいくために、どんなことが課題だと思うか」というアンケートを取ったんです。出てきた課題が似ている3人くらいでグループ分けして個人スキルの練習をさせています。体育館に来てただ紐を結んでなんとなく練習までの時間を過ごすより、来たらすぐに個人のレベルアップの練習をそれぞれのグループでやって、全体練習のなかではポジション分けしたルーティーンワークをやるようにしています。もちろんこちらからも得て欲しいスキルも提案したりフォローしたり。すべて時間の効率を上げて、無駄はなるべく省くように意識しています。
ーチーム全員でコートで効率よく練習し、ステップアップするための設計がなされていますね。先ほど部員が38名と伺いましたが、スタッフは何名でしょうか。
佐々木監督:
実質2名です。指導の現場は私ですが、事務的なことを含めてフォローをしてくれるバスケット専門ではない先生がいます。実質コートの中の指導は私だけです。
ー指導に関するお話を聞かせていただき、とても手厚く指導されていると感動していたのですが、まさかコート上では38名に対してお1人だとは思いませんでした。
佐々木監督:
そこの部分は今後の課題だとも思っています。ただ、何より彼らはみんな光星でやりたくて来てくれているので、全くコートの中に入れないで走らせたり、バスケットではないことを短時間の練習の中でやらせるということは私のなかではないです。工夫してみんなで時間を共有しながら戦える用意をしていきたいと考えています。
ー”チームが成長し続けるために何をするべきか”を一番深く考えているのが監督であるということが、生徒の皆さんにも伝わっていそうですね。あと、Twitterでは先ほどの個人スキルのメニューの写真を拝見しました。それを全体練習の前に各自がやっているんですね。
佐々木監督:
そうですね。学校が終わるのが遅くとも15時50分くらいで、そこから体育館に来て3年生も関係なく各学年の決まった準備を16時までにやってもらう。それが終わった時点から各自ドリルをやってもらって、16時10分から練習が始まって、ポジションごとのルーティーンワークに入っていきます。そして練習の最後に、今日の練習のゲームとかで「自分の次のレベルにいくための課題」について、できた/できなかったなどの感覚を確かめながら再度取り組ませたり、違う要素の練習をそれぞれがやったりしています。
ーこの考え、取り組みは多くの指導者の方が参考になるのではないでしょうか。
東京アースフレンズのU15を参考に練習の前後に取り組んでいるインディビジュアルディベロップメント(個人技術の開発)を1ヶ月経ったので見直しをしました。#八戸学院光星 #光星 #八学光星 #男子バスケットボール部 #インナーマッスル #青森県 #高校バスケ #バスケを止めるな2020 #ZSEMINAR pic.twitter.com/5EIO7MgHHI
— 八戸学院光星高等学校男子バスケットボール部 (@kosei_sparks) June 8, 2020
ー先ほどチームの共通言語、共通理解の話が出てきましたが、理想とするイメージはありますか。
佐々木監督:
全国の上位のチームに比べると、個人の能力の部分や体格的だったり、現段階のチームでは敵わないところもあると思います。ただ、全員で同じ絵を描く、共通認識を持ってバスケットをする、チームとして同じイメージを共有していくことで、チームとして上回れるチャンスが出てくると思っています。
相手のスカウティングでも、自分たちのことでも、チーム全体で共通認識、共通理解を持って、オフェンスもディフェンスもプレーしていけるようにSPLYZA Teamsを使ってチームをより強化していきたいと思っています。
ー私自身、佐々木監督の1つ下で同世代なのですが、最近この30歳前後の世代の指導者が、百戦錬磨の名将たちに追いつき追い越せで活躍されていると感じています。今回のインタビューでは同世代の指導者の刺激になってもらえればいいなとも思っています。自分もかなり刺激をいただけました。
佐々木監督:
こちらこそありがとうございました。確かに、刺激を与えられるといいです。私もBリーグにいる同世代のコーチからも刺激を受けています。寮も完成し、これから!って年で難しい年になってはしまいましたが、生徒たちのためにもできることをやっていきたいと思いますね。
ーー先ほども寮の話も出ましたが、新しく完成した寮はどうですか?この業界にいる身として、Wi-Fiなどの通信環境などが気になるところですが。
佐々木監督:
ちゃんとWi-Fiも付いていますよ。寮自体は新築だし環境的にはとても良いと思います。学校の敷地内にあって、栄養士の食事が一週間3食7日間付いてきて、おかわり自由、エアコン完備、食費光熱費すべて込みの価格です。ここからさらに頑張っていきたいと思います。
ー素晴らしい環境ですね。インターハイもなくなってしまい非常に残念ですが、まずは皆さんが健康で安全にバスケに取り組めることを願っております。これからも頑張ってください。本日はありがとうございました!