浜松開誠館高校サッカー部・青嶋文明監督インタビュー

2019.01.30 written by SPLYZA Inc.

昨年末、第97回全国高校サッカー選手権静岡県予選にて悲願の優勝を果たし、初めての全国の舞台に立った浜松開誠館高校サッカー部。2005年の創部からチームを指揮する青嶋文明監督にお話を伺ってきました。
※こちらのインタビューは2019年1月23日(水)に、浜松開誠館高校にて行われました。


ー冬の選手権、お疲れ様でした。今回の全国大会出場を果たすに当たって、弊社プロダクトであるSPLYZA Teamsがどのように役に立ったかをお伺いできればと思っております。

青嶋監督:
静岡学園との決勝でのセットプレーからの2得点は、まさに分析作業が身を結んだものです。このアプリなくして、あのゴールは生まれなかったのかなと思います。それだけではないんですけど、分かりやすい部分でいうとそこですかね(笑)



ーご活用いただいてありがとうございます(笑)では、普段どのような流れでお使いいただいているかも教えてください。

青嶋監督:
うちのサッカー部にはカテゴリが4つあるのですが、シーズン中は週末に行われたすべてのカテゴリの試合をアップロードしています。公式戦に限らずトレーニングマッチも対象で、試合終了後は即座にアップして選手たちに共有しています。生徒たちにはその試合を必ず見るように伝えていて、自分のプレーを振り返るよう促しています。タグ付けに関しては、コーチングスタッフから義務付けるときもあれば、生徒たちが自主的に行うこともあります。時間の関係もありますので、そこは状況に応じて使い分けています。

ーミーティングの際にメンバーが集まった場で試合映像へのタグ付けを取り組むことはあるのでしょうか?

青嶋監督:
基本的にはカテゴリーごとに集まって、平日の朝にタグ付けを行っています。週に1回か、少なくとも2週間に1回はやっていますね。よくあるのは、下のカテゴリーの生徒たちが、トップチームの試合をタグ付けすることが多いかもしれません。下のカテゴリーは下級生が主になるので、「トップがどのような状況か」というのを学ぶ意味もあります。トップチームの生徒たちは、試合が終わった直後から自分達でタグ付け作業に入っています。



また、生徒のタグ付けだけではなくSPLYZA Teamsのルーム機能を用いて、スカウティング情報の落とし込みとして相手チームの映像や、チームとしてどう言った作戦・戦術をとるか?といった共有ツールとしても使っていますね。

SPLYZA Teamsの導入前と導入後で、チームや生徒にどのように変化が見られましたか?

青嶋監督:
高校生はアマチュア中のアマチュアなので、サッカーに対する学び方、姿勢、モチベーションには極めてばらつきがありますから、そもそも生徒たちの日常生活の中に「自分やチームメイト、また相手チームのプレーを見てそのプレーを評価する」という機会は非常に少ない訳です。まずその環境を与えることができたのは非常に大きな変化です。

また分析といっても、個人・自チーム・相手チームの分析があり、分析する場所やボールの有り無し、他にはセットプレーや攻守の切り替えなど色々あります。今までは、映像を与えても漠然とサッカーを見てしまっていたものが、色々な観点から試合を見ることができるようになったのも大きな成長だと思いますね。



ー先日青嶋監督とお話ししていた中で、SPLYZA Teamsを導入後に下のカテゴリーの生徒にも目が止まるようになった。と伺いました。

青嶋監督:
最近は「頭の中を整理することによって、プレーが大きく変化する」というのを監督である私の中でもかなり実感しているんですね。ひとつ面白い話があります。ある日、上から数えて3つ目のカテゴリーで自チームと相手チームの分析をしていく中で「この局面ではこのプレーを選択するべきだ」と、プレーを分析して整理する力を磨いた生徒がポンと出てきました。

彼はその部分を磨くことにかなり意欲的になっていったので、その生徒のインテリジェンスがそのままチームの力にならないかと考え、試しにトップチームに昇格させてみました。正直に言うと、プレーヤーとしてはそこまでのものは期待していなかったんですが、実際にトップで試合に出場させたところ、プレーも整理されて、結果的には全国大会にも出るまでの選手に成長したんです。これは凄いことですよ。

プレーヤーは瞬間瞬間で最適なプレーを選択しなければいけない訳ですが、その生徒は、何回も何回も「見て学ぶ」を繰り返すことによって、感覚の中にその判断が整理されてきたんだと思います。そうなると大崩れすることはないんですね。自分の能力を把握した上で、効果的なプレーを賢く選択できるようになりました。



彼は身体能力が抜きんでていた訳ではないですが、それを凌駕するほどの判断力が身についていました。それは、撮ったままの映像を見て、ジャッジする。つまり試合映像へのタグ付けを繰り返すことによって、コーチ陣の考えるサッカーの理解が深まり、プレーを整理する力を磨いていったのだと思います。

僕自身も、生徒へのアプローチというのが「100回やって身につけろ」ということより、取り組む前に「なぜこの練習をやるのか」「どこを注意しなくてはいけないのか」といったことを監督やコーチに言われるがままではなく、生徒たちが自ら頭の中で予め整理しておくことで、実際の練習の効果を何倍にも高めることができるのではないか、と考えるようになりました。

ー青嶋監督の中でも、指導に対するアプローチに変化があったんですね。

青嶋監督:
どうしても私含め現場の人間は「何度もトライすることで、大きな収穫を得られる」と思いがちですけど、科学的な側面からも「練習量が必ずしも成果に比例するわけではない」ということが言われてきています。開誠館でのSPLYZA Teamsを使ったこのような取り組みは、まさにそれが言えるのかなと。つまり「プレーの成長は極めて頭の成長に比例する」と考えるようになりましたね。他のチームもこういった、選手だけでなくコーチや監督にまで良い影響を与える「映像を活用したテクノロジー」は積極的に取り入れるべきだと思います。


青嶋文明監督プロフィール

浜松市生まれ。浜松開誠館高校サッカー部の創部2005年から指揮する初代監督。14年目となる2018年に静岡県大会を制し、監督として初となる全国大会出場を果たす。高校時代には清水商(現清水桜が丘)2年時に全国選手権優勝を経験。また清水エスパルスのFWとしても活躍した。