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興國高校サッカー部・内野智章監督インタビュー

2019.04.23 written by SPLYZA Inc.

高校サッカー界において「関西のバルセロナ」の異名を持ち、毎年Jリーガーを輩出している事でも有名な大阪市天王寺区にある興國高校サッカー部。そのチームを率いる内野監督に、OBでもあり現在J1ヴィッセル神戸で活躍中の古橋亨梧選手の話や、参考にしているチームや監督、また指導者を目指す方へのアドバイスとして「海外を知ることの重要さ」等についてお伺いしました。


OBの古橋選手について&参考にしている海外のチームや監督

ー現在ヴィッセルで大活躍中の古橋選手について、内野監督が指導されていた時代のお話も合わせてお伺いできますか?

内野監督:
(古橋選手が)高校3年の時はチーム内でも5番手の選手やって、1番手と2番手はすぐにJリーグに行って、3番手と4番手の選手は1歳下の世代だったんですけど彼らもJに高卒で入って、古橋選手はその4人の次やったんですよ。彼に関してはポテンシャルはあったけど、正直なところ当時は高卒ですぐにプロでも活躍できるな!って感じではなかったですね。僕の考察としては、中央大学とJ2のFC岐阜でウチと似た系統のサッカーができてプロ選手としての下地がしっかりしたのと、今在籍している神戸でも彼が活きるスタイルを志向しているので、古橋選手自身が最大限にパフォーマンスを発揮できるチームを渡り歩けているのは大きいんじゃないかと思ってます。そう考えたらむちゃくちゃ運がいいですよ。運も実力のうちですけどね。



ぶっちゃけFC岐阜も中央大学4年の12月に決まったぐらい、当時はどこも行くところがなくてやっと決まったって感じだったんですよ。日本のクラブだと4-3-3のウイングを使うチームっていうのがあんまりなくて。ただタイミングよく大木武さんが岐阜の監督になるってことで「いやそれだったらいい選手いますよ!」って中央大学の部長が彼を推薦して、実際に監督が本人を見たら走っても50m5秒台やし、運動能力も高いし技術も間違いないし…ほんで入団がほぼ即決で決まって、そっからJリーグ入って以降ずっとスタメンですよね。岐阜でも神戸でも。すごいと思いますよ。

大体プロのサッカーと高校のサッカーでだいぶやり方が違うのでみんなそのギャップに苦しむんですけど、彼は大学に行ってからプロになったことで逆にアジャストしやすかったのかなって思います。あとやっぱり彼は持ってますよね。行くとこ行くとこでチームのやり方にフィットするっていうか。大学でも岐阜でもガンガンパスくるし、神戸でも「俺がここや!って走ったらイニエスタから必ずパス来る」って本人が言うてました。ウチにおった時はバルセロナで教わったやり方を僕の解釈で教えてただけなんですけど、イニエスタだけじゃなくてビジャも「おお!やりやすい選手おるやん!」ってなってるらしいですね。なんかもう僕からしたら奇跡のパズルが繋がってる感じです。まあ持ってるもんは間違いなかったし、何より真面目です。頭もいいしね。近いうちにぜひフル代表に入って欲しいですね。

ー興國高校はボール保持を基本としていますが、参考にしているチームや監督はいますか?



内野監督:
結構あるんですけど、普遍的なんはアヤックスとバルセロナがベースで、最近はマンチェスター・シティとリバプール、あとはチェルシーも面白いなあと。で、参考にしてる監督はクライフとグアルディオラ、でクロップですね。なんで今はリバプールとマンCの試合は必ず観ます。ここ数年のバルサのゲームはかなりメッシに依存してるので(興國高校として)超絶参考になるかというとアレなんで、めっちゃ観てるというよりはモデルチェンジが細かくされて行ってんなーって断片的に見てる感じですね。もちろんバルサは大好きですよ。でもってアヤックスは今回のチャンピオンズリーグでベスト4ってのもヤバイし、そこのキャプテン(マタイス・デ・リフト)が19歳ってところにもめちゃ注目してます。行くとこまで行って欲しいです。

ーとなると、やはり選手と一緒に試合を見たり、議論したりする感じですよね?

内野監督:
むっちゃしますね。それこそマンチェスター・シティやらリバプール、アヤックスの記事や動画なんかを選手とLINEで共有して、選手たちに感想をアウトプットさせて意識づけをさせるっていうんはほぼ毎日のようにやってますね。彼らの反応も僕と少し違った視点で試合を観てたりして、結構おもろいですよ。


トレーニングのこだわりや映像の活用方法について

ー内野監督のトレーニングのこだわりはありますか?

内野監督:
フィジカルをしないことですね。走るだけみたいなんはしないけど、ボールを使わないという意味では、体幹コントロールのトレーニングはめっちゃします。あとは「Japan's Way」じゃないですけど、日本人の国民性とか気質を加味した上でヨーロッパの良い部分と南米の良い部分を合わせるようにして、普段からその辺を意識してトレーニングしてる感じですね。ほんまに毎日そういう研究しかしてないです(笑)

ー試合前のトレーニング内容の決定基準については、自チームの試合映像のフィードバックなども影響するのでしょうか?



内野監督:
基本は次の相手によってどうするかが8割くらいで、前の試合があまりにもひどい時は修正のためのトレーニングって感じですね。その場合は映像のこの部分をタグづけして!って生徒に指示して、そっからみんなで映像を振り返る感じです。

ータグ付けという点ではもう1年半ほどSPLYZA Teamsをご活用いただいてますが、導入後の変化などあれば。

内野監督:
特に動画の共有で活用してます。遠征の時もみんなで時間かけてタグづけした動画を移動中に確認できたりしますし。いちいち集まらんでもイメージが共有できるんは相当デカイです。例えば失点シーンとかピンチのシーンって、リプレイ観たいなっていうのしょっちゅうあるじゃないですか。それは試合が終わったらすぐに見れるようにしてますね。

あとは試合の映像が手軽にスマホでも観れる分、選手の修正が個々にできるんはかなり大きいです。今まではチーム単位でしか見れなかったんで。自主トレとかそのへんの精度はだいぶ上がりました。ほんまですよ。

ただ公式戦が始まると前の試合をじっくり振り返ることができないので、そこは専門的に分析できるスタッフがいるといいなと思っています。ウチの分析やりたい!っていう関西の大学生とかおったらもういつでも絶賛募集中です!(笑) いやほんまに、いい選手は揃ってるんで分析しがいはあると思いますよ。いつでも来てください。


興國高校の目標と指導者としてのビジョン、そして哲学。

ー2019年の興國高校の目標をお願いします。



内野監督:
残すところはプレミア昇格ですね。それを最大の目標にしてます。怪我だけは気をつけなあかんなぁ。あとは外的要因として…台風に勝つとかですかね!ウチなぜか荒天の日に大事な試合が多くて(笑) まあ冗談は置いといて、これは僕のこだわりなんですけど、ヨーロッパに行って初めて知ったことなんですが、カップ戦は「WINNER」いうて、んでリーグ戦は「CHAMPION」と呼ぶみたいなので、真のチャンピオンを目指すという意味でもそうやし、1試合1試合の積み重ねなんでリーグ戦は確実に勝って行きたいですね。

ー指導者としての将来のビジョンがあれば教えてください。

内野監督:
興國高校サッカー部で全国大会の常連になれて、ある程度結果も出せるようになったら、Jクラブのトップじゃなくて育成年代の指導者になりたいなと思ってます。まだ相当ぼんやりでこういうこと言ってええんかなって感じですけど。ほんま国内のビッグクラブのユースって全国のトップオブトップの選手を連れてくるんで、そういう間違いない才能を持った子供たちを指導して、自分がどこまでできるのか試してみたいなって漠然と思ったりしてます。

あとは代表クラスの選手を興國高校からバンバン輩出したいですね。究極はスタメン11人全員うちのOBみたいなんが理想です。チャンピオンズリーグでぶっちぎって活躍する選手も出てきてほしいなあ。そうなったらめっちゃ応援しますよ(笑)

ー最後に、指導者を目指している人へのメッセージがあればお願いします。

内野監督:
指導者にメッセージ?そんなん考えたことないなあ…とりあえず頑張ってくださいとしか言いようがないですね(笑)

もちろんやるからにはてっぺんを見て欲しいなっていうのはありますけど、上を目指すのであればやっぱり日本以外の実情を知ることも大事だと思います。例えばスペインに行く!ってなってもバルサとかレアルとかのトップレベルの試合ばかり追っててもしゃーないですから、街クラブの試合や取り組みなんかも自分の目で確認して、経験をためてくることも必要かなと思ってます。日本に入ってくる情報ってほんまに偏ってますから。もちろん最先端は見続けてくださいね。その上で日本に帰ってきて、日本人にあった内容の指導をやっていかないといけないと思います。あとは語学ですね。最低限英語の勉強はしといてほしいです。プラス自分が勉強したいサッカーをやってる国の言語も。正直、僕が一番後悔している部分でもあるので。

繰り返し言いますけど、欧州やとしても末端と言うか草の根で何をやっているかを知ってほしいんです。バルサのカンテラやトップチームでやってることを日本の街クラブでコピーしようとしたってほぼ無理じゃないですか?スペインも街クラブだと普通にコーチが子供にブチギレてますからね(笑)「そんなんやったらあかーん!」言うて。日本でいうところの昔ながらの、ベタベタな指導方法ですよ。そんな感じで、いくらその地域のフットボールに憧れを持っていたとしても、海外やから特別!絶対にいい!って盲信するのはホンマに良くないと考えてます。



話をまとめると、指導者として「どの選手に対してどういうアプローチをするのがいいか?」っていうのを常に最適に判断をし続けるためにも、海外やったら欧州や南米の良い部分と悪い部分、そして日本の良い所も悪い所も全部把握した上でようやくスタートラインやと思います。海外行ったからどうこうやなくて、国内である程度結果を出せてから一人前。まあこうやって偉そうに言うてますけど、そういう意味では僕もまだまだなんで、指導者としてももっと成長していかなあかんなって毎日思ってます。