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【祝!!Aグループ昇格】立教大学体育会ラグビー部・西田HC&太田アナリストインタビュー

2020.03.24 written by SPLYZA Inc.

関東大学対抗戦で戦う立教大学体育会ラグビー部。2019年はBグループで優勝し、入れ替え戦では成蹊大学との試合を制して5年ぶりのAグループ昇格を決めました。そこでヘッドコーチとしてチームを指導し、就任4年目にして見事チームを昇格に導いた西田HC(ヘッドコーチ)とアナリストとしてチームを支える太田さんに、入れ替え戦に向けて行われた準備や分析についてお話を伺いました。

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ーこの度は5年ぶりのAグループ昇格おめでとうございます!早速ですが、今季入れ替え戦に勝利した決め手はなんだったとお考えでしょうか?

西田HC
今年は入れ替え戦に臨むだいぶ前から相手を徹底的に分析して、その試合に対してのアプローチを大きく変えたのが決め手だったと思います。前回は「立教大学のスタイルをしっかりやりきれば絶対に勝てる」というアプローチで試合に臨んだのですが負けてしまいました。勝つ実力はあったとは思うのですが、結果的に負けた。それを受けて今回は「とにかくリスクを取らない」というアプローチに変えて、それを徹底しました。

今までだったら強引にでも攻めたところを我慢したり、立教のエースランナーを走らせなかったり、徹底してキックで蹴り返すということをやっていました。”勝つ”というよりは”絶対に負けない”という戦い方に変えたのが今回の勝利の決め手だったと思います。

ー今回、アプローチを変更する決断に至った理由を教えてください。

西田HC
「今まで負けてきたので変えなければ」という想いがあった中で”孫氏の兵法”を読んで、「ここに書いてあることを素直にやってみよう」と思ったのが一番の理由です。考え方として、勝つためにまずは負けない。極論、戦わなければ負けない。なので、当たり前の事なのですが、相手の得意分野では戦わない。そういった部分を徹底していこうと決めました。この本は学生コーチにも読んでもらって、入れ替え戦に向けて、負けない準備をしていきました。

↓孫子の兵法:紀元前500年ごろ孫子によって書かれたとされる兵法書。現在でも様々な形で意訳され、本として出版されている。


ー具体的に入れ替え戦に向けてどのような準備を行ったのですか?

西田HC
まずは自分がコーチとして携わってきた過去3年間分の敗因分析をやりました。選手たちには最後の試合で泣いて卒業させてしまったので、目を背けたくなる映像なのですが、改めて見返してどうして負けたか?を分析し、原因を特定して「これを絶対に再発させない」というゲームプランを考えました。そうすると先ほどの「無理に攻めない」を徹底していく保守的な戦い方になりました。

その中でどんなことが起きても対応できるよう、プランをA〜Cくらいまで準備し、このゲームプランから逆算してやるべきことって何?と選手たちに問いかけて、まずは自分達でコントロールできる部分を徹底して準備しましょう。しっかりとセットプレーしましょう、ディフェンスしましょう、それらは自分達でコントロールできるので、そこを徹底しましょう。と伝えていきました。

また、細かい部分はスタッフ陣と話合いながら、ディフェンスのこの時はこのやり方、蹴り合いはこのやり方、反則した時のリスクも洗い出して、詳細にわたって戦略を組み立てていきました。オフェンスもゾーン毎のアタックプラン、ユニット毎の戦略、時間の使い方など詰めて行き、キャプテンやリーダー陣に説明していきました。リーグ戦とは異なる保守的な戦術だったので「自分たちのスタイルでやりたい」という意見が選手たちから出ると思ったのですが、しっかりと理論立てて説明ができていたので、反論もなく理解して準備に取り組んでくれました。

↓写真は西田ヘッドコーチ


ーかなり徹底された準備ですね。これらはどのタイミングでチームに伝えたのでしょうか。

西田HC
私の中ではかなり早い段階から形になっていたのですが、選手たちにはリーグ最終戦を終えて、入れ替え戦まで残り2週間というタイミングで伝えました。この2週間をどう使うか、という話をしてチームとして準備していきました。この期間の準備で非常に良かったのは、仮想入れ替え戦(vs成蹊大学)の練習を高いクオリティで行えた事だと思います。

練習相手はBチームの選手たちなのですが、その選手たちが成蹊大学の動きを理解して、高いクオリティで練習に取り組んでくれました。「俺はもう試合に出られないから」とモチベーションが下がってもおかしくないところを最後までやってくれたので、結束も強まりましたし、チームにとってかなりプラスに働いたと思います。

あとは太田(アナリスト)が試合の騒音、歓声を集めて、うるさくて声も通らない環境を再現してくれたり、グラウンド入場時に校歌を流して、可能な限り入れ替え戦を再現していたので、選手たちも本番をイメージしながら練習に取り組むことができていました。オフを入れると実質10日間という短い期間でしたが、チーム全員で質の高い準備できたと思います。

ー入れ替え戦の本番は23-21で接戦を制して見事に勝利でしたね。

西田HC
接戦ではあったんですが、良い準備ができていたので精神的に追い詰められることはなく、負ける気はしてなかったんですよね。途中逆転されたのですが、それでもまだ武器が残っているので、選手も慌てていなかったです。正直、準備したプランの半分くらいしか出していないです。なにが起きても対応できるプランをA〜Cくらいまで準備していたのですが、結果的にその中のプランBくらいまでで済んだという感じでしたね。

↓A・Bグループ入れ替え戦に勝利し歓喜に包まれる立教大ラグビー部の選手達


ー良い準備が結果につながったという事ですが、ゲームプランを作る上で、相手を知る為の”分析”というのは重要な要素だったと思います。その部分について詳しく聞かせていただけますか?

西田HC
相手の分析に関しては"孫子の兵法"にも書かれているのですが、「過大評価、過小評価をしない、事実だけを見る」ということを意識して行っていました。「強そうに見える」や「自チームのほうが強いはずだ」ということは、不確定要素なので一切気にしない。映像と数字を裏付けにして、事実だけで評価していくので、相手を舐めることもないし、必要以上に恐れる必要もない。ここの準備に関してはアナリストの太田がよくやってくれましたね。

ー太田さんはアナリストとして具体的にどの様な作業を行っていたのですか?

太田アナリスト
基本的にはSPLYZA Teamsを使って映像にタグを打って、数字作って、シチュエーション毎に整理して、コーチ陣が映像を見てフィードバックしやすいような状態を作ってあげる。ということを行っていました。

ーシチュエーションの整理とは?

太田アナリスト
相手チームの得点シーン、アタックしているシーン、細かいところだとFWのセットプレイのスクラムで勝っているシーン、ラインアウトのシーンなどを整理していました。コーチから要求があったらすぐに出せるよう、できるだけ先回りして準備していました。自分の作る数字や映像が、選手の戦術理解、次の練習へのフォーカスに関わってくるので、責任感を持って取り組んでいました。

↓立教大ラグビー部のアナリスト太田さん


ーアナリストとしてSPLYZATeamsを使っていて良かったと感じた点はありましたか?

太田アナリスト
常に共有できるというのが圧倒的に良かったと感じています。導入する前に使っていたのはパソコンにインストールするタイプのソフトウェアだったので、映像を人に渡すためには書き出さなければいけなかった。その書き出した映像を共有するために、何人にギガファイル便を送るの?という感じでした。

また、スプライザを使うことで、選手への情報共有の重要性に改めて気づかされました。ソフトウェアで編集していた時は、自分で数字を作ったり、シチュエーションを整理する事で満足していた部分もあったのですが、その情報がスプライザを通じてすぐに選手に共有されて、みんなに見てもらえる環境が構築されると、もう前の環境には戻れないですね。

ー映像が共有されることに物凄い価値があったと。

太田アナリスト
それは確実にありました。先ほど話題に挙がった練習の中でのBチームの"仮想成蹊"のクオリティにも繋がったと思います。映像、タグ、書き込みをみんなが常に見ることができる状態なので「練習で仮想成蹊をやるよ」となった時に、Bチームの選手も戦術を理解した上で練習に臨めたと思います。

西田HC
立教には寮がなくて、集まれる時間が限られています。みんな実家や独り暮らしの家から学校に行って、授業を受けて夕方集まってきて、そこからウエイト、練習の繰り返しです。その中で練習までの時間でいかにインプットして、グラウンドでアウトプットできるかが重要です。ここのインプットの時間は、寮があると練習後にじっくりミーティングできるのですが、うちはそれが全く出来ない。練習が終わったら風呂入ってストレッチしてご飯食べるのでギリギリです。なので帰りの移動時間などで、スプライザを通じて映像からインプットできることが、かなり戦術理解の助けになりました。



ー移動時間にチームの映像を見ているのですね。本当に映像を手軽に見れる時代になりましたね。

西田HC
そうですよね。僕が大学の頃の初めは、赤と黄色の線をテレビに繋いでVHSでダビングしていましたよ。そのころからデジタル化が少しずつ進み出したので、大学4年生の最後のときは分析の映像をDVDに焼いて選手に配るところまで出来ていました。そこから急激に進歩して今では移動中にスマホで見れますからね。

ー映像技術の進化は目まぐるしいですよね。去年から今年にかけて映像の使い方で変化はありますか?

西田HC
選手達への説明やフィードバックに映像を使う機会はかなり増えています。例えば、走る練習をする前に映像を見せます。「ランニングフォームがこうだから、こう直そうよ」と映像に書き込んで説明してから実践できるので、今までよりも練習の質がかなり向上したと思います。

あと、基礎の練習に入る時も、ゲーム形式で出来ていない所をタグ付けして映像で見せて「ゲームの中のこのプレーをできるようにするためには、この基礎練習が必要だよ」と映像と紐付けて説明できます。そうする事で基礎練習に取り組む選手たちの姿勢も変わってきます。そういった説明やフィードバックの回数を増やして、練習の質を上げていくような映像の使い方をしています。当初は試合映像の分析がメインでしたが、そこから練習での映像活用、ミーティングでの映像活用と変化しています。

↓SPLYZA Teamsの書き込み機能を活用した「ランニングフォーム」に対するフィードバックの例


ーかなり映像を活用していますね。西田さんは昔から映像や分析は好きなタイプだったのですか?

西田HC
好きというか、勝ちたいからやるという感じですね。きっかけは自分が大学生の時です。1年生で入れ替え戦に勝利して、2年生の時に対抗戦Aグループで戦ったのですが、それが立教史上初で、勝手がわからずボロボロにやられたんですよ。。その翌年もAグループに残留はしたのですが、その中で「どうやったらここの相手に一矢報いることができるのか?」を考えて、分析をやるようになりました。高校時代は強いチームだったので、分析しなくても自分たちのスタイルを貫けば勝てたということもあり、大学の時に「映像を見て分析」の大切さに気づいて、現在まで継続してやり続けていますね。

ーなるほど。分析は勝つ為の手段ですね。今回、ヘッドコーチとして見事にチームを昇格に導きましたが、今後西田さんのコーチとしてのキャリアの展望はありますか?

西田HC
正直なところ、そこまで具体的なイメージは無いですね。元々「日本一のコーチになりたい!」というスタンスではなく「母校である立教ラグビー部を勝たせたい」という想いがあってコーチをやらせてもらっています。その為により良いコーチになるという目的はあります。なので今は、立教を勝たせたいという使命感とマインドだけです。ちょっとコーチとしての志が低いと言われそうですが、僕の中ではそうです。選手を育てる仕事で、もちろんやりがいは感じますが、そこから先はまだ分からないですね。

ーありがとうございます。最後に新シーズンに向けた抱負をお願いします。

西田HC
僕が大学1年生時に入れ替え戦を戦って、それから18年連続で入れ替え戦に出ているんです。その続いてきた伝統をここで断ち切りたいです。そのためには最低2勝以上。3勝できれば大学選手権が見えてくるのですが、チームとしては2勝以上を目標として決めました。なので、その目標を達成できるように頑張って行きたいと思っています。


西田HC/プロフィール

現役時代はNECグリーンロケッツに所属し活躍。立教大学ではOBとして10年前よりアドバイザーとして関わるようになり2016年よりヘッドコーチを務める。就任初年度から関東大学ラグビー対抗戦B全勝優勝を成し遂げ、2019年は入れ替え戦に勝利しAグループ昇格を決めた。識学所属。

太田アナリスト/プロフィール

ラグビーのプレー経験は小学校まで。中学と高校では競技から離れ、立教大学に入学。大学1年生でプレーヤー復帰を試みるも大きな実力差を感じて断念。ただラグビーにもう一度関わりたいという強い想いから、現在は立教ラグビー部のアナリストとしてチームを支える。

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