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【祝!全国大会初出場】修徳中学校サッカー部・吉田拓也監督インタビュー

2019.10.17 written by SPLYZA Inc.

東京都葛飾区にある中高一貫校の修徳中学校。その修徳中学校サッカー部を25歳の若さで指揮し、今シーズンは東京都大会優勝、関東大会を勝ち進み、初の全国大会出場に導くなどの手腕を発揮した吉田拓也監督に、チーム内での映像活用や分析についてお話を伺いました。


チームで求められるプレーを映像で”掲示”

ー早速ですが、修徳中学校での映像の使い方についてお聞かせいただけますか?

吉田監督:
前々から映像を使った分析は行っていて、修徳中学は基本的に火曜日にミーティングをしているんです。日曜日に撮った試合映像を時間かけて分析して、編集して、全員集めてプロジェクターに映して、というのをやっていました。映像で視覚的に伝えるってことが大切だとそもそも考えていたので。

ただ悩みとしては、学校なので選手が揃わなかったり、全員を教室に入れることができなかったり、レベルによって理解できる子とそうでない子がいたり、関わってない子は面白くなかったり。これは全員向けじゃないな、ということで、だんだんAチームだけのミーティングに変わっていきました。そうなるとAチームは理解して良いサッカーができてるけど、Bチームは全くっていう状況も出てきて、全体でなんとか映像を使ってできないかな、というのを常々考えていました。


↑吉田監督

それで、今期からSPLYZA Teamsを導入して全体でやっています。まず全ての映像を撮ったんです。練習試合、公式試合、対戦相手、全部撮影してアップロードとやっていきました。あと、掲示する映像と自由に編集して良い映像を分けて、掲示する映像の中には、例えば『ビルドアップ』というルームがあって、過去の試合、プロの試合、トップの試合などの映像を切り取ってアップロード。これを見ればビルドアップでうちが何をやりたいか?が簡単にわかる状態にしています。

ーチーム内で必要な動きの映像を共有しているのですか?

吉田監督:
そうです。僕らは”掲示”って呼んでます。これはもう全員に対して「見とけよー」って言っていて、うまくできていない動作に関しては教えるとかではなく「スプライザ見て」と。今までボード使ったり、言葉で説明をしていたところから「スプライザのBで出てるから、まさにそのシーン」という感じで、説明はかなり効率的になりました。言葉よりも映像の方が圧倒的に伝わりやすいです。”掲示”は都度更新されていて、『リスタート』のルームもあるのですが、相手にやられた映像を共有してウチの武器にしちゃったり。

あとは、Tリーグ、東京都大会、関東大会の対戦相手の映像を全部入れて、スカウティングもしました。映像を編集したらその内容を「見といて」って。試合前の長い期間、二週間前くらいからずーっと対戦相手のウィークポイントをとことん入れていました。関東大会では全試合スプライザミーティングをしていました。ホワイトボードに「相手にこういう斜めのボールを入れると右足で踏み切ってヘディングするのがウィークだよ」とか、相手のウィークポイント、ストロングポイントを踏まえてどう試合を戦うか?を確認していました。

事前に映像で掲示しているので、ミーティングでは確認するだけです。遠征中は待ち時間が長いので、みんな本当に見てインプットしてて、関東大会の2回戦で5-0で勝つことができたんですけど、その試合は分析がハマりました。事前に「この時はこっちくる」ってわかっていたので、ほぼ完全に抑えることができていました。

他に『トレーニング』というルームもあって、希望する選手の練習の動作を撮ってあげる。その映像をアップロードして日々の変化を自分で振り返れるようにしています。ここでも”掲示”はしていて、プロの友達にお願いしてトレーニングの様子を撮影させてもらって、お手本として載せています。練習の時も「今日は湯澤(現ヴァンフォーレ甲府)のアジリティーやるよー」とか「大地(現柏レイソル)みたいなへディングやれー」とか言って。その練習の映像を撮って見たりして、「プロと比較してどう?」とか「手の動きとか見てみ?」とか選手と一緒に考えながらやっています。


↑『トレーニング』のルーム

ーかなりSPLYZA Teamsを使い込んでいますね。映像を使った指導によって選手たちの変化は感じますか?

吉田監督:
選手からは、感覚でプレーしていたところから、客観的に理解した上でプレーできるようになっているという感想を聞いています。ただ少し映像に依存している部分もあると思います。まだ中学生なので、僕らが掲示しすぎると、アイデアを発揮しづらくなるのが懸念されます。なので育成の指導者として映像を使っていく上でどこまでやるのか?っていうのはまだ答えは出ていないです。ただ選手たちの成長スピードは速くなりました。チームを仕上げる上で、映像を見せていくと理解が速いので、基本的な部分は掲示して「プラスαでアイデアだよ」という話はしています。

ースカウティングなどの映像編集は選手も行うのですか?

吉田監督:
選手たちが編集することは現状は無いですね。今はまだ全体で映像を使うようになって半年。まずはこれが原理原則だからっていうのを、映像を通じて選手たちに伝えている段階です。ただ、今の中学二年生は、今年やってきたことがベースにあるのでこれから編集を解放していこうかなと思っています。

いきなり自主性と言っても、まずはものの良し悪しを理解する必要はあると思うんです。まずはパターンを掲示して「三角形でここ繋げるよね」「ここが空いて、ここがサポートだよね」っていうのを理解して、その中から状況に応じて選択できるようになってもらう。そこから、選手たちが映像を見ながら「次はこうしようぜ」「相手はこうだからここ取ろうぜ」っていうのが遊びで始まったら、いよいよ自分たちで編集もできるんじゃないかなと思います。


分析に基づいたトレーニングで上手くなっていく

ー遊びで選手たちが分析をするようになるのは面白いですね。吉田さんは分析をどのように学んできたのですか?

吉田監督:
どこで学んだかって聞かれちゃうとなんとも言えないですが、本当に色々な人が身近にいてそこから学ばせてもらいました。ただ分析が大事だなって感じたのは20歳くらいで行ったオランダですかね。指導者仲間で数年前にオランダ、ドイツの指導者研修に行って、その時にオランダ協会のインストラクターがホテルで講習をやってくれて、その時に「分析大事だなー」と。

オランダでは自分たちが今どういう状況で、この選手はどういう特徴があって、だからこういうプランがあって、それを実行して、そこでまた分析して、というサイクルを回していく。日本サッカー協会のB級ライセンス講習ではそういう部分にあまり深く触れていなかったのですが、ヨーロッパではまず分析。分析があって、だからこのトレーニングを考えついて、言葉の伝え方だったり、オーガナイズっていうのが入ってくる。「バルサがやっているトレーニング」とかではなくて、所属している選手、グラウンドの状況、そこに対戦相手の良いところ、悪いところ、自分たちの良いところ、悪いところをしっかり分析して、トレーニングをして、戦っていくと上手くなっていくのかなと。

ースカウティングでは具体的にはどのような分析するのですか?

吉田監督:
そうですね。まずは中心選手を見て、システム見て、得点、失点シーンを見て、ストロングポイント、ウィークポイントを見出します。その後に、利き足を結構見ます。中学年代だと利き足によってできない動作はたくさんあると思っていて、そこは相手のウィークポイントで、見て対策を考えて伝える。

これは高校年代になるとガラっと変わるんじゃないですかね。右利きだとしても左足が蹴れないっていう選手は配置されない。なのでウィークポイントって言っても本当に細かい癖を見るとか、高校は分析がより繊細になると思います。

ー分析に対しての強い想いを感じます。

吉田監督:
元々そういうタイプではなくて、本当にフィジカルだけで流経(流通経済大学付属柏高等学校)に入れてもらったんですよ。ゴリってあだ名で、なんの工夫もなく走ってドカーンみたいのをやっていて、でも最後到達できない世界があって、それで指導者になってキチンと分析する事や考えてプレーする事が大事だなと思って、今は自分で整理して日々勉強しながらやっています。


↑ヨーロッパでの指導者研修の様子


自分のコーチングを映像で振り返る

ーその他で何か映像でメリットなど感じていれば教えてください。

吉田監督:
今までの話とはちょっと別なのですが、自分を振り返る機会にもなってます。映像撮影する時に音声入るじゃないですか、試合映像を見ていたら自分の声がうるさくて嫌気がさした時があったんですよ。当時は熱くなって気づかなかったんですけど、あとで映像で見て気づくことができました。試合の時にコーチが何をしているか、クオリティって大事だと思うんです。立ち方、声の出し方、タイミング、どう見えているかっていうのがあまり気づけない部分ではあるのかなと。それがあって反省して意識して改めたんです。そしたら、その後の試合でお世話になってる方から「良いコーチングしてたね」って褒めてもらって、「良かったなぁー」と我を振り返りました。選手たちにもそう言ってるのだから、コーチにもそういう機会があっても面白いかもしれないなと思っています。

正直、指導者になるとなかなか指摘してもらえないですから。映像を見て、何の余地もなく「ああダメだ」と。見たらわかる証拠でした(笑) 選手たちも、ドリブル自信あるかもしれないけど「見てみ、8回トライして7回取られててそのうち1回はタッチ割ってるよ」見せたら「あっ」って「この時こういう持ち方するからじゃない?」って、そしたら選手もさすがに気づきますよね。伝える上で客観的で具体的ってことがどれだけ大切なのかを感じています。

ーそういう気づきもあるんですね。面白いです。それでは最後に、修徳中学校での今後の目標を聞かせていただけますか?

吉田監督:
チームとしては中体連日本一。高円宮杯全国出場。そしてより多くのプロ選手、関東一部の大学リーグとかでプレーする選手を輩出することがサッカー指導者としての目標です。あとはやっぱり社会に通用する人間を育てること。そこはもうブレずに教育者としてやっていきたいですね。 そんな中で映像はこれからもうまく活用していきたいです。