Sports Analytics LabPowered by SPLYZA Inc.


プロスポーツに携わることだけがスポーツビジネスではない

2020.09.18 written by Daichi Kawano(SPLYZA Inc.)

「スポーツビジネス」と聞くとプロスポーツの運営や最新のテクノロジーによるCRM(顧客管理)、スタジアム周辺のエコシステム構築など華々しいイメージがあるだろう。実際のところ、プロのクラブやプロスポーツ選手を支える技術やサポート体制、またそのファンを分析するサービスは数多存在している。

ただ、プロスポーツに関わる人間は日本のスポーツ界全体の数パーセントに過ぎない。またこれまで、その領域外に存在しているアマチュアスポーツや学生スポーツに従事している人々をサポートするものは数えるほどしかなく、海外の高額なサービスを導入するしかなかった。その際は環境構築にもある程度の出費が必要となる上で。

当たり前のようにスポーツができない状況下になってしまった今こそ、日本のスポーツ文化の維持、そして発展を止めてしまう訳にはいかないのだ。そして、そのような「トッププロ以外」のスポーツに関わる人々を支えることこそが、SPLYZA Teamsの大義名分であると、私は認識している。


スポーツ界も大打撃…パンデミックの影響



スポーツ界におけるコロナの影響については、敢えてここで語るまでもないだろう。多くの大会が中止もしくは延期となり、プロスポーツの公式戦も長期の中断、場合によっては中止を余儀なくされた。今でこそ入場制限のかかった状態での有観客興行が可能なところまではきているが、またいつ無観客、もしくは中断になるかわからない。予断を許さない状況だ。クラブ単位でも、存続すら危ういチームも多いと聞く。

それは学生スポーツも同じである。寮生活を行っている学校も少なくはなく、いつ集団感染が起きてもおかしくない中で、部活動をコンスタントに継続できる保証はどこにもない。多くは教育の現場とも直結しているため、個々の細心の注意と国や自治体、各教育機関の定めた運用ガイダンスに則った上で、綱渡りのような日々が続いている。


プロのクラブでの分析と学生スポーツの分析の違い



話変わって、トッププロの分析は主にスカウティング分析とパフォーマンス分析に分類される。イベントデータやトラッキングデータを扱って定量的にやるものが代表的だが、人によっては小難しく、また魅力的に見える人もいるだろう。一方、学生スポーツ(特に高校年代)は高額なツールを導入する資本もなければ、それを理解して扱える体制や人材を確保できないケースが多い。日本のプロスポーツの現場も似たような状況かもしれないが。

主に学生スポーツでの映像分析は「振り返り」に用いられる。”敵陣で何回ロスト”だとか”左サイドからのクロスの成功率は”…みたいなものばかりではない。「この映像での状況、私はこう思うけど、君たちはどう考えるかな?」と指導者が選手に問いを投げかけたり、選手同士でディベートしたり。その多くはチーム内のコミュニケーション、そして「共通理解」のために活用されている。

なお、ある程度予算が確保できる一部の大学はプロツールを使う傾向にあり、そのまま実際にプロの現場に出向く事例もあるようだ。


主に高校年代の部活動に映像分析が浸透して起こりつつあること



浜松の開誠館高校サッカー部ではアプリを通じて分析を行っていた3軍の選手が「やたらとズバズバ的確に問題点を指摘してくる」ということで監督の目にとまり、試しにプレーヤーとしてトップチームで起用すると見事にハマり、そのまま全国大会に出場したという事例もある。映像分析を日々行い続けたことで頭が整理され、結果的にピッチ上の認知や判断、そしてプレーの質も向上したとのことだ。

また、とある高校のサッカー部に少し難しい分析手法をビデオ会議にて遠隔でレクチャーした際、「ピッチ上を模した図にチームの約束事を書き込ませる」というタスクを生徒たちに与えた。もともとその部には監督やコーチが作成した概念図のようなものしかドキュメントとして存在していなかったものの、普段から映像分析を行っていた生徒たちは明確にプレーを言語化することができたのだ。これは本当に驚きであった。

その日にレクチャーした内容は私が考案したものであるが、そもそも全国でも屈指の偏差値を誇る高校のみが「数学的なアプローチでサッカーを紐解く」というお題目で分析していた手法であり、導入は難しいのではとタカをくくっていた案件であった。が、実際は普段はあまり勉強自体が好きではないという生徒たちも、大好きなサッカーを介することで、プレーの言語化だけでなく、スプレッドシートを使っての少し手間のかかる表計算や、統計手法などについても自分達で調べて徐々にできるようになっていた。これこそ「道は好む所によって安し」「好きこそものの上手なれ」である。


パンデミック・エフェクトはデメリットばかりではない



試合(特に公式戦)が行われなければ、ゲームの撮影は行われず、分析はおろか映像のアップロードすら無くなる。自然と分析アプリとしての役割を失うことは明確であるため、他のスポーツテクノロジー製品と同様に、SPLYZA Teamsも例に漏れずサービスの休止申請や退会が相次ぐものと思われた。実際に、2020年に入って3月〜6月の新規ユーザーは例年に比べ極端に少なかったものの、その後、想定外の恩恵を受けることに。

コロナの影響により、学校や家庭でのインターネット環境が大きく改善。またPCに限らずスマホやタブレットなど各種デバイスを通しての複数人での遠隔コミュニケーションや共同作業に、人々の抵抗がなくなったのだ。自治体によっては地域の高校全生徒に1台ずつタブレット支給を決めたケースもある。そのせいかSPLYZA Teamsにおいても、昨年よりも動画のアップロード数や再生時間が大幅に向上。「いままでやったどんなソシャゲよりもハマって編集・分析している」というユーザーの声も頂いた。そして新規のユーザーもすんなりと入ってきやすい状況が生まれている。

またこれまでは「試合の振り返り」が主であったが、普段のトレーニングであったり、過去の試合を題材にクイズ形式のコミュニケーションを行うチームも出てきた。他にも、教育現場や授業での活用も徐々に増えてきている。前提として「対面で行う必要がない」ことをテーマに設計・開発されたアプリは、結果的に今の”新しい生活様式”に非常に適したツールになりつつある。


最後に



プロになれるのはごくごく一部の人間のみである。スポーツにプレーヤーとして携わった人の多くは、高校や大学を卒業と同時に競技者としての関係性は終焉となる。その後はプレーヤーである必要はなく、ファンであってくれれば充分なので、スポーツを生涯好きでいて欲しいし、次の世代に継承して欲しいものだ。

観戦がメインになったとしても、”プロスポーツ選手に自らの人生を乗せる”だけでなく、現役時代に「自分が主役」となりチームメイトと意見交換などのコミュニケーション、それらでもって切磋琢磨することで、自分自身の学生スポーツにおける成功体験も語れる。それは試合に勝つことだけでなく、過去にスポーツを通じて何かしらの問題解決をしたという経験さえあれば申し分ない。

改めて、サッカーをはじめとする「スポーツ文化の醸成」は最も上流にあるプロスポーツだけでなく、草の根のアマチュアスポーツや学生スポーツをサポートすることこそが、我々の掲げる理念の本質と捉えている。


プロフィール:河野大地 (Daichi Kawano) デザイナー/アナリスト

宮崎県出身。約10年の広告制作会社勤務ののち、長年趣味で行なっていた映像編集技術やデータ分析、インフォグラフィックに関するスキルを買われスポーツテック業界へ2018年に転籍。現在は株式会社SPLYZAにて試合映像分析アプリの開発・運用にUI設計&デザイナーとして携わる。4児の父。

Twitter
facebook

おすすめの分析入門記事

よく読まれている記事

facebook

twitter