CRSA(Center for Research in Sports Administration)@チューリッヒ:潜入レポート

2018.11.30 written by Gaku Morita(SPLYZA Inc.)

今回はCRSA(Center for Research in Sports Administration)主催のカンファレンスに参加してきた様子をレポートします。このカンファレンスのテーマは「スポーツ」「データ」「ジャーナリズム」でした。こちらはイベントの体験記です。(発表内容詳細については追って紹介していく予定です)

CRSAとは、スイスのチューリッヒ大学のスポーツ研究組織です。永世中立国のスイスには国際機関が多く存在しており、スポーツの国際機関(IOC、FIFA、FIBA、UEFAなど)も多くあります。チューリッヒにはFIFAがあり、IBMやGoogleなどのIT企業も拠点を構えています。その近くにある、チューリッヒ大学では、スポーツとITに関する研究が盛んに行われています。


私は前々からCRSAの活動に興味を持っていて、CRSAのTwitterアカウントをフォローしており、そこでカンファレンス開催情報を発見し、参加希望のメールを送りました。数日後、承認のメールと共にプログラムが送られてきました。見てみると、UEFAとかFIFAとかワクワクする名前が書かれていました。スケジュール自体は日本で行われているカンファレンスと大差ない印象でした。

CRSAカンファレンスプログラム

・ウェルカムコーヒー
・メイン会場でのセッション
・サブ会場に分かれてのセッション
・お昼ご飯
・メイン会場でセッション
・サブ会場に分かれてのセッション
・メイン会場でセッション
・FIFAミュージアムへ移動
・晩御飯

カンファレンス日が近くなり、スイスへ移動し、現地で一晩過ごしてから大学に向かうと人が集まってました。受付を済ませると、名札とチョコとノートとペンを頂き、ウェルカムコーヒーとパンを貰って小さいテーブルで一人でコソコソとやってました。初めは顔の知れた仲間同士で挨拶し合う感じでした。アジア人はおそらく私だけ。


まずはメイン会場でCRSA代表の挨拶。その後、IBMからAIとスポーツの話。UEFAからIntelligence Centerの取り組みについて発表がありました。企業のスライドという感じで作り込まれており、プレゼンテーションもうまい。


その後、サブ会場に分かれてのセッション。大学教授や院生らしき方々が、自分たちの研究について発表していました。基本的には機械学習を使って、過去のデータから未来を予測するモデルに関してでした。色々な視点があったのは面白かったですが、正直どうなの?というような研究もありました。(eSports人口から離職者を予測。審判のイエローカード枚数と走行距離の関係など)


サブ会場でのセッションの後は、お昼ご飯。味は良い。近くのテーブルで立ちながらご飯を食べていたら、チェコの人が話しかけてくれて色々情報交換できました。その人はトラッキングデータを学習させて、試合の勝敗を予想するようなモデルの研究しているとのこと。この手の研究は現在流行している印象。


お昼の後は、データとジャーナリズムのセッション。これはかなり新鮮な学びがありました。ジャーナリストもプログラミングを覚える時代という話が多い。プログラミングを使ってスタッツデータを抽出してグラフ化したり、テキストを抽出して記事を書くことが活発になってきているとのこと。


そこからもサブ会場に分かれてのセッションは続き、最後はメイン会場でクリスさん。データとサッカーの有識者で、関連する本を執筆している大学教授。データを使ったチーム運営に実際に携わっていて、サッカー版のマネーボールを実現する夢を語っていました。マネーボールのインパクトは世界的に大きかったと再認識。


朝から話を聞き続け、これで終わりかと思いきや、最後はFIFAミュージアムへ移動し、晩御飯とのこと。歩いて現地へ移動するとテンションの上がる建物に入ることができました。壁には2018年ワールドカップの印象的シーンの絵が飾られていました。


ここで、FIFAからの締めのプレゼン。2018ワールドカップのデータ活用の話がメイン。そして、データはこれからもっと重要になってくるし、データを扱える人材も必要。そういった視点がスポーツを進化させる。という趣旨でした。


その後は、お酒も入り、また色々と情報交換できました。データでスポーツを紐解こうとする人がこんなにも多くいるとは。そんな欧州の人のサッカーに対する熱量も体験できるカンファレンスでした。(絵は日本 vs ポーランド戦です)


以上が、このカンファレンスの体験記です。ヨーロッパでどんな研究がされているのかの好奇心で動いてみましたが、大学生やスポーツに関係ない人も多く、新しいものが間近で見られるオープンなカンファレンスでした。

【まとめ】
スイスに行くのは大変ですが、それ以外はあまり敷居の高くないオープンなカンファレンスでした。朝から晩までご飯などしっかりとセッティングされ、充実したプログラムだったと思います。セッションに関しては、メインは基本的に面白かったですが、サブは正直イマイチでした(扱っているデータの質が悪い)。扱える良いデータが少ないというのは研究者にとって世界共通の悩みなのかなという印象。FIFAミュージアムでご飯を食べながら、FIFAの方の発表を聞くという贅沢な体験ができたカンファレンスでした。


ここで得た情報は以下です。

全体のまとめページ:CRSAによってまとめられたカンファレンスの写真やスライドが見れます。
https://crsauzh.github.io/sportscon/

Gephi:オープンソースのグラフ可視化ソフト。パスネットワークなどのグラフを作れます。
https://gephi.org/

StatsBomb:サッカーのデータを扱っているウェブサイト。JSON形式のデータを入手できます。
https://statsbomb.com/

Roger Federer 20 years, 20 title:ロジャー・フェデラーの特集記事。データとグラフが多く盛り込まれています。
https://interactive.swissinfo.ch/2018_01_28_federer20/en.html#/en

MathSports:スポーツとITのカンファレンス。次は2018年12月、2019年7月に予定。
http://www.mathsportinternational.com/index.html

SkunkSports:スイスの会社。アマチュア向けウェアラブルトラッキング(GPS)のアプリ。
https://skunksports.com/

プロフィール:森田岳 (Gaku Morita) 分析エバンジェリスト

自動車業界出身で社会人サッカーチームの運営/監督/選手経験を持つ。サッカーに関するスタッツ・客観的なデータをこよなく愛し、戦術ボードアプリ「Tactical Board」の開発者でもある。尊敬する指導者はマヌエル・ペジェグリーニ。

Twitter