
【これからのスポーツ界に革命をもたらす】巨大な市場規模と成長が見込まれる生成AI
2024.07.18 written by Daichi Kawano (SPLYZA Inc.)
スポーツ界は今、かつてないほどの変革期を迎えています。その立役者の一つが、生成AIと呼ばれる人工知能(AI)技術です。AIは膨大なデータを分析し、到底思いつかないような洞察を生み出すことは皆さんもご存知かと思います。現在、その生成AIの技術はスポーツの世界においても積極的に導入が始まっており、具体例を挙げると「アスリートのパフォーマンス向上」「試合観戦におけるファンエンゲージメントの最適化」更には「新たなビジネスチャンスの創出」など、様々な可能性を秘めています。
アスリートのパフォーマンスを極限まで引き上げる
生成AIは、アスリートのデータやパフォーマンス指標、身体動作を分析することで、個々の選手に最適なトレーニングプログラムを設計することができます。これは、従来の画一的なトレーニング方法とは一線を画し、より効率的で効果的なトレーニングを可能にします。さらに、AIは試合中のデータをリアルタイムに分析することで、選手にアドバイスを送ったり、戦術を調整したりすることもできます。
ファンを魅了する新たなエンゲージメント
生成AIが導入されることによって、従来のアプローチに加えてファンとのエンゲージメントが飛躍的に高まり、最適化が進むとされています。生成AIは試合のハイライト動画を自動生成したり、ファン一人ひとりに合わせたコンテンツを配信したりすることができ、加えてVR(バーチャルリアリティ)やAR(拡張現実)といった技術と組み合わせることで、これまでとは全く異なるスポーツ観戦体験を提供することが可能になります。これまでワン・トゥー・ワンのマーケティング手法では手が届かなかった個人個人への最適化も、テクノロジーの進化により課題が解決されていくでしょう。
巨大な市場規模と成長が見込まれる生成AI市場
これらの希望的観測もあり、スポーツにおける生成AI市場は急速な成長が見込まれています。市場調査会社Mordor Intelligence(https://www.mordorintelligence.com/)によると、この市場は2024年から2029年にかけて、28.69%のCAGR(Compound Average Growth Rate=年平均成長率)で成長し、2029年には209億4000万ドル(約3兆円規模)に達すると予測されています。
引用元: https://dimensionmarketresearch.com/report/generative-ai-in-the-sports-market/request-sample/
事例①: データ分析の新時代を切り開く生成AI
IBMとマスターズ・トーナメント(ゴルフ)が共創するデジタルプラットフォームや、株式会社スポーツデータラボの取り組みは、生成AIがデータ分析に新たな可能性をもたらす好例です。従来の分析手法では限界があった膨大なデータから、高精度かつ信頼性の高い洞察を引き出すことができるようになり、戦略策定や意思決定の精度を飛躍的に向上させることが期待できます。
◾︎IBM watsonxがマスターズ・トーナメントのデジタル・プラットフォームに新しい生成AI機能を提供
https://jp.newsroom.ibm.com/2024-04-03-IBM-watsonx-Brings-New-Generative-AI-Capabilities-to-Masters-Tournament-Digital-Platforms
事例②: アスリートのパフォーマンスを極限まで引き出す
GoogleクラウドはFA(イングランドサッカー協会)や米国NFLなど、数多くのスポーツに関連する組織とパートナーシップを締結しています。これらは生成AIがマーケティング面だけでなく、アスリートのパフォーマンス面の向上に貢献する可能性も示しています。
クラウド上に管理されているのは何も過去にチケットを購入した顧客のデータベースだけではありません。クラブチーム単位でみれば、過去の膨大な(試合中の)選手の位置データから選手の弱点や改善点を分析し、より効果的なトレーニング方法を導き出すことも可能です。これは、選手個々のポテンシャルを最大限に引き出し、勝利への道を切り開くための強力な武器となるでしょう。
◾︎サッカー戦術にも生成AIアシスタント、グーグル・ディープマインド
https://www.technologyreview.jp/s/331910/google-deepminds-new-ai-assistant-helps-elite-soccer-coaches-get-even-better/
事例③: ファンを魅了するエンゲージメント体験
IBMとウィンブルドン、テニス・オーストラリアの取り組みは、生成AIがファンエンゲージメントを飛躍的に高めることを示しています。AIを活用したリアルタイム分析やバーチャルリアリティ体験の提供により、ファンはより深く試合に没入し、選手やチームとの一体感を味わうことができるようになります。これは、単なる観戦から、より深い感動と興奮を共有できる全く新しいスポーツ観戦を生み出す可能性を秘めています。
◾︎IBMとウィンブルドンを主催するオールイングランド・ローンテニス・クラブ、パーソナライズされた選手情報を提供する新しい生成AIを発表
https://jp.newsroom.ibm.com/2024-06-24-IBM-and-The-All-England-Lawn-Tennis-Club-Launch-ive-AI-Feature-for-Personalised-Player-Stories-at-Wimbledon
まとめ
生成AIの進化と活用には、スポーツクラブやそれらが所属するリーグ機構、各種メディア、そしてテクノロジー企業が協力し、新たなソリューションを開発しながら実装&実証を継続していくことが重要です。これらが一体となった取り組みにより、生成AIのポテンシャルを最大限に引き出し、スポーツ業界全体の活性化に繋げていくことができるでしょう。
生成AIは単なるテクノロジーではなく、スポーツ界の未来を形作るゲームチェンジャーと言えます。この記事でも触れた通り、従来のデータ分析精度の飛躍的な向上、アスリートのパフォーマンスの改善、ファンエンゲージメントの最適化など、"スポーツビジネス全体"に革命をもたらし、新たな価値創造と成長を促進していくことでしょう。現在、スポーツに関わる多くのステークホルダーにとって、今こそこのAI革命に積極的に参画していくことが求められています。