若者はスポーツ観戦の価値観を大きく変えている

2021.07.06 written by Daichi Kawano(SPLYZA Inc.)

スポーツに限らず、コンテンツを維持するためにはコアなファン層を維持しつつ、出来るだけ継続的に新規のファンを獲得し続ける必要があります。それはソーシャルゲームや映画なども同様で、どうしても一定の離脱者が出てしまう為です。一番手堅いのは新しい世代にターゲットを向けることでしょう。コンテンツの提供者は”比較的若い視聴者”を惹きつけるために、よりカスタマイズ可能な「パーソナライズされたコンテンツ」を意識する必要があります。

メイン画像の散布図は「世界の市場別、Z世代のアプリ/ゲームのエンゲージメント(2020年第3四半期)」になります(*ソースはこちら)。上記のチャートを読み取るに、日本のZ世代におけるゲームアプリ(モンストやウイニングイレブンなど)の利用時間は世界平均の1.5倍にもなるようです。それとは対照的に、非ゲームアプリ(LINEやインスタグラム、TwitterやTikTokなど)で費やされる時間と頻度は最も低く、ゲームと非ゲームのユーザーあたりの平均月間セッション数がほぼ同じとなり、Z世代の「ゲームの平均プレイ時間がかなり長い」という点を鑑みても、他国の市場とは大きく異なっていると言えます。

これだけをみると「可処分時間の多くをゲームに費やす日本のZ世代」という印象を持ってしまいますが、一般的に日本のソシャゲユーザーのボリューム層は40代と言われています。「スマホの普及で簡単に様々なコンテンツにアクセスできるようになり、相対的にスポーツ観戦の価値が下がった」のは全世代に対して言えることでしょう。諸説ありますが、決して「若い年代だけが長時間のスポーツの試合観戦に耐えられなくなった」訳ではないと思います。


Z世代は最初から「消費者」ではなく「参加者」

2019年に米国ブルームバーグが「今後、Z世代は世界最大の消費者集団となり、市場に多大なる影響をもたらす。」と分析しました。企業やブランド、そしてスポーツクラブは彼らを意識し、需要に応える必要があります。インターネットと共に成長してきたミレニアル世代に比べ、デジタルネイティブであるZ世代は、その上の年代とは大きく異なるスポーツ観戦の価値観を持っています。もはや「サッカーの試合を90分間見続けること」は絶対ではないのです。

Z世代の彼らはより幅広いデバイス機器とプラットフォームを使用しています。週末の夜にサッカーの試合を観戦する際、大きなモニターにキャストして観戦することもあれば、タブレッド端末で試合を楽しむファンもいます。より若い年代になればなるほどスマートフォン端末での視聴は増える傾向にあり、中にはパソコンを使って試合の実況を自ら配信したり、そのチャンネルをフォローして音声を聞きながら試合を視聴するファンもいるほどです。

若いファンが古参のファンと大きく違うのは、コンテンツに対して"受動的な役割に留まる"ということに満足していない事です。もちろん「自ら情報発信をする、影響力のあるスポーツ好きのファン」は昔から存在していました。Z世代は、より積極的に”消費者”ではなく”参加者”になることを望んでいます。彼らはTV局が決めた実況者や解説者の話を聞くことに満足せず、試合中に起こっていることに対して自分の意見を述べたり、試合中にリアルタイムに、SNSを通して同じチームを応援するファン同士との会話を楽しんでいるのです。


ファン自らが新たな市場を開拓する時代へ

影響力の強い企業はどんどん若いファンへの取り組みを行っています。NFLはClubhouseと提携し、NBAはRedditと提携しました。また、リバプール、マンチェスター・シティ、アーセナルといったイングランド・プレミアリーグの3チームはInter社と提携し、カメラのアングルを変えたり、一人の選手に焦点を当てたりできるよう新たな視聴体験を提供しようとしています。スポーツファンの多くが「自分の見たいアングル」を常に選択しながら、試合を楽しむことができるようになるのも時間の問題かと思います。

また近い将来、ファンがUGCとしてラジオ形式で実況配信を行うだけではなく、実際にコンテンツの制作者になれる可能性も出てくるでしょう。クラブやリーグ関係者が、ファンが著作権を侵害することなく動画を撮影・配信できる環境を提供するような未来も考えられます。実際に先月、スペインのインフルエンサーが個人でコパ・アメリカの放送に関する権利を購入したことも話題になりました。このように、放映権ビジネスのような旧来のビジネスモデルも、徐々に転換期を迎えつつあるのかもしれません。

プロフィール:河野大地 (Daichi Kawano) デザイナー/アナリスト

宮崎県出身。約10年の広告制作会社勤務ののち、長年趣味で行なっていた映像編集技術やデータ分析、インフォグラフィックに関するスキルを買われスポーツテック業界へ2018年に転籍。現在は株式会社SPLYZAにて試合映像分析アプリの開発・運用にUI設計&デザイナーとして携わる。4児の父。

Twitter
facebook