ハンドボールのデータ分析入門 ~3つの指標から始める量的分析~【セミナーレポート】

2022.12.09 written by Atsushi Hibi(SPLYZA Inc.)

はじめに

2022年10月2日にスポーツイベント・ハンドボール編集部主催で実施されたオンライン講習会『試合分析がスムーズになる目からウロコの「デジタルツールの使い方」』にて、株式会社SPLYZAでカスタマーサクセスを担当する日比が講師を務めました。本記事ではそのオンライン講習会の内容を一部抜粋してご紹介します。*株式会社スポーツイベントのウェブサイトはこちら


量的分析とは何か



分析とは「あるものをいくつかの要素に分け、成分や構成などを細かい点まではっきりさせること」です。分析には質的分析と量的分析の2種類があります。2つの違いは「主観的」であるか、「客観的」であるか、です。例えば試合を見て「OFが上手くいったかどうか」というテーマを考えるとします。

質的分析では、「同じパターンばかり使用していて、相手に攻撃を読まれていたと思う」「相手DFに駆け引きされて、シュートを撃たされていた気がする」というように、自分がどう感じたか「主観的」に考えていくことから始まります。

それに対して量的分析では、「得点」「シュート」「ミス」といった試合中に起こることを定義づけ、その項目を数えていくことから始まります。試合中に攻撃が何回あり、そのうちシュートに行けたのが何回、ミスで終わったのが何回、と数値にすることで、試合を「客観的」に考えることができます。

今回は、ハンドボールで量的分析を行う上で、どのような指標に着目するべきかお伝えしたいと思います。


量的分析のおすすめ3指標



ハンドボールの量的分析と言っても、どのような項目を数えたら良いのか分からない方もいると思います。そこで、私がおすすめする3つの指標を紹介します。

①攻撃成功率
- どのくらいの攻撃が得点に結びついたか

②ミス率
- どのくらいの攻撃がミスで終わったか

③シュート成功率
- シュートがどのくらい得点に結びついたか

ここでは、2022年9月に行われた日本vs韓国(男子)のスタッツを使い、上記3つの指標をベースに試合のレビューをしてみたいと思います。



※2022年9月の日韓定期戦(男子・日本開催)をもとにSPLYZA日比が独自に集計し作成したスタッツシート

①攻撃成功率
攻撃成功率は (得点数) / (攻撃回数) で求めます。日本と韓国のスタッツを比べると、日本の方が攻撃成功率が高いことがわかります。このことから、「日本の方が韓国よりも攻撃が良かった」と言えます。



②ミス率
ミス率は (ミス数) / (攻撃回数) で求めます。日本と韓国のスタッツを比べると、日本の方がミス率が低いことがわかります。このことから、「日本の攻撃は韓国に比べてミスが少なく、シュートまでいけることが多かった」と言えます。



③シュート成功率
シュート成功率は (得点数) / (シュート本数) で求めます。日本と韓国のスタッツを比べると、日本の方がシュート成功率が高いことがわかります。このことから、「日本のシュートは韓国に比べて質が高く、得点になりやすかった」と言えます。




まとめ



以上3つの指標から、日本vs韓国の試合を説明してみます。

“日本vs韓国は、日本が6点差で勝利した試合だった。スタッツを見てみると、日本の方が攻撃成功率が高いことがわかる。ミスで終わらずシュートまでいけており(ミス率)、シュートの質も良かった(シュート成功率)ため、韓国よりも得点につながる攻撃を展開できていたことがうかがえる。”

このようにまず攻撃成功率に着目し、「シュートまでいけていたのか」「そのシュートの質はどうだったのか」と見ていくことで、その試合をある程度説明することができます。ハンドボールの分析を始める際は、まず「攻撃成功率」「ミス率」「シュート成功率」に着目するのがおすすめです。


おわりに



今回紹介した指標は、紙とペンを使って出すこともできますが、表計算ツールや専用アプリなどのデジタルツールを使うことで、より簡単に求めることができます。SPLYZAの提供する映像分析ツール「SPLYZA Teams」のタグ付け機能を使えば、3つの指標を映像とリンクさせて確認することも可能です。興味のある方はぜひ詳細情報をご覧ください。





ハンドボール指導者の方はもちろん、マネージャーやサポーターなど、ハンドボールに関わる様々な人たちにとって、本記事の内容が少しでも参考になれば幸いです。

プロフィール:日比敦史 (Atsushi Hibi) カスタマーサクセス/アナリスト

1993年生まれ、愛知県出身。半田高(愛知)、筑波大で競技生活を送る。大学卒業後、同大学院でハンドボールコーチング論を学びつつ、男子部でアシスタントコーチを担う。2016年、2017年、2018年、2022年にはユースおよびジュニア世代の女子日本代表チームにアナリストとして帯同。現在は株式会社SPLYZAでカスタマーサクセスを担当し、「スポーツは考える力を育む」というコンセプトのもと、ゲーム分析ツール“SPLYZA Teams”のユーザーをサポートしている。

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