2026ミラノオリンピック出場を目指す!日本選手権準優勝のカーリングチームを変えたプロラグビーコーチとの挑戦【セミナーレポート】

2023.06.29 written by SPLYZA Inc.

プロラグビーコーチであり、人材育成プロデューサーの二ノ丸友幸氏をお迎えする企画の第2弾として、二ノ丸氏が2020年から"オフ・アイス・コーチ"を務める男子カーリングチーム「KiT CURLING CLUB」より平田氏と目黒氏にも出演いただき、対談セミナーを開催しました。

2023年2月の日本選手権では準優勝の結果を収め、2026年のオリンピック出場を目指すチームに対し、カーリングは"素人"の二ノ丸氏がどのようにチームに関わり何を変革してきたのか。

”指導の在り方”や”チーム内コミュニケーション”といったトピックを念頭に、チームでのこれまでの取り組みを詳しく伺いました。その当日の内容を一部抜粋してご紹介します。


セミナーゲスト

・二ノ丸 友幸 氏(Work Life Brand代表)
プロラグビーコーチ、人材育成プロデューサー、カーリング"オフ・アイス・コーチ"

・平田 洸介 氏
カーリングチーム「KiT CURLING CLUB」創設者 / 平昌オリンピック出場

・目黒 良太 氏
カーリングチーム「KiT CURLING CLUB」現キャプテン

※2023年6月5日(月)に開催した当ウェビナーのアーカイブ動画を無料で視聴いただけます!(アーカイブ視聴のお申し込みはこちら)


チーム紹介

チーム名はKiT CURING CLUB(キットカーリングクラブ)、通称・KiT CC。カーリングシティである北見から世界へ”Aim the world from Kitami”をスローガンに掲げ、ミラノ・コルティナ五輪2026での金メダル獲得を目標に活動中。また、デュアルキャリア形式の実写モデルとして、メンバー全員がフルタイムで仕事をしながら競技を続けている。

直近の戦績:2023年 第40回全農日本カーリング選手権大会 第2位




KiT CCと二ノ丸さんの出会いからコーチになるまでの経緯

ー平田さんが二ノ丸さんと出会った経緯を教えてください。

平田さん:
2019年に北見ラグビー協会の指導者セミナーで出会いました。講師をされた二ノ丸さんのセミナーを聞き、当時のチームに足りないこと、教えてほしいことがたくさんあると感じ、私から二ノ丸さんに依頼をしたことがきっかけです。

ー平田さんから"オフ・アイス・コーチ"の依頼を受けた際、チームに対してどんなサポートができそうだと思いましたか?

二ノ丸さん:
以前からラグビー以外の競技のサポートも行っていたため、カーリングからのオファーであっても受けることに迷いはありませんでしたが、まずはカーリングという競技を詳しく知りたかったので、YouTubeやテレビで勉強をしました。その結果、カーリングは究極の「コミュニケーションスポーツ」であり「メンタルスポーツ」であると感じましたね。
チームメンバーのコミュニケーションスキルや、どのような考えを持って日本一・世界一を目指しているのかをまずは知らなければいけないと思ったので、リモート形式ではありましたが全員で話し合うことから始めました。

ーコーチ就任当時、二ノ丸さんがチームに抱いた印象を教えてください。

二ノ丸さん:
初めてオンラインでメンバーと話した時の印象ですが、チーム内のコミュニケーションやメンバーの関係性があまりに弱く、「世界一なんて本気で言ってるのか?世界はおろか日本一すら到底実現できないぞ」と感じました。その反面、鍛え甲斐があるな、コーチとしての自分の活躍場所が大いにあるな、という印象も抱きましたね。

ーその印象は、当時すぐにメンバーに伝えたのですか?

二ノ丸さん:
最初の印象を伝えたのは1年後ぐらいでした。信頼関係ができていない中で厳しいことを色々伝えても素直に受け入れられないと考えているので、「信頼関係を築けたな」と感じたタイミングで当時の思いを伝えた、という流れです。

ー二ノ丸さんをチームにコーチとして招くという取り組みに、当初他のメンバーが戸惑ったり、平田さん自身が不安を感じたことはありましたか?

平田さん:
私自身は招いて間違いないと感じていました。ただ、他競技・他業界から人を招く体制が当時はなかったので、その部分でのチームメンバーの戸惑いはあったと思います。ですが二ノ丸さんが時間をかけて関係性を築いてくれたので、今となっては本音で言い合える家族のような関係性になれています。




"オフ・アイス・コーチ"としてのサポート内容とその効果

ー"オフ・アイス・コーチ"としてどんなサポートをしてきたのですか?

二ノ丸さん:
最初の3ヶ月間は、彼らの思いを知ることと、私を知ってもらうことに徹していました。その中で、カーリングには「究極のコミュニケーション」が大事だと感じたので、徐々にコミュニケーション能力を鍛えていきました。

ーそれは、オンラインでのミーティングを通じて鍛えていったのですか?

二ノ丸さん:
私は「トレーニング」と呼んでいますが、月に1回から多くて2回の頻度で、事前にきっちりと日付を決めた上で、1回あたり2~3時間のオンラインのトレーニングを重ねていきました。カーリングという競技に直結した内容ではなく、ヒューマンスキルとしてのコミュニケーション能力を上げ、仲間同士でどう本音を言い合えるようになるのか、嫌なことを言われてもどのように受け入れるのか、に注力して毎回のトレーニングを進めてきましたね。

ー二ノ丸さんからの言葉や指導で印象に残っていることと、感じた変化や得た成果を教えて下さい。

目黒さん:
「不思議な勝ちはあるが不思議な負けはない」という言葉が一番印象に残っています。勝って不思議なケースはあるが、負けることには必ず理由があると二ノ丸さんによく伝えられていました。
勝ちよりも負けから学ぶことの方が多いとわかっていながらも、敗北には目を背けがちでしたが、負けた要員を分析していく中で、「試合でできていないことはそもそも練習からできてない」ということに気づきました。それ以降は練習から改善点をあげ、一つ一つ解決していくことで、昨シーズンは後半にかけて成績が上がってくることを実感できました。

平田さん:
「準備に失敗することは失敗を準備すること」という言葉が一番印象に残っています。大会に臨む上での準備が当初は圧倒的に足りなかったです。自分たち独力で気づけなかったことを二ノ丸さんに気付かせてもらい、日々の活動に落とし込めたことで、準備の仕方に関しても改善できていると思います。


具体的なエピソード:2022年9月のカナダ遠征

ー遠征期間を教えて下さい。

平田さん:
カナダ遠征自体は2週間で、そのうち約10日間は二ノ丸さんに同行してもらいました。

ーカナダ遠征中にこだわりをもって取り組んだことがあると伺いました。詳しく教えてもらえますか?

平田さん:
カナダ遠征で取り組んだことは大きく3つあります!

共同生活
今までの遠征ではホテルで生活をすることが多かったのですが、カナダ遠征ではシェアハウスを借り、全員一つの屋根の下で生活していました。国内でも中々そのような機会はなかったので、チームメンバーや二ノ丸さんとも交流を深められました。

練習前後のミーティング(ブリーフィングとレビュー)
練習前にテーマの確認をし、自己評価と他者評価をする時間をきちんと設けようと二ノ丸さんから提案があり、ブリーフィングとレビューをする取り組みを遠征中に開始しました。チーム全体で行う練習前後のミーティングのルーティンは、遠征後の現在に至るまでも継続しています。

スケジュール管理
二ノ丸さんを中心に分刻みでスケジュールを組み、起床時間、トレーニングの開始と終了時間、帰宅時間、その後のパーティーの時間までも遵守する過ごし方をしました。 特にカーリングでは試合に制限時間があるので、日常から時間を意識することが競技にも活きてきます。


・カナダ遠征中のKiT CCメンバーと二ノ丸さん(KiT CC提供)

ーカナダ遠征の手応えはいかがでしたか?

平田さん:
私自身カナダ遠征を通して「準備をすること」の大切さを実感できましたし、一つ一つの練習に目的をもって行うという点を意識できました。遠征後半の大会ではカナダの強豪チーム相手に一定の結果を残し、結果は準優勝でしたが日本に帰ってからも結果を残すことができたので、やってきたことへの手応えを感じています。

目黒さん:
以前は、反省ミーティングでは目に見える内容は全員が指摘できるが、その先にある明確な改善点まで指摘ができなかったですし、指摘をうけたメンバーが素直に受け止められていなかった部分も含めて、チームとして弱かったです。
遠征中の取り組みもあり、現在のメンバーには指摘を受け止める力もつきましたし、相手に適切に指摘する力もついたので、チームの弱い部分をしっかり見つめ合える関係性が作れたと感じています。


具体的なエピソード:2023年2月の日本選手権

ー決勝戦で敗退した日本選手権では、二ノ丸さんから厳しい言葉をかけるシーンがあったと伺いました。詳しく聞かせてもらえますか?

二ノ丸さん:
予選リーグを首位通過した後のプレーオフで負けてしまい、まだ優勝するチャンスが残っているにもかかわらず、メンバー4人とも気持ちが沈んでしまうことがありました。この時は冷静に言ってもチームが生き返らないと思い、「もう棄権した方が良いのでは?」と伝えるほどの熱量でぶつかりました。
直後の準決勝ではなんとか勝利しましたが、決勝で再戦となったSC軽井沢さんとは試合前の準備段階から、顔つき・表情含めて明らかに差が見え、実際試合にも負けてしまいました。試合前の準備をさらに充実させ、レベルアップしていくことが今後の課題だと感じています。

平田さん:
一度負けた相手と2度目、3度目と再戦するにあたっての気持ちの準備に失敗したことが全てでした。次シーズンはここを改善していきたいと思っています。


・日本選手権準優勝時の集合写真(KiT CC提供)


今後の展望・意気込み

ー最後に、今年を含めた今後の展望や意気込みを聞かせて下さい!

目黒さん:
前回の日本選手権では準優勝に終わってしまい、チームの弱さを実感しました。その弱さはしっかりと向き合えば改善できるものなので、二ノ丸さんにサポートしてもらいながら成長していきたいです。来年は日本選手権で優勝して、世界で活躍できるチームと言っていただけるように頑張ります。

平田さん:
今シーズンは、海外での強化期間を昨シーズン以上に設け、しっかりと課題を克服して日本選手権優勝、その先の世界選手権を目指したいと思っています。個人での意気込みとしては、前回の日本選手権での敗因は私一人のミスから始まったものだと感じているので、メンタル部分での課題を克服し、今年は自信をもって望めるシーズンにしていきたいです。

二ノ丸さん:
選手、オンアイスコーチ、オフアイスコーチの全員が心の手を結び、世界を目指すという高いマインドを持って、日頃の取り組みが世界一に相応しい練習になっているか、コーチの立場としてサポートしていきたいと思います。私自身オリンピックに出たことはありませんが、他競技において世界を知る選手やコーチのサポートを今年も並行して実施していくので、そこからコーチとしてのスキルアップを目指して、KiT CCの彼らからさらに求められるコーチになっていきたいですね。

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★ゲストの各種サイト

二ノ丸さん
・Work Life Brand公式サイト:https://www.work-life-brand.com/
・Instagram:https://www.instagram.com/tomoyuki.ninomaru/
・Twitter:https://twitter.com/TomoykiN
・Facebook:https://www.facebook.com/ninomaru.tomoyuki

KiT CURLING CLUB
・公式ページ:https://pages.i-enter.co.jp/kitcurlingclub.html
・Instagram:https://www.instagram.com/kitcurling/
・Twitter:https://twitter.com/curling_KiT
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