英国でパフォーマンスアナリストとして働くには

2018.11.15 written by Daichi Kawano(SPLYZA Inc.)

イギリスでは「パフォーマンスアナリスト」という職業がようやく定着してきたようだ。2年ほど前から大手のweb求人広告にも掲載が行われるようになった。英国でも日本と同様に求人広告を出すのには少なくないお金がかかる。アナリストが市民権を得た証拠と言っても良いだろう。過去20ヶ月間で合計140ものパフォーマンス・アナリストの求人募集がされ、その内訳はサッカーやラグビー、ホッケーなど多種多様なスポーツがあり、当然ではあるが勤務地の多くが英国(98%を占めていた)内であり、残りの2%はドイツ、フランス、アイルランド、スイス、アメリカ合衆国のものだった。

パフォーマンスアナリストの募集要項には大まかなフォーマットが存在する。過去に募集がかかっていたブラックプールFC(英国3部)の求人広告の詳細を見てみよう。

【求める人材】
・PA(パフォーマンスアナリスト)の学位取得者優遇
・sportscodeでのゲームコーディングの実務経験者優遇
・アナリストとしての理論や応用知識がある
・データを視覚化したグラフィックのポートフォリオ
・コミュニケーションスキル:高
・プレゼンテーションスキル:高

ざっとこんな感じである。なかなかの敷居の高さではあるが極めて専門職であるため、その道のプロフェッショナルが求められる。なおPAの学位取得者はプロの現場で活躍する世界中のスポーツアナリストのうち現在は20%程度に留まっているそうだ。今後、パフォーマンスアナリストの需要が高くなるにつれ少しは緩和されるかもしれない。もちろん、実務レベルでカバーしていくしかない訳だが。そして2つ目、ゲームコーディングの実務スキルである。そもそもsportscodeが高価である(英国では中身はほぼsportscodeの「nacsport」というソフトウェアを使用しているチームも多い)ため個人での導入が難しく、実際にそれなりのレベルでアナリストを経験していないとアプリケーションの操作すらままならないはずだ。ちなみにアプリの試用期間は2週間だが、その期間でノウハウを身につけ、現場にフィードバックできるとは到底思えない。

ほかにもグラフィックのスキル、コミュニケーションやプレゼンスキルもなかなかの壁となっている。専門職となると内に意識が向きやすく、対人関係や公の場に出ることを避けてしまう嫌いがある。ナレッジと応用への展開力がありツールもさわれて外交的となると…世界広しと言えどなかなかそんな人材も然程いないだろう。日本国内だと余計に。それでも毎回、1つの求人募集に対して数限りないエントリーが行われるそうで、書類審査に通って面接まで残れるのはほんの数パーセントの人間だけだという。狭き門である。

日本でも徐々にアナリストの需要が高まってきている。それはスポーツに限らずビジネス面でもだ。至る所で有能なデータアナリストとデータサイエンティストが渇望されている。ぜひとも洞察力に自信があり尚且つ野心を持ち合わせている方は、スポーツのキャリアがなくても目指して見てほしい。学生に限らず、社会人も。あなたが持ちうる特別な能力でスポーツに更なる特別な価値を見出し、新たなる専門職として、日本のスポーツ界において「アナリスト」が市民権を得ることを心より願っている。