チームスポーツで「共通理解」を高めるためにやるべき4つこと

2021.06.29 written by Kurumi Sato(SPLYZA Inc.)

「分析」に対する苦手意識を克服するために

「映像分析」と聞くとゼロから映像を切り貼りして編集し、たくさんのデータから事実を読み取り…と、考えただけで頭が真っ白になる方もいるかもしれません。私自身、これからの時代、経験や感覚に頼った指導方法では十分に指導が行き届かないのではと不安に感じる反面、膨大なデータを現場で活用するノウハウも時間もない、そして選手自身がデータから状況を読み取るといった段階にないと思っていました。


「競技理解」と「共通理解」という考え方

そこで「分析」という言葉を、「”競技理解”と”共通理解”を高めるもの」と変換してみることにします。ここでは、対象となるスポーツの原理原則を知ることを「競技理解」、自チームの戦術を知ることを「共通理解」と定義して話を進めます。スポーツにおいて主たる「目的」となるのは、試合に勝利することです。判断のベースになる「競技理解」が高く、チームとしてどう動くべきかの指針である「共通理解」も高いチームはより機能し、勝利に近づくことができます。


「競技理解」とは?

競技理解とは「その競技の原理原則」と「ルール」のことを指します。サッカーで例えると「ルールを守って、より多くの得点を取ったチーム」が勝利しますね。つまり「点を取るために」「点を取られないために」を軸とし、そのプレーはどうだったのかを思考することが大切です。

例えば、競技理解の低い選手に「オフェンスの目的は何か」を尋ねると「シュートを打つこと」と答えたとします。なお、この答えでは不十分です。逆に、競技理解の高い選手に同じ質問をすると、「シュートを打ち、得点すること」と答えることでしょう。もしくは「決定機で得点し、自分たちのペースで試合を進めること」と答えるかもしれません。

この場合「勝利するために」という軸からブレない答えを出すことが大切なのです。当たり前ですが、シュートをどれだけ打っても得点しないと意味がありません。この「競技理解」の高い選手は、あらゆるシーンで原理原則を軸に考えることができるので、目的から外れたプレーを選択することはほとんど無くなります。


「共通理解」とは?

共通理解とは「各チームの決まり事」を指します。同じチームでも、オフェンス重視の試合もあれば、ディフェンス重視の試合もあります。競技理解をした上で、どういったケースでどのように動くかを選手同士が理解している場合、共通理解が高いチームと言えます。

例えば、共通理解が低いチームがディフェンスをすると、各々が好きなように動くのでディフェンスの穴をつかれ得点される危険性が増します。共通理解が高いチームがディフェンスをすると、各シーンで選手が連動して動くので、ディフェンスの穴をつかれても他の選手が素早くカバーリングの動きを行うことができます。

チームスポーツである以上、各選手が連動して動けなければチームは上手く機能しません。競技理解は、指導者が選手に伝えたり、選手自身がそのスポーツについて学ぶことで身に着けることができますが、「共通理解」はチーム全員と定期的に意思をすり合わせていかなければなりません。

つまり「競技理解」を高めるよりも、「共通理解」を高めることの方がより難しく、勝利をするためにはとても重要な要素になります。今回は「共通理解」を高めるための段階的なアプローチ方法について、SPLYZA Teamsの活用例をいくつかご紹介させて頂きます。




(1)映像の振り返り+情報の共有【指導者→選手】

まずは、選手に映像を観る習慣付けを。自チームの試合映像、練習映像、上手なチームのお手本映像を準備して共有しましょう。最初は「アップロードした動画に目を通しておいてね。」と言うだけでも構いません。とにかく、映像を観ることへの抵抗感を減らすことが目的です。


(2)タグ付け+描きこみによる共通理解の促進【指導者→選手】

(1)番に慣れてきたら、自チームの課題としているシーンに対して”MTG”というタグをつけましょう。そして、練習前に「MTGとタグのつけられた動画を観てきた?」と質問して何故そのシーンにタグをつけたのかを説明して練習に入ってみてください。

選手の頭のなかには、事前にその映像が入っているので、従来の聴覚だけの指示でなく、視覚でもその内容について考えることができます。更に、余裕があれば”MTG”タグをつけた後に”具体的に誰がどのスペースを使えばよかったか”等の内容を図形で描きこんでおくと、選手の記憶に残りやすくなります。


(3)タグ付け+描きこみによる共通理解の促進【指導者←選手】

(2)番に慣れてきたら、今度は指導者の気になるシーンに対して”MTG”タグを貼り、その後は、選手にどのようにプレーしたら良かったか等の課題を出し描きこんでもらいましょう。指導者が日頃選手に伝えている内容が、相違なく伝わっている可能性は高くありません。

そのため、敢えて共通理解を浸透させたいシーンは選手に描きこんでもらうことにより、各選手のそのプレーに対する現状の理解度を把握できます。想定通りであればいいですし、想定よりも伝わっていない場合は再アプローチが必要となります。(オススメはAとBを行き来することです!)


(4)タグ付け+描きこみによる共通理解の促進【選手←→選手】

(3)番で満足できる答えが出るようになったら、最終段階です。今度は、指導者の方の気になるシーンに対して”MTG”タグを貼り、何チームかに選手を分けグループディスカッション&プレゼンテーションを行います。

各チームで課題のシーンに対してどのようにプレーすれば良かったかをグループディスカッションしてもらい、”他のチームへ自チームの考えを伝えること”を目的に描きこみを行います。そうすると、曖昧な表現では相手に伝わらないので、他のチームが分かるようにどのように描きこむかを考えます。つまり、該当のプレーについて言語化して伝える能力が自然と身に付きます。




さいごに

「共通理解」を高めることは、チームスポーツを行う上で欠かせない能力だということは、日々感じられていると思います。いきなりチーム全体でその能力を伸ばすことは難しいですが、上記のように段階的にアプローチすると着実に成長できる能力だとも思っています。

また、上記アプローチ方法は「共通理解」を高めるための取り組み例ですが、(3)や(4)を行うことにより、「自分で考え、仲間と話合い答えを出す」能力も身に付くことが期待されます。このように「共通理解」を高めるためのアプローチを集中的に行うことにより、結果的に選手の主体性を高めることが可能になります。是非、トライしてみては如何でしょうか。

プロフィール:佐藤玖瑠未 (Kurumi Sato)

福岡県出身。小学校から現在までサッカー、水泳、陸上、ラクロスと様々なスポーツを経験。「スポーツを頑張る人を支えたい!」と思い某スポーツ用品店に就職したのちに株式会社SPLYZAに転職。自身もスポーツを続けつつ、母校の外部コーチも務める。地域や実力関係なくスポーツを本気で取り組む人を支えるために日々奮闘中。