【スポーツの教育的価値とは】双方向型の指導を受けた約6割が「スポーツ経験が仕事に役立つ」と実感

2023.09.25 written by Kai Toyoshima

はじめに

2022年12月、株式会社マイナビが運営する体育会学生・アスリート向けキャリア支援サービス『マイナビアスリートキャリア』と共同で、社会人を対象とした「スポーツ経験と社会での活躍の相関性」についてのアンケートを実施。双方向型の指導を受けたグループは6割以上が現在の仕事において「スポーツ経験が役立っている」という結果が出ました。調査結果を踏まえながら、変化が激しい人生100年時代の今、「企業が求める人物像」と比較してスポーツの教育的価値について考えます。



「スポーツ経験と社会での活躍の相関性」の調査結果

【TOPIC】

  • 30代以下の過半数は仕事において「スポーツの経験が役立っている」と回答、対して40代以上は約60%が「スポーツの経験が役立っていない」と回答。【図1】
  • これまで受けてきたスポーツの指導環境は、「指導者中心型※1」が35.1%、「双方向型※2」が33.2%、「選手中心型※3」が31.7%。年代別に見ると、10~30代は「双方向型」が多い。40代以上は「双方向型」が最も少なく、「指導者中心型」「選手中心型」が多い傾向に【図2】
  • 学校や社会が「部活」(特に中高)に求めていた教育的機能や体育の在り方等が変化し、10代~30代の指導環境として自主性を伸ばす環境であったことが影響していると考えられる。
  • スポーツの経験を通じて身につけた力が、今の仕事で役立っていると感じた割合は全体で44.1%。一方で、「双方向型」の指導を受けた人は60.2%と、他の指導環境に比べ「役立っている」と感じる割合が高い【図3】
  • 「双方向型」の指導を受けた人は他の指導を受けた人に比べ、スポーツの経験が社会に出てから役立っていると感じていることが分かる
  • スポーツの経験を通じて全体としては「特に伸びたと感じる能力はない」との回答が26.7%と3番目に多いが、「双方向型」の指導を受けた人は「特に伸びたと感じる能力はない」の回答が13.0%と最小値【図4-1,図4-2】

※1 指導者中心型:意思決定を指導者が独断で行い、選手へ指導をする方法・環境
※2 双方向型:選手たちから出てきた意見を踏まえた意思決定を行い、選手を指導する方法・環境
※3 選手中心型:指導者から選手へ細かい指導を行うことはほとんどなく、自分たちで全て意思決定をする方法・ 環境

【図1】


【図2】


【図3】


【図4-1】【図4-2】


詳細はこちら:https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000019.000012922.html

■調査概要
調査対象:スポーツ経験のある現役社会人10代~60代以上
調査期間:2022年12月26日~12月29日
調査方法:インターネットによる調査
回答者数:1000名

今、企業が求める人物像とは

一般社団法人日本経済団体連合会(以下、「経団連」)が実施した「採用と大学改革への期待に関するアンケート結果」によると、企業が求める人物像の中で「特に期待しているもの」として以下のような項目が上位に挙げられています。(*それぞれ3つまで選択可能)

  • 資質:「主体性」/「チームワーク・リーダーシップ・協調性」/「学び続ける力」
  • 能力:「課題設定・解決力」「論理的思考力」「創造力」
  • Society5.0において求められる能力として、産学協議会で産学間で認識が一致


引用:一般社団法人日本経済団体連合会「採用と大学改革への期待に関するアンケート結果」
引用:文部科学省「採用と大学教育の未来に関する産学協議会・報告書Society5.0に向けた大学教育と採用に関する考え方ー概要ー」

つまり、この2つのアンケート結果を横断して解釈すると、過去のスポーツ経験で「双方向型」の指導を受けたグループは、"企業が大卒者に期待する資質や能力"に類似する力が培われたと感じている傾向が他の指導グループと比較して高いことが読み取れます。




まとめ

今回、SPLYZAとマイナビアスリートキャリアが実施した「スポーツ経験と社会での活躍の相関性」アンケートでは、指導方法によって仕事への有効性や身に付く力に違いが出る結果となりました。一方通行ではなく、選手と指導者がそれぞれの意見を相互に活かせる環境が将来的に良い影響を及ぼすため、指導者が与える選手への影響は非常に大きいことがわかります。

これからの時代を生き抜くために必要な力とされている「社会人基礎力」の12項目がスポーツ経験を通じて培われたと最も実感していたのは、「双方向型」の指導を受けた人でした。経団連による調査における「企業が求める人物像」で重視されている項目をみても「双方向型」の指導を受けたグループは他のグループよりも回答率が高い傾向にあることがわかりました。

ビジネスにおいてもスピードが求められる中で、トップダウンだけで課題を発見して解決するのではなく、トップや仲間を含めた「双方向型」で取り組むことが重要視されてきているため、「主体性」や「チームワーク」「課題設定・解決力」などの能力が求められてきていると考えます。

スポーツ経験の中で、選手と指導者が「双方向」に意見を交わす場が常にあり、更に「選手自身が考える機会」が増えることが、スポーツの従来の魅力・価値に加え、社会人基礎力、および社会を生き抜く力の向上により一層繋がるのではないでしょうか。

プロフィール:豊嶋 果以(Kai Toyoshima)

茨城県出身。「スポーツをする人の支えになれる仕事をしたい」という思いのもと、2016年に新卒でスポーツテック企業に入社、営業や事業開発に従事したのちにSPLYZAへ転職。SPLYZAでの営業活動を通して、自社のツールだけでなく「スポーツの教育的価値の向上」という価値観をより広めていきたいという想いのもと2年目に広報の立ち上げを行い、現在は広報・マーケティングなどに携わる。

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