サッカーのオンライン指導って実際どうなの?2名の実践者に聞いてみた【セミナーレポート】

2022.11.14 written by Naoki Sugitani(SPLYZA Inc.)

コロナ禍で学校などでも急速にデジタル化が進んで以降、「スポーツのオンラインレッスン」の取り組み例を耳にすることも増えてきました。そこで今回は、サッカーのオンライン指導を実践しているスクールの代表2名をゲストにお招きし、取り組みの概要や工夫等をセミナーにてお話しいただきました。その当日の内容を一部抜粋してご紹介します。(*本記事は2022年10月3日に実施したSPLYZA主催ウェビナーの内容を基に執筆)


セミナーゲスト



・Cadenza football community(カデンツァフットボールコミュニティ,以下「Cadenza」) →Instagram
・サッカーのみちしるべ →YouTube


前提情報:両スクールの活動概要



Cadenzaはオフライン(グラウンド)とオンラインの指導を組み合わせていますが、サッカーのみちしるべは完全にオンラインのみの活動を展開している点が、両スクールの違いとして挙げられます。

▼Cadenza 活動概要


▼サッカーのみちしるべ サービス概要



オンライン指導を始めたきっかけ



お二方とも、コロナ禍で対面での活動が制限されたことをきっかけにオンライン指導を開始し、その価値や効果を実感したため現在に至るまで継続しています。Cadenzaでは、グラウンドでのプレーとオンライン勉強会を並行して実施することで、選手の成長スピードが早くなったといいます。


オンラインのメリット



続いて、両スクールの代表が考える「グラウンドではなくオンラインだからこそ学べることやメリット」を紹介します。


■Cadenza

・サッカー理解の向上
 - 資料を使って文字でサッカーの原理原則を学ぶ事や、映像などを見ながら考えを共有する事ができる

・活動機会の担保
 - 雨天時等練習ができない時でも活動可能

・選手の新たな部分の発見
 - リラックスできる自宅から参加する事で、選手の新たな一面が見れる


■サッカーのみちしるべ

・マンツーマンでじっくり話せる
 - 子どもが大人と2人で1時間程度話す機会は中々ない(2週に1回)
 - 他の物事に気を取られることがない
 - 話すことで情報を整理できる

・選手が自分について深く考えることができる
 - グラウンドでは自分のことについて考える時間がない
 - 家でもYouTubeですぐに答えを見ておしまい
 - 最も大切な「自分には何が必要か」を選手自身が考える機会になる


オンライン指導の難しい点



他方、オンラインレッスンでは伝えづらいことや、オンラインだからこその難しさもあります。

グラウンドでの練習とオンライン勉強会を別々の日時で実施しているCadenzaは、「オンライン指導からプレー機会までのタイムラグ」を難しい点として挙げます。オンラインでプレー分析を伝えても、次回プレーをするまでに日を跨ぐため、選手の実際のプレー変化を確認するまでに時間がかかってしまいます。

一方、認知科学に基づくコーチングを実践するサッカーのみちしるべが考える、オンライン指導の難しさは2点。「良い点と改善点をただ伝えても子どもは変わらないことが多いこと」と、「悪いイメージが残りやすく、信頼関係が薄れてしまう可能性もあること」です。


オンライン指導時の工夫



以上の「オンライン指導の難しさ」を踏まえ、両スクールでは次のような工夫をしています。

▼Cadenzaでの工夫


▼サッカーのみちしるべでの工夫



ポジティブな変化事例



最後に、両スクールでオンライン指導を受けた選手に見られたポジティブな変化事例を紹介します。


■Cadenza

・選手の「考える力」「話す力」がついた
- プレーの理解が深まった
- ひとつひとつのプレーに対して「なぜ」と考えるようになった
- 話を聞く力がついたり、積極的にコミュニケーションをとれる選手が増えた

・オフザボールの改善
- オンライン勉強会で得た知識によって、オフザボール(ボールを持っていない状態)のプレーが改善された

戦績としては、チーム初の県大会優勝(2021年度バーモントカップ兵庫県大会)や、リーグ1部への昇格に繋がったそうです。


■サッカーのみちしるべ

・サッカーに取り組む姿勢が変わった
- ほとんど声を出せなかった選手が1日14回も出せるようになった
- 自主練習をしたことなかった選手が週4回もするようになった
- 積極的にガツガツとチャレンジする姿になった

マンツーマンのオンラインレッスンを受けた選手からは、「U13Bチームから4か月でU14Aチームに昇格」「1か月の得点数が20点から40点に倍増」のような劇的な成果も上がったそうです。また、サッカーのみちしるべからはJ下部組織に5人の選手を輩出しています。


まとめ



選手とマンツーマンでコミュニケーションを取るパーソナルレッスンと、複数選手が参加してチームの戦術理解や共通認識を深めるミーティング、その両方の形式でオンライン指導の実践が可能だと言えます。

グラウンドだけでなく、家でもサッカーのことを考える時間が増えることで、選手としての成長スピードは早まるのではないでしょうか。オンラインの特性やメリット/デメリットを理解し、自チームでのオンライン勉強会等の取り組みに繋げてもらえると幸いです。