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選手のイベントデータ+フィールド座標からアナログで平均ポジションを割り出す方法

2019.03.18 written by Daichi Kawano(SPLYZA Inc.)

以前にパスネットワーク図に関する記事を書いた際、「選手の平均的なポジションの出し方がわからない」という質問をいくつか頂きました。その記事内では「ボールタッチした選手のフィールド座標をもとに平均ポジションを割り出したりするのですが高難易度のためこの記事では割愛します」と書きはしましたが、大変なだけでそこまで難易度が高いものではありません。時間はかかりますが…

それでは週末に全世界で行われた試合の中で、適当に試合と選手を抽出して実際にやってみようと思います。今回はプレミアリーグからウェストハムvsハダースフィールドの試合をサンプルとし、そして対象となる選手は…後半頭から出場して2ゴールを挙げ、劇的な大逆転勝利に貢献したハビエル"チチャリート"エルナンデス選手をターゲットにして作業を進めていきます。


★STEP1:フィールド座標を取得するための画像の準備

サッカーの試合が行われるフィールドはレギュレーションが大雑把なため、会場によってサイズが異なります。この試合は「ロンドン・スタジアム(旧称:オリンピック・スタジアム)」にて行われたので、Google検索で「London Stadium wiki」と検索してみましょう。大体母国語のwikiページにフィールドサイズが記載されていますのでその情報を参照してください。日本のスタジアムもほぼ日本語のwikiに掲載されています。メートル単位での記載がない場合は換算して割り出してもらえばと思います。



このように「フィールドサイズ:縦105メートルx横68メートル」と記載がありました。ちなみにこのフィールドサイズは日本でいうと大分スポーツ公園総合競技場(通称ビックアイ)と同じ大きさです。というか陸上トラックのある競技場は大体こんなもんです。今日もまたひとつ賢くなりましたね!いつ使って良いのか判らない豆知識として覚えておきましょう。(※なおこの工程は飛ばしてもらっても全然構いません。)

ピッチサイズを確認したところでTactical Board(iOS版)をダウンロードします。このアプリは戦術ボードの中でも特に有能で、なんとピッチサイズを自在に変更できるという優れものなのです。



ピッチサイズを「W:68m」「H:105m」と設定しスクリーンショットを撮り、PCに送りましょう。PhotoshopやGIMP(無料)で読み込み、コーナーアークのところで四方をトリミングします。今回は解像度72、横680pix、縦1050pixのJPEG画像にしてフィールド上の座標を取得することにします。大体の画像編集ソフトがポインタの座標位置を表示してくれますので、今回はその機能を使います。本来であれば試合映像に座標レイヤーを重ねてXY座標を割り出すというハイテクな方法をとりたいのですが、流石に難しすぎるため潔く諦めることにします。



こちらはPhotoshopの場合ですが、このようにマウスポインタの位置が座標として表示されます。左上が座標の始点になっています。


★STEP2:選手のイベントデータ+フィールド上の座標位置を取得→平均ポジションの割り出し

先ほど作成したフィールド画像をベースに座標位置を割り出し、チチャリート選手のイベントデータ(出し手としてのパスやシュート、ボールロストなどのアクションベース)を取得していきます。今回は以下のように18個のサンプルが出来ました。しかし母数が少ないとはいえパス成功100%&シュート成功率100%とは信じられないスタッツですね。それほど彼の判断力が抜きん出ているということでしょうか。



すでに画像の中で平均ポジションを割り出してしまいましたが、このようにチチャリート選手の起こしたアクションがフィールド上のどこで行われたかを記録し、X座標とY座標をそれぞれID数で割れば良いというだけの話です。すごく簡単ですよね?もちろん、座標位置の取得が大変だということを除いては…。ちなみにGPSなどのトラッキングデータから平均位置を割り出すと、選手1人の場合は気になりませんが、11人分割り出してポジション配置すると微妙にいびつな配置となります。今回のようにボールに関与したタイミングのみ(ここでは選手がアクションを起こした場所)で平均ポジションで割り出すと、例えば定位置攻撃が実践できているチームでは割と綺麗なフォーメーション図が完成し、選手が本来いるべき位置に留まっているという証拠にもなります。逆にそうでない場合はぐちゃぐちゃな配置になる訳です。それが良いのか悪いのか、私にはわかりませんが。



この試合、チチャリート選手は後半頭から4-2-3-1の3の中央で出場、ピッチ上を縦横無尽に動き回り、主にオフェンス時のリンクマンとして非常に機能していました。IDの連番を黄色文字として記載しておりますが、彼が時間軸でどのようにボールに関与していたかが判ります。時としてセンターフォワードのアルナウトヴィッチ選手よりも前に張り出すこともありました。このデータだけで見るとチチャリート選手はポジションを放棄しているようにも映るかもしれませんが、それでは今回取得したフィールド座標から彼の平均ポジションを割り出してみましょう。



このように、ほぼ4-2-3-1の「3」の中央の位置に収まりました。これは偶然でもなんでもなく、チチャリート選手が自分のポジションをフィールド上でも認識したうえで、効果的にボールの近くに顔を出してプレイしている証拠でもあります(なおサンプルは20〜30個ほどあれば、おおよその平均ポジションに収束すると思います)。彼がどのチームに行っても活躍できるのは、このいわゆる「戦術理解度」や「サッカーIQ」の高さたる所以かもしれません。もちろん、このデータだけで判断するべきものではありませんが…

なおこの手法ではオフザボールの動きまでは数値化できないものの、そのチームに「定位置」という概念があるのかないのか、また選手がその決まりごとを理解してしっかり実行できているかどうか?を割り出す指標にもなるかと思います。時間と思考に余裕のある方は、ぜひ推しのチームや選手で試してみてはいかがでしょうか。データが仕上がっていく過程は非常に楽しく、有意義なものになるかと思います。

プロフィール:河野大地 (Daichi Kawano) デザイナー/アナリスト

宮崎県出身。約10年の広告制作会社勤務ののち、長年趣味で行なっていた映像編集技術やデータ分析、インフォグラフィックに関するスキルを買われスポーツテック業界へ2018年に転籍。現在は株式会社SPLYZAにて試合映像分析アプリの開発・運用にUI設計&デザイナーとして携わる。4児の父。

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