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【ブンデスリーガ19/20】第3節 ボルシアMGvsRBライプツィヒ マッチレポート「両チームのパスネットワークとパスソナーで試合を定量分析」

2019.09.05 written by Daichi Kawano

※この記事はSPLYZA Teamsのタグ付け機能から割り出されたデータをもとに構成されています。

ブンデスリーガ第3節は気鋭の若手監督同士の一戦となりました。レッドブル・ザルツブルクのユースチームでヨーロッパを制し、そのまま叩き上げでトップチームでも結果を残したマルコ・ローゼ監督は、今季から3人のスタッフ(アシスタントコーチであるレネ・マリッチとアレクサンダー・ツィックラー、そしてアスレチックコーチのパトリック・エイベンベルガー)を引き連れてボルシアMGにやってきました。キャリア的にもステップアップとなったドイツでの躍進が期待されています。一方ここまで公式戦負けなしのナーゲルスマン監督が率いるRBライプツィヒ。その"型"にハマらない変幻自在のスタイルは、この試合もどのような手の内を見せてくれるのでしょうか。なおボルシアMGもRBライプツィヒも縦に速いオフェンスを得意とし、しっかりとショートパスを繋いで前進するという似通った特徴がありますので、当記事では両チームのオフェンスの狙いに加えて、パスネットワークとパスソナー、他にもゾーン14プロットとハーフスペースプロットという「パス分析」にフォーカスを当て、試合を振り返ります。

▼ボルシアMG スタメンとオフェンスの狙い

第1節のホッフェンハイム戦、および第2節のマインツ戦はローゼ監督の代名詞である中盤ダイヤモンドの4-4-2(マインツ戦は4-3-1-2気味)で挑み1勝1分けスタートと順調な滑り出しを見せているボルシアMG。この試合は中盤にノイハウスとザカリアを2枚並べた4-2-3-1のシステムを採用。トップ下のエンボロも加わりかなり流動的に中央のMF3人が動きます。序盤から主に左サイドのヴェントとマルクス・テュラム(リリアン・テュラム氏のご子息)を絡めた上でのエンボロの裏への抜け出しを中心とした攻撃パターンを好んで採用していました。またザルツブルクからローゼ監督が連れてきた右サイドバックのライナーもアクセントとなり、積極的なタテパスやピンポイントクロスの供給源に。なおボルシアMGは毎試合のパス本数こそ400〜500本前後と極端な保持型のチームではありませんが、ボール保持の局面では「しっかり前に繋いで可能な限りフィニッシュに持ち込もうぜ!」という素敵なフットボールを展開しているチームとなります。

▼RBライプツィヒ スタメンとオフェンスの狙い

第1節と第2節はナーゲルスマン戦術の代名詞である3バックシステムで勝利を収めましたが、この試合はスタートから4バック。そしてRBライプツィヒ伝統のBOXオーバーロードよろしく4-2-2-2(4-4-2)という布陣となりました。これはボルシアMGの陣形に合わせてのものかと思いますが、相手のボール保持の局面に多少の粗があるため、負荷をかけることでそのままボールを奪いトランジションゲームに持ち込むという狙いもあったようです。実際に、最前線に張り出すヴェルナーとその周囲でボールを収めるポウルセン、1.5列目の位置で動き回りボールを前線に配給し続けたザビッツァーとフォシュベリという狭いスペースを掻い潜るのが得意なこの4人の役割は(長年やっていることもあってか)非常にスムーズであり、相手の脅威となり続けました。ただ、ボルシアMGもライプツィヒの攻撃に対しては明確な対応を見せ、試合は五分五分の様相に。

▼ボルシアMGのパスネットワーク

ライプツィヒが4-4-2(前半は両サイドハーフの2人が張り出して4-2-4気味に、2点リードしてからはフラット気味の4-4-2ブロックへ移行)のミディアムブロックを敷いてきたため、特にGK-CB-SB間でのパス交換が多くなりました。GKのゾマーもしっかりとボール回しに参加します。最多パス成功、およびビルドアップに最も関与したのは左のセンターバックである(ゾマーと同じ)スイス代表のエルヴェディ。最も前進する縦パスを供給したのは右SBのライナー、そのパスを多く受け取ったのはトップ下で出場したエンボロとなりました。オフェンス時は1TOPであるプレアと両サイドのテュラムとジョンソンが高めの位置どりをし3TOP気味になるのですが、裏抜けを得意とするエンボロはそれぞれライナー、テュラム、ヴェントから多くのパスを受けてビッグチャンスを生み出していました。

▼ボルシアMGのパスソナー

パスネットワークに関連してピッチ全体でのパスソナーも見てみましょう。やはりライプツィヒのミディアムブロックの干渉を受けた影響かGKのゾマー、左CBのエルヴェディ、左SBのヴェントのラインで多くのパス交換が行われたことが可視化されています。またボールの出口として中盤の2枚、ノイハウスとザカリアがセントラルの位置で受けてそこから展開した事もこの図からも見て取れます。そしてライプツィヒと比べるとファイナルサードでのパスアクションは若干少なかったようです。

▼RBライプツィヒのパスネットワーク

オフェンス時は時にコンパクトな配置も取りつつ、局地的に優位な陣形を保てる(おそらく今季のチームとしては初の採用となる)オーバーロード戦術がこの試合では随所に確認できました。最多パス成功は左CBのオルバン。中盤のカンプルはピッチ上を動き回ることで相手を剥がす役割もあったため受け手としてもボールタッチ数が増えバブルチャートが大きくなっています。タテパスの出し手と受け手で最も多い組み合わせだったのがザビッツァー→ヴェルナー。またビルドアップ時に最多関与となったのが右CBのコナテとなりました。ボルシアMGに比べるとビルドアップ時にGKに戻すシーンはさほど多くなく、意識としてはより前に、CBからカンプルorライマーと中盤の選手がパスを受ける回数が相手よりも多かったようです。

▼RBライプツィヒのパスソナー

GKのグラーチはBOX内からのボール出し(ディストリビューション含む)を必ず両CBに出すということを徹底していたため、キーパーの位置からは前方斜めのパスソナーが特に分厚くなっています。それを受けたCBも(前途の通り)そこまで最終ラインで回すということは少なく、相手と比較するとミドルサードの位置でのボール保持が多くなっていることがわかります。なおパスソナーは横5x縦6の30個で表現するのが一般的なのですが、サッカーはミドルサード(ピッチを奥行きに3分割した中央、ゾーン2とも呼ばれる場所)で最もパス交換が行われるため、より詳細に可視化したいのと、ディフェンシブサードとアタッキングサードの境目のパスこそ着目すべきだ!ということで横5x縦7の35個のパスソナーで表現するようにしています。

▼両チームのゾーン14プロット

この「ゾーン14」というワードは聞き慣れない方も多いかと思います。ゾーン1・2・3辺りとも混同しがちですが、これはピッチを横6x縦3の18分割にした際、敵陣のいわゆるバイタルエリア中央に当たる14番目のエリアの名称になります。そしてこの領域でどういうパスアクションが行われたか、特にBOX内に供給されたパスの成否を分析することで、ゴール前のプレー精度が見えてきます。両チームのゾーン14でのパス成功数は同数の12本となっていますが、ライプツィヒはBOX内へのパス供給が3/3と100%の成功率となっており、より確実に相手ゴール前でプレーしていたことが判ります。

▼両チームのハーフスペースプロット

ゾーン14プロットのハーフスペース版です。ハーフスペースに侵入することによる相手への影響については他の文献などを読んでいただければと思いますが、簡単に言えば「相手がバランスを崩している状況でのパス」を分析したものになります。こちらはアテンプト、成功数ともにライプツィヒが上回っており、BOX内へのパス成功数もボルシアMGが4本なのに対してライプツィヒは6本、うち1本は1点目のフォシュベリ→ヴェルナーの間で放たれたラストパス(アシストを記録)となっています。

▼試合結果および両チームの(パスデータを除く)スタッツ比較

最後にパス以外のスタッツの比較となります。試合は1-3でホームのボルシアMGが敗戦。パス本数含めて両チームの間に大きなスタッツの差はありませんでしたが、タックルとクリア本数に関してはライプツィヒが上回った形となりました。試合内容としてもお互いオフェンシブルートの狙いが明確で、それに対してどう対処するか、ボールを奪ったor奪われたあとの対応はどうするか?という決まりごとがチーム全体で共有されており、観戦していて非常に腑に落ちるシーンも多く楽しめる試合内容となりました。最後はボルシアMGのミスを見逃さず、ヴェルナーの圧倒的なクオリティの差で試合が決まった感があり、ライプツィヒとしては彼に依存している最終局面をいかに分散していけるかが今後の課題になりそうです。またボルシアMGは敗戦こそしましたが、ピッチ上での印象は相手を上回るほどの良いものでした。ここからチームスタイルがより洗練されていくことで上位進出も見えてくるでしょう。

▼ボルシアMGvsRBライプツィヒ ハイライト動画
これでライプツィヒはリーグ戦3連勝。宿敵バイエルンとボルシア・ドルトムントが序盤からつまづいていることもあり単独首位となっています。代表ウィーク明けの9/15にいきなりバイエルンと戦うライプツィヒですが、ここで勝とうものなら念願のリーグ制覇も見えてくるかも?という位には守備も攻撃も今のところ安定しており、今季チーム史上2度目の参加(ナーゲルスマン監督にとってもホッフェンハイム時代と合わせると2度目の挑戦)となるチャンピオンズリーグでの、初のグループステージ突破にも期待が持てます。ゼニト、ベンフィカ、リヨンと実力が拮抗しているグループではありますが、各チームともに見応えのあるゲームを展開してくれることかと思います。

プロフィール:河野大地 (Daichi Kawano) デザイナー/アナリスト

宮崎県出身。約10年の広告制作会社勤務ののち、長年趣味で行なっていた映像編集技術やデータ分析、インフォグラフィックに関するスキルを買われスポーツテック業界へ2018年に転籍。現在は株式会社SPLYZAにて試合映像分析アプリの開発・運用にUI設計&デザイナーとして携わる。4児の父。

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