【2019シーズン J1リーグ】第5節 - 名古屋 x 札幌 / 松本 x 川崎 / G大阪 x 神戸 インフォグラフィックで振り返るマッチレビュー

2019.04.04 written by Daichi Kawano(SPLYZA Inc.)

2019年3月30日(土)-31日(日)に行われたJ1第5節の3試合、名古屋グランパスvsコンサドーレ札幌、松本山雅vs川崎フロンターレ、ガンバ大阪vsヴィッセル神戸のそれぞれの試合の簡潔なマッチレビューとなります。今回も「フィールド上のボール奪取に関するデータ」から試合内容を振り返っていきます。

▼名古屋グランパスvsコンサドーレ札幌 両チームのエリア別ボール奪取数(-90分)

今シーズンも超オフェンシブなスタイルで首位の位置にいる名古屋グランパス。この試合も正確なダイレクトパスワークで札幌のプレッシングを無効化し、高速ショートパスで前進したのちにバイタルエリアでのレイオフも駆使し札幌のディフェンスラインを破壊。大量4得点の圧勝となりました。名古屋自身がサイド攻撃はせずほとんど中央突破を試みていたのに対し、札幌もど真ん中勝負を挑んだのですが返り討ちに遭った形に。特筆すべきはセンターサークル付近中央ラインでの名古屋のボール奪取数で、札幌の3本に対して名古屋の13本という圧倒的な数字となっています。札幌に奪われてもすぐに奪い返し「ずっとグランパスのターン!」という状況が延々と続きました。前半はそれらが顕著でかつパフォーマンスも高い次元にありましたので、札幌の守備がどうこうという感じではなく、どのチームが相対したとしても対応に困難を極めたことかと思います。

▼松本山雅vs川崎フロンターレ 両チームのエリア別ボール奪取数(-90分)

今シーズン未勝利のディフェンディングチャンピオンである川崎フロンターレですが、この試合はポゼッションもボール奪取も松本山雅を圧倒し続け今季初勝利を挙げました。センターライン付近から敵陣にかけてのボール奪取回数はのべ40本にも及び、名古屋同様に奪われても即時奪還し攻撃権を保つサッカーが徹底して行われていました。松本もデュエルが相当強い部類に入りますが、川崎もそれに負けず劣らず、地上戦も空中戦もほぼ制圧。ボールを保持してからは普段の落ち着いたボール回しとプレス回避で堅実にボールを深い位置まで運び、決定機に繋げていました。ボールを奪えてもパスを繋げられなければ意味がないよ!ということを実証している試合内容に。逆に松本は直近3試合で3連敗。チームとしてのやり方はJ2時代から一貫してはいますが、残留に向けて不安の残る内容となりました。長いシーズン、ここからどう修正していくか反町監督にも注目です。

▼ガンバ大阪vsヴィッセル神戸 両チームのエリア別ボール奪取数(-90分)

まだ5節のJ1リーグですが、今シーズンのベストバウトの1つとして数えられる試合で間違いないかと思います。お互いのスタイルや長所が十分にパフォーマンスとしても表現されており、全7ゴール全てがスーパーゴール。データ上でも前途の2試合とは傾向が大きく異なり、両チームともに自陣でのボール奪取を確実に実行する!という狙いがはっきりしていました。その中で、ガンバ大阪の2点目は敵陣右サイドでイニエスタ選手の受けるボールを奪取した菅沼選手が起点となり、また神戸の反撃の狼煙となったポドルスキ選手のタックルでのボールキープからのクロスでもぎ取った1点目、そして決勝ゴールとなった神戸の4点目は古橋選手の即時奪還から生まれたものでした。後述する双方のスタッツはほぼ互角でしたが、差が出た部分については球際の戦いをどれだけ制することが出来たかに尽きるかと思います。そういう意味では、よりボール奪取の意識が高かった神戸に軍配があがったのは当然のことだったのかもしれません。

▼ガンバ大阪vsヴィッセル神戸 両チームのスタッツから見るマッチレビュー

名勝負となったG大阪と神戸の試合をスタッツで振り返ってみようと思います(図内のデータはSofascoreからの引用)。タックルやインターセプトに関してはガンバが上回っていますが、地上戦や空中戦でのデュエルは神戸が勝ち越しています。今回もボール奪取に関しては「1対1でボール奪取が生じた場合」に限定してデータを採取していますので、スタッツと比べても大差ない結果となりました。やはり相手との競り合いでボールを奪ってから攻撃権をモノにするということは、相手も少なからずバランスを崩している状態になるため、自ずと優位な状況を生み出すことにも繋がります。アタックモメンタムを見ても積極的に前進しようとするガンバに対して、ヴィッセルは少しトーンダウンして冷静にパス回しをする時間帯を多く選択し、勝負どころでロングボールやスルーパスで局面を打開していました。そのような時間のコントロールについても、VIP(ビジャ+イニエスタ+ポドルスキ)を要する神戸が僅かながら上手(うわて)であったと感じる試合展開でした。途中出場となった三田選手もしっかり中盤の鎹となり、田中順也選手は出場時間15分で2ゴールと、リージョ監督の的確な選手交代も違いを生み出していました。

▼まとめ
今回はショートパスを多用(毎試合500本~700本ほど試合中にパスアテンプト)する名古屋、川崎、神戸の3チームがそれぞれポゼッションだけでなくボール奪取も相手を上回ることで勝利を収めるという結果となり、「奪うだけでなく、しっかりとショートパスをつないで前進しチャンスメイクする重要さ」を改めてデータ上でも証明してくれました。もちろんボールを奪ってからのアクションは三者三様ではありましたが、そこには各々の明確なプランがあり、フィールド上での状況や時間経過に沿って確実に実行されていました。今後も「ボール奪取」に関するデータをサンプルとして採り続け、傾向を分析していこうと思います。