【2019シーズン J2リーグ】第5節 - 鹿児島ユナイテッド x 町田ゼルビア フィールド上のボール奪取に関するデータから振り返るマッチレビュー

2019.03.26 written by Daichi Kawano(SPLYZA Inc.)

2019年3月24日(日)に行われたJ2第5節、鹿児島ユナイテッドvs町田ゼルビアのマッチレビューです。これまでひたすらパスネットワーク推しできましたが、あればっかりでも面白く無いですし試合によってはほとんど意味の無いものになるケースもあります。今回は町田ゼルビアの試合ということもあり「ボール奪取」をテーマにログをとりインフォグラフィックにまとめてみましたので、該当するデータを見ながら試合を簡潔に振り返ってみようと思います。

▼鹿児島ユナイテッド スターティングフォーメーション

たまたま鹿児島のプレシーズントレーニングマッチを観る機会が以前にあったのですが、後方からしっかりとビルドアップしプレス耐性もある素晴らしいチームで、金鍾成監督の就任が色濃く出ているなあという印象でした。今シーズンの公式戦フルマッチ観戦はこの試合が初です。個人的に宮崎の最南端で生まれ育ち、鹿児島の学習塾まで通っていた身としては気にならないと言ったら嘘になる存在の鹿児島ユナイテッド。中盤から前5人を薩摩隼人が占めているということで、南九州人としては応援せざるを得ません。我が地元のテゲバジャーロも何とかJまで上がって欲しい!そんな色んな思いを馳せながらの試合観戦となりました。

▼町田ゼルビア スターティングフォーメーション

一方の町田ゼルビア、「ZELVIA ANALYSING SUPPORTER」という活動をされている熱狂的ゼルビアサポ、「平戸に祈る」でもお馴染み(SPLYZA Teamsユーザーでもある)Tanalifeさんの影響で昨シーズンは2試合ほど観戦していましたので何となく相馬監督が志向しているサッカーは判っている(つもり)のですが、今シーズンは鹿児島と同じく初観戦です。今季はあのアグレッシブさが更に激しくなっているのか否か?観るものを魅了する横圧縮からのドッカンカウンターサッカーが初見の鹿児島にどれほど通用するのか!?そういう意味でも組み合わせとしては申し分のない2チームが相見えます。

▼両チームのエリア別ボール奪取数(-90分)

各エリアを縦7箇所x横5箇所で定義した双方のボール奪取数を示したフィールドマップになります。90分のデータでやるとこんな感じに。なお今回「ボール奪取」として定義したのは、1対1の状況からボールを奪い+そこから更に1タッチ以上した場合のプレーのみをカウントしています。なので、デュエルの生じないセカンドボール回収やインターセプト、また単発のクリアなどは含んでいません。そのようにシビアな条件にしたにも関わらず、鹿児島の15本に対し町田は30本と倍の結果となりました。パスの総本数こそ町田は鹿児島に比べて半分にも満たなかったと思いますが、これだけ広範囲でボール奪取を数多く成功させましたので、支配率やパスの成功数といった通常のスタッツからは見えてこない「町田側の優位性」がこちらのインフォグラフィックで可視化されているかと思います。

▼両チームの1対1でのボール奪取に関する個人勝敗表(-90分)

縦軸が鹿児島の選手で、横軸が町田の選手となり、交差する部分の上部が鹿児島、下部が町田の選手を示しており、誰が誰との1対1を制してボール奪取に成功したか?という表になっています。この試合で最もボールを奪ったのは町田のロメロフランク選手の6本、次点で藤井選手と奥山選手の5本といずれも町田の選手が上位を占めています。逆に最もボールを奪い損ねた、もしくは奪われてしまったのが鹿児島の酒本選手の8本となりました。改めて試合の映像を振り返っても、かなり集中的に彼が狙われていたことが確認できます。また、最もデュエルが生じた組み合わせは鹿児島の酒本選手vs町田の下坂選手、そして鹿児島の野嶽選手vs町田の藤井選手の「3回」となっています。

▼鹿児島ユナイテッドのボール奪取ポイントと選手名+経過時間(-90分)

鹿児島ユナイテッドの時系列でのボール奪取ポイントです。守備の要であるCBの堤選手がピンチの芽を多く摘み取っていました。高い位置でのボール奪取もいくつか成功はしていますが、更なる町田の波状プレスに遭い、相手を脅かす決定的なシーンは後半終了に差し掛かる時間帯のみに留まりました。なおこのフィールドデータからはビルドアップに関するものは読み取ることはできませんが、鹿児島のまだ十分でない連携の歪みを、町田の魚群プレスに思うようにやられていた印象です。とはいえ鹿児島については「徐々にチームのやり方が浸透していけば」という可能性を感じさせるサッカーだなと以前にTRMを観た時同様に、改めて思いました。

▼町田ゼルビアのボール奪取ポイントと選手名+経過時間(-90分)

町田ゼルビアのボール奪取ポイントです。そのほとんどがサイドに寄っており、町田の誘導からのプレッシングが機能していることがデータからも読み取れます。ただ気になったのがプレッシングの際に大きく配置のバランスを崩すことがあり、ボールを奪ってからのパス精度に難アリでした。奪いどころの見極めとかける人数、またポジトラ時の陣形が整理され高速ショートパスが駆使できるようになれば!と思いましたが、どうやらそういう設計でもない様です。

この試合をロメロフランク選手の出足の速さ&球際の強さで獲得したPKでものにした町田、昨年こそ4位と好成績を残してはいるものの、今シーズンも魔境であるJ2においてこの戦術がどこまで通用するのか。更に強化するべきか、もしくは少し路線を変更するべきなのかは相馬監督のみぞ知るといったところでしょうか。個人的には、もう少しショートパスを繋ぐエッセンスも加えて欲しいなと。個人的願望ですが…と、いうわけで第三者的に観てもとても楽しめた試合となりました。今回ログをとったことで選手名や選手の特徴をある程度覚えることの出来た鹿児島そして町田には今後も注目しつつ、今季のJ2は京都や福岡、琉球など気になるチームもたくさんありますので、引き続き色々なクラブを追いかけていければと思います。