23-24 プレミアリーグ第30節 マンチェスター・シティ vs アーセナル: マッチレポート

2024.04.04 written by Daichi Kawano (SPLYZA Inc.)

かつての恩師、ペップ・グアルディオラの下で薫陶を受けたミケル・アルテタ。昨季の対戦では合計7ゴールを許し、絶対王者であるマンチェスター・シティの牙城を崩せなかったものの、今季は攻撃力に加え、安定した守備組織を兼ね備えたチームを作り上げたうえで、現在はリバプールも含めた三つ巴のタイトル争いに加わっています。

対するマンチェスター・シティは守護神エデルソンの不在に加え、攻守ともに貢献度の高いジョン・ストーンズとカイル・ウォーカーの負傷離脱が大きな痛手に。しかし、グアルディオラ監督率いるこのチームは、シーズンの後半戦に勝負強いことで知られています。


via BetweenThePosts.net

試合開始からマンチェスター・シティがボールを支配し、アーセナルは自陣で守備を固める展開に。シティはデ・ブライネやベルナルド・シウバを中心にパスワークで攻め込みますが、アーセナルはディフェンス陣が体を張ってゴールを防ぎます。後半に入りマンチェスター・シティはさらに攻勢を強め、グリーリッシュやドクがサイドから突破を図るものの、アーセナルは集中した守備でゴールを許しません。対するアーセナルはカウンターからチャンスを作ったものの、サカやマルティネッリが決定的な場面でシュートを外してしまいます。試合は両チームともゴールを奪えず、スコアレスドローに終わりました。

献身的な守備で相手の攻撃を封じるアーセナル


この試合は、両チームのシステムが対立するのではなく、互いの「カウンターアタックへの対策」がどのように機能するかが見どころとなりました。

アーセナルのWGであるサカが対峙するコバチッチにプレッシングし、グヴァルディオルがパスコースを作るために少し下がると、それに伴いデ・ブライネとフォーデンは縦のパスコースを作るための位置取りをするようになります。そこでアーセナルは、デクラン・ライスがシルバやデ・ブライネ、フォーデンが受け取ろうとしていたエリアをゾーナルにカバーリングし、最終ラインのガブリエウ・マガリャンイスがハーランドをケアすることで、もう1人のCBであるウィリアム・サリバがシティの縦方向へのパスを止めることが可能な仕組みを構築します。

シティは圧倒的にボールを保持できてはいたものの、中央にスペースが無くアーセナルのコンパクトな守備組織に苦戦します。アーセナルは4-4-2のフォーメーションでライン間を極端に狭く保ち、それに対しシティはアカンジとグヴァルディオルが広くポジショニング、パス交換を行うことで相手の守備ブロックにギャップを作ろうとします。しかし、ベルナルド・シウバとアカンジが局面に応じて役割を入れ替えたりしても、状況は変わりません。


via BetweenThePosts.net

普段はオフェンシブな役割に徹する両WGのジェズスとサカですが、このゲームでは試合を通してプレッシングを怠らずハードワークし続けます。そして両サイドバックのベン・ホワイトとヤクブ・キヴィオルは狭いスペースでも効果的に動き、シティの攻撃陣が作り出そうとしていたハーフスペースを完全に封じ込めました。

単調な攻撃に終始したマンチェスター・シティ


マンチェスター・シティの攻撃はワンパターン化し、アーセナルの守備陣を攻略できずサイドからのクロスに頼る場面も目立つようになります。それでもアーセナルは人数をかけてクロスボールを跳ね返し続けます。そんな中、シティは前半終了間際にアケを下げ、リコ・ルイスを投入。守備ラインを左に1つずらし、ルイスを右サイドで起用することで攻撃の活性化を図ります。

その後、シティはドリブルを多用することでビルドアップの改善を試みたものの、ロドリとコバチッチが前方に上がってしまい、スペースに選手が落ちてフリーマンを作る動きがうまく機能しません。シティはジェズスとキヴィオルが封鎖している右サイドでのオフェンスを諦め、シルバとリコ・ルイスを中央に配置するものの、引き続きロドリとコバチッチによるドリブルやコンビネーションは振るわず、バイタルエリア付近への侵入が困難なままゲームは進みます。

試合終盤、シティはデ・ブライネを深い位置に留まらせつつハーランドへのロングボールも試みますが、サリバとガブリエウ・マガリャンイスを撹乱する効果は限定的なものとなります。アーセナルはキヴィオルやジョルジーニョ、ホワイトが放り込みに対するセカンドボールを拾い続けたため、シティにはこれといったチャンスも生まれませんでした。


via BetweenThePosts.net

グアルディオラ監督は、61分にジャック・グリーリッシュとジェレミー・ドクを投入。シティは再びアーセナルを押し込んだものの、決定的なチャンスは作れません。

対するアルテタ監督は守備を強化するため、66分に冨安健洋とトーマス・パーティを投入。グリーリッシュとドクがピッチに入ったことで、シティは深い守備ブロックに対してより長時間ボールを保持するイメージを持っていたようですが、アルテタ監督の見事な守備采配により、期待できるほどの効果は見込めませんでした。

最後まで読めないプレミア優勝戦線の行方やいかに


この試合は、アーセナルのメンバー全員の献身性がもたらす"堅守"が特に目立った一戦でした。両サイドのジェズスとサカのハードワーク、中央のハヴァーツとインサイドハーフのウーデゴールやライスによる効果的なプレッシング、そしてサリバやガブリエウ・マガリャンイス率いる組織的なディフェンス陣により、マンチェスター・シティの攻勢を封じ込めました。

一方のシティは攻撃パターンが単調で、最後までアーセナルの守備を攻略することができませんでした。2023-24シーズンのマンチェスター・シティがプレミアリーグの優勝争いに残り続けるためには、より攻撃のバリエーションを増やすことが必要となりそうです。