23-24 プレミアリーグ第32節 マンチェスター・ユナイテッド vs リバプール: マッチレポート

2024.04.09 written by Daichi Kawano (SPLYZA Inc.)

2023-24シーズンにおけるプレミアリーグ第32節、マンチェスター・ユナイテッドとリバプールの戦いは2対2の引き分けに終わりました。ユナイテッドは粘り強い守備でゴールを守り、ブルーノ・フェルナンデスとコビー・メイヌーが生んだそれぞれの素晴らしい得点により、結果的には勝ち点1を手にすることに。

一方、リーグ首位をキープするためにも勝利が必要であったリバプールでしたが、試合を通して主導権を握り多くのチャンスを創り出したものの、熾烈を極める"三つ巴の優勝戦線"に留まるにあたり、手痛い引き分けとなっています。

オフェンスの意図がみえないマンチェスター・ユナイテッド


ホームチームであるマンチェスター・ユナイテッドは、試合を通してボールを支配され、終始リバプールのプレッシングに苦しみました。これは、ユナイテッドが自陣でのビルドアップや敵陣でのパスワークといったオフェンスの局面での問題点、つまり「ポゼッション維持のための能力不足」が露呈したとも言えます。

ただ、ユナイテッドがボールを保持した際には"右サイドを起点とした良い傾向"も見られ、ディオゴ・ダロトが幅を取り、アレハンドロ・ガルナチョがライン間を走り、メイヌーがカゼミーロとのコンビネーションを見せるなど、オフェンスの局面におけるポジティブな連携もありました。しかし、これらの動きは断続的で不安定であり、効果的な攻撃の組み立てには至りません。

一方の左サイドではアーロン・ワン=ビサカが献身的なプレーに徹し、ラッシュフォードが幅をキープ、フェルナンデスが左ハーフスペースを動き回りました。しかし、こちらの左サイドを起点としたオフェンスは殆ど機能せず、いずれにせよチーム全体の攻撃を活性化させることは出来ません。


via BetweenThePosts.net

リバプールは、通常のコンパクトな4-3-3のフォーメーションでプレスをかけ、ユナイテッドのボール保持に対して、ロングボールやボールロストを誘発しました。テン・ハーグ監督のチームは、プレッシャーにさらされながらのプレーに慣れておらず、ビルドアップでフリーマンを作り出す明確なアイデアが欠けているように映りました。

これらの要因が重なり、ユナイテッドはゴールを奪うことができないまま前半を終えます。後半に2つのゴールを挙げたものの、これらはあくまで"選手のひらめき"によるものであり、チーム全体での「狙い通りのオフェンスのプロセス」が実行された訳では決してありませんでした。

ゲームを優位に進めたリバプール


試合開始から10分間ほど、ユナイテッドの激しいマンツーマン戦術によって、リバプールは本来の"ポゼッションで優位性を生み出す"試合内容を展開することができません。しかし、徐々にボールを支配し始めると、リバプールの高い技術と戦術が徐々に機能し始めます。

ユナイテッドは引き続き伝統的なマンツーマンでリバプールに対抗します。しかし、リバプールの巧みな動きとパスワークによって次第にハマっていたプレスも空転。特に、ドミニク・ショボスライ、遠藤航、アレクシス・マクアリスターらの中盤は、ユナイテッドのプレスを物ともせず、容易にパスコースを創出し続けます。

中でもマクアリスターはセントラルハーフの位置から、ビルドアップ時に深い位置を取ることで左サイドバックのアンドリュー・ロバートソンのオーバーラップを促し同サイドを活性化。ロバートソンはガルナチョのマークを振り切って攻撃に参加することが多く、ダロトも対峙するルイス・ディアスとロバートソンの両方に対応する必要があり、ユナイテッドの守備はカオスな状況に。


via BetweenThePosts.net

ユナイテッドは中盤のメイヌーとフェルナンデスが、リバプールのMF陣にプレッシャーをかけるために前に出ますが、その影響でカゼミーロの周辺にスペースが生まれてしまい、余計にリバプールの攻撃に晒されることに。更にはリバプールの素早いパスワークと連携によって、ユナイテッドのMF陣は精細を欠いてしまい、簡単に突破されてしまう場面がしばしば見られました。

オールド・トラッフォードでの鮮烈な逆転ゴールも…


ディアスの先制ゴールで折り返したリバプールに対し、ユナイテッドは後半開始早々にフェルナンデスの見事なロングシュートで同点としたのち、メイヌーのセンセーショナルなゴールで逆転に成功。そのままディフェンシブな姿勢をより強めるため、テン・ハーグ監督はガルナチョに代えてアムラバトを投入。逃げ切りを図ります。

しかし、終盤にハーヴェイ・エリオットがペナルティエリア内で倒され、リバプールがPKを獲得。エースのモハメド・サラーがこれを確実に決めます。ユナイテッドも最終盤にアントニーを投入するなど攻撃的な姿勢を見せたものの、最後まで勝ち越しゴールを奪うことはできませんでした。一方、土壇場で同点に持ち込んだリバプールは、辛うじて勝ち点1を手にすることに。


via BetweenThePosts.net

一時的に逆転に成功し、勝利を手にしたかに思われたユナイテッド。しかし、終盤の失点により勝ち点1を分け合う結果となりました。それでも、前半終了時点で「リバプールに対して1点ビハインド」の状況から追いついて勝ち越し、結果的に勝ち点1を獲得したことは、今後の戦いに向けての大きな自信となるでしょう。

まとめ


マンチェスター・ユナイテッドは相手と比べると、明らかに戦術面や技術面での差があったように思います。ゲーム中、ユナイテッドの中盤は機能不全に陥り、敵陣ゴール前でのチャンスメイクにも苦労しました。このまま個人戦術に頼りっ放しの「選手おまかせプラン」状態だと、限られた得点チャンスで当たりを引くのを待つだけのような、運頼みのサッカーが今後も続きそうです。

一方、ゲームを支配したリバプールにとっては、非常に不本意な結果と言えるでしょう。これにより、リバプールはアーセナルと勝ち点71で並び、得失点差でアーセナルに首位を明け渡すことに。そして、3位のマンチェスター・シティが1ポイント差で追いかけてきているという、引き続きどのチームも1ゲームも落とせないというタフな状況が続いています。