【ブンデスリーガ 2019-20】第4節 - RBライプツィヒ x バイエルン・ミュンヘン マッチレポート「猛牛のハードプレス vs 王者のゲーゲンプレス」

2019.09.18 written by Daichi Kawano(SPLYZA Inc.)

※この記事はSPLYZA Teamsのタグ付け機能から割り出されたデータをもとに構成されています。

ブンデスリーガ第4節は唯一のリーグ3連勝スタートとなった1位のRBライプツィヒが、ホームに絶対王者バイエルン・ミュンヘンを迎えたビッグマッチとなりました。両チームのスタメンはライプツィヒが3-3-2-2(3-5-2)の布陣、バイエルンは先発予定だったアラバが筋肉系の怪我で急遽ボアテングがCBに、リュカ・エルナンデスが左SBに回っての4-2-3-1の陣容となりました。ライプツィヒとしてはしっかりと5レーンを埋めてボールを奪ってから縦に速いカウンターを、バイエルンはボールを保持しつつロストしてもすぐに奪い返して試合を制圧するというお互いの狙いが明確に表れた布陣となりました。

▼バイエルン・ミュンヘンのパスマップ(90分間)

まずはバイエルンのパスマップから振り返ります。この試合は特に前半、圧倒的なバイエルンの支配でゲームが進みました。立ち上がり早々にバイエルンが先制したのもあり、落ち着いてバイエルンが試合を組み立てる形からスタートします。ライプツィヒの積極的なプレスを受けて最終ラインこそそこまで高い位置は取れていませんでしたが、DFとMFでのパス回しで相手を揺さぶりながらトップの位置にいるレバンドフスキに縦パスを入れたり、(右ウイングにいる)縦への推進力を誇るコマンへ、裏を抜けるスルーパスを供給するようにしていました。

元ホッフェンハイムでナーゲルスマン門下生であった左ウイングのニャブリはまだコバチ監督の信頼を完全には勝ち得ていないようでしたが、役割としてミュラーと同じ高さまで下りてきてボールを受けるシーンが何度か見受けられました。同じウイングでも左右非対称の役割が与えられていたようです。そしてパスの一番の出し手&受け手となったのはキミッヒ。彼は多くのチャンスも演出していました。またズーレ+パヴァール+キミッヒのショートパスワークの精度の高さが、この試合のバイエルンのビルドアップの生命線になっており、ライプツィヒもそこを狙って執拗にプレスし、ボール奪取の機会を伺うような展開となりました。

▼バイエルンのビルドアップに対するライプツィヒの守備システム(前半)

さて、前半の攻防のレビューです。ナーゲルスマン監督として得手でもある3バック(5バック)システムには大きなデメリットがありました。この試合、ライプツィヒのフォシュベリがパヴァールに、ザビッツァーがリュカに対しそれぞれ絶妙な立ち位置とプレスを繰り返し、バイエルンのオフェンシブルートを巧く塞いでいたのですが、バイエルンがそれに対応した前半30分以降、プレスラインを突破されたライプツィヒはゾーン気味に守備を行なっていたこともあり、中盤の底に位置するライマーの脇にあるスペースにミュラーが上手く入り込み、FWとのレイオフや前線へのスルーパスを頻繁に行えるような状況になっていました。しかし、5-3-2で守ることのメリットも十分にあり、バイエルンがかなり前がかかりになることで、カウンターを刺しこむ状況も多く生まれていたのです。

ただライプツィヒ側のカウンターの最初のパスの受け手+前線への供給源となる2人、ザビッツァーにはニャブリ+リュカ+チアゴが、フォシュベリにはミュラー+パヴァール+キミッヒと常に2~3人で即時奪還のゲーゲンプレスをかけることのできる、守備のオーバーロードが実行可能な構造にバイエルン側はなっていました。ライプツィヒは前半、信じられないほどにボールを前に運ぶことができなかったのですが、それでも前半のアディショナルタイム、トランジションからバイエルンの守備ラインが整っていないところにヴェルナーが縦パスを入れポウルセンが倒されPKゲット。フォシュベリが落ち着いて決めて1-1で前半を折り返します。前半の途中でシステムを変えることも可能だったとは思いますが、ここはナーゲルスマン監督、よく辛抱したなという印象でした。

▼バイエルンのビルドアップに対するライプツィヒの守備システム(後半)

そして後半。ハーフタイムでライプツィヒは右SBのクロスターマンを外し中盤のリンクマンであるデンメを投入、3CB右のムキエレが右SBにコンバートされ、基本フォーメーションを4-2-2-2とし「守備的なプラン」から「できるだけバイエルンとイーブンな状況で戦おう!」というナゲ将のメッセージ付きのシステム変更となりました。なおライプツィヒは基本は4-4-2なのですが、バイエルンのビルドアップ時にはヴェルナーが1枚張り出し、ポウルセンが1列落ちて4-2-3-1と、相手のフォーメーションに噛み合わせたマンマーク気味のシステムを(ライプツィヒが)後半は採るようになります。

完全にマンマークという訳ではなくゾーンとの併用という感じでしたが、ボール奪取をしてからパスの出し先が前半と比べて多く担保されていたため、特に後半開始からはライプツィヒのペースでゲームを進める事が可能となりました。個人的には前半を観た限りだと「ここまでバイエルンと差があるとなると、これはライプツィヒはチャンピオンズリーグも苦労しそうだな…」と嘆いておりましたが、後半開始5分間でそれも杞憂に終わりました。ハーフタイムを挟んだとはいえ、シーズン序盤の試合でここまで修正し適応できるチームを作り上げたナーゲルスマン監督及びスタッフの皆様には感服でございます。ちなみに後半の展開はめちゃくちゃ速くてアグレッシブと観ていて純粋に面白い試合内容ですので、観れる方は是非とも映像で!

▼両チームの各種xG

90分間のアタックモメンタムや戦況をみる限りはバイエルンの圧倒的優位で試合が進みましたが、得点期待値を指し示す「xG」上では僅かながらライプツィヒが上回る結果となりました。シュート数は同数でしたが、ライプツィヒは最も期待値の高いPKを決めたことも影響しています。

▼両チームの各種スタッツ

この試合はなんといっても両GK、グラーチとノイアーの活躍が目立ちました。セービング数はグラーチが6本、ノイアーが4本とそれぞれビッグセーブを連発し試合を引き締めてくれました。1-1のドローとは思えないほどにエキサイティングな試合になったのはともに守護神が素晴らしい働きを見せたことに尽きるでしょう。またパスに関するスタッツはバイエルンが上回りましたが、タックルやインターセプト、クリアなど守備に関する項目がライプツィヒの方が高くなっているのは印象通りという感じです。ただ守備に回ったとはいえドン引きすることなく「ミディアムブロックで奪い切る」という狙いを続けて実行できており、ライプツィヒの攻撃的な守備も光る試合となりました。

▼RBライプツィヒvsバイエルン・ミュンヘン ハイライト動画
ライプツィヒはこのあと中2日でCLベンフィカ戦に挑みます(結果は1-2で勝利!)。なんとかグループリーグを突破して欲しいものです。一方バイエルンはCL初戦でセルビアのレッドスター・ベオグラードと対戦します。残り2チームはオリンピアコスとスパーズというバイエルンにとっては比較的突破しやすい組み合わせになったかと思います。近年ブンデス勢があまりヨーロッパの舞台で結果を残していないので、ドイツのチームには頑張って欲しいものです><