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【ブンデスリーガ19/20】第1節 ウニオンベルリンvsRBライプツィヒ マッチレポート「ライプツィヒの3CBからFWへのパス配給分析+α」

2019.08.23 written by Daichi Kawano

※この記事はSPLYZA Teamsのタグ付け機能から割り出されたデータをもとに構成されています。

18/19シーズンはラルフ・ラングニック体制で挑み、見事ブンデスリーガ3位フィニッシュでCLストレートインを決めたRBライプツィヒ。19/20シーズンとなる今季は予定通りユリアン・ナーゲルスマンがチームを率いることとなり、東ドイツの新興クラブとしても新たなフェーズへの挑戦が始まりました。

かつては非常にアグレッシブで、トランジションサッカーの印象の強かったライプツィヒですが、ナーゲルスマン体制を迎えるにあたり、昨シーズン1年間をかけてラングニックはドラスティックにチームスタイルのモデルチェンジを図りました。3バックシステムの採用、後方からのビルドアップ、ボール保持側としての立ち回りやゲームの進め方など、従来の「プレッシング+ボール奪取+ショートパス+高速カウンター」のイメージ一辺倒ではない、引き出しの多いチームを作り上げたのです。それはリーグ最少失点という素晴らしい結果も伴うものでした。

この記事ではナーゲルスマン戦術の生命線(その理由は後述します)でもある3センターバック(この試合ではオルバン+コナテ+ムキエレの3枚)から中盤を列飛ばししたFWへ配給される縦パスの分析と、今シーズンPSGより移籍してきたクリストファー・ヌクンクのプレーを定量的に分析します。また一般的なマッチレビュー記事では無いため、ウニオンベルリンに関してはほぼノータッチです。ごめんなさい…


▼RBライプツィヒ スタメンと簡単なマッチレビュー

シーズン1発目の試合ということで、ナーゲルスマンの十八番である3-5-2(3-1-4-2or3-3-2-2)が予想されましたが、主にオフェンス時は3-4-3を採用するシステムとなりました。ただ流れの中でザビッツァーが2列目に降りてデンメが底に入る形での3-5-2(3-1-4-2)も頻繁に見られ、選手のポジションチェンジも多く行われていたため、彼が得意とする「トランスフォーメーション・フットボール」の片鱗は僅かながら見てとることもできました。

最終ラインはムキエレ、コナテ、オルバンの3枚。ムキエレのスタメン起用は現在ウパメカノが怪我で離脱していることもありますが、ムキエレは元々3CBの右で起用される想定で昨シーズンにモンペリエからやってきていましたので、案の定申し分のないパフォーマンスをみせてくれていました。コナテもオルバンも中盤の底もこなせる機動力とパス供給能力が売りなのですが、何と言っても守備時に両ウイングバックに位置するクロスターマンとハルステンベルク(共に190cmくらいある)が最終ラインに入って形成される5バックにより、対人もスピードも高さも対応可能なマッシブな守備ブロックが形成できることは何よりの魅力でしょう。昨季のホッフェンハイムに比べても選手層はかなり厚いため、ナーゲルスマンも万全の備えでCLに挑めるかと思います。

中盤の2枚はライプツィヒの心臓であるデンメとカンプル。欧州でも屈指のプレス耐性を誇るこの2人の年間の稼働状況が、このチームの成績を左右するのは今シーズンも変わりありません。そしてここに若手筆頭のアダムスやハイダラ、プレー精度が直近1年で飛躍的に向上し右SBも兼任できるライマー、ベテランで安心安全のイルザンカーと申し分ないメンツが揃っています。なおこの試合の後半に(昨シーズンは結局本調子を取り戻せなかった)エミル・フォシュベリが交代で入り、CBの間に落ちてビルドアップに加わったり、ヌクンクに決定的なスルーパスを出したりと躍動していたのはライプツィヒにとっても好材料となりました。

そして前線。相変わらず移籍の噂が絶えないヴェルナーはやっぱり上手ですし速い。ポウルセンはどんな態勢でもボールを納め、長いリーチとその献身性でファーストプレッシングラインのスイッチとなります。新加入のヌクンクは途中出場ながら出色の出来。万能戦士ザビッツァーはこの試合でも後方と最前線のリンクマンとして機能しまくっていました。OptaFranzさんも彼のパフォーマンスを絶賛しています。

なおホッフェンハイム時代から続くナーゲルスマンの好む攻撃戦術ですが、前線のFWに納めて、そのあと2列目の選手が同じタイミングで3〜4枚飛び出して怒涛のモメンタムラッシュを仕掛けるという、非常にロジカルな「百姓一揆サッカー」が特色です。そのためにも組み立て時には最終ラインから最前線までコンパクトさを保ちつつ、特に3枚のセンターバックからの、FWへ供給される効果的な縦方向や対角線のパスが、オフェンスのトリガーになるのです。そのためDFのパス配給能力もそうですが、FWのレシーブ能力、そして中盤からのアグレッシブな飛び出しが選手達には求められます。勿論、ライプツィヒの面々は彼のフットボールを十分に表現することが可能です。後ほどこの試合において3CBのパス配給が実際にどのようなものであったか、定量データを基に分析して参ります。


▼両チームのスタッツ比較

かなりの戦力差もあったため、ライプツィヒのボール保持となる時間が多くを占めました。後半頭に少しウニオンベルリンに押し込まれる時間帯もあり総シュート数はほぼ同じですが枠内シュートとビッグチャンスクリエイト回数に大きな差が。但しライプツィヒは難しいシュートはバシっと決めるものの、その他のビッグチャンス(ヌクンクの1点目以外)をことごとく外すという展開に。もちろん「4得点でかつクリーンシート」という結果は上出来なのですがそれは相手が昇格チームであったからこそ。次節のフランクフルトや他の上位勢との戦いでは決めるところを決めきれないと苦しくなるでしょう。それはチャンピオンズリーグという大きなコンペティションでも同様です。


▼ウィリー・オルバン(#4)からFWへのパス供給分析

★オルバン(CB左)からFWへのパス …5/6[成功率83%]

※赤が失敗。水色が成功。青の二重丸がビッグチャンスの起点になったパスとなります。

・04:15 オルバン(#4)→ザビッツァー(#7)×
・05:58 オルバン(#4)→ザビッツァー(#7)○
・08:40 オルバン(#4)→ヴェルナー(#11)○
・13:42 オルバン(#4)→ヴェルナー(#11)○
・84:20 オルバン(#4)→ザビッツァー(#7)◎
・86:25 オルバン(#4)→ポウルセン(#9)○

この試合においては前線の3枚がかなり右サイドに偏った配置をとっていたため、左CBのオルバンにとっては少し配給が難しい展開となりました。それでもこの成功率の高さ。なお結果論ではありますが、ライプツィヒの1得点目と3得点目はウニオンベルリンの左サイドを攻略しており、相手のウィークポイントとして意図的にそちらのサイドに圧をかけていた可能性もあります。84分のブルーの二重丸、ヌクンクの決定機につながる起点となるパスも供給。オルバン自身は昨年から覚醒状態にあり立ち位置や状況判断がめちゃくちゃ良いので、見ていて非常に安心できるCBです。さすが主将!俺たちのオルバン!


▼イブラヒマ・コナテ(#6)からFWへのパス供給分析

★コナテ(CB中央)からFWへのパス …1/3(成功率33%)

・01:46 コナテ(#6)→ポウルセン(#9)×
・11:51 コナテ(#6)→ポウルセン(#9)×
・75:39 コナテ(#6)→ポウルセン(#9)○

この試合ではウニオンベルリンのファーストプレッシングラインがコナテを自由にさせないような策をとっていたため、彼から縦の中長距離のパスが放たれることは殆どありませんでした。GKのグラーチがビルドアップ時にほぼ組み立てに関わらないため、コナテとしてはしっかり最後方で自分の役割を果たしていたかと思います。但し55分くらいの大ポカは擁護しようがない(笑)凄まじいポテンシャルを誇る選手なので、なかなか直らないやらかし癖は徐々に減らしていって欲しいものです。試合の終盤はリベロみたいになってガンガン上がりまくってて楽しそうなコナテ君でした。オフェンス大好きなのは相変わらずです。


▼ノルディ・ムキエレ(#22)からFWへのパス供給分析

★ムキエレ(CB右)からFWへのパス …8/10(成功率80%)

・12:46 ムキエレ(#22)→ザビッツァー(#7)○
・15:27 ムキエレ(#22)→ヴェルナー(#11)×
・20:03 ムキエレ(#22)→ザビッツァー(#7)○
・34:35 ムキエレ(#22)→ポウルセン(#9)○
・45:00 ムキエレ(#22)→ポウルセン(#9)○
・48:45 ムキエレ(#22)→ザビッツァー(#7)◎
・51:11 ムキエレ(#22)→ヴェルナー(#11)○
・64:11 ムキエレ(#22)→ヴェルナー(#11)×
・78:13 ムキエレ(#22)→ザビッツァー(#7)○
・79:42 ムキエレ(#22)→ザビッツァー(#7)○

この試合はオフェンスがどちらかと言えば右偏重であり、また右の前線にいたザビッツァーが幾度となくボールを貰いに2列目に落ちてきていたため、ムキエレにとっても最終ラインからの配給がしやすい展開になっていました。48分の二重丸はムキエレからザビッツァーにつなげて、前を向いたザビッツァーからビッグチャンスが生まれたもの。ムキエレは守備でも貢献度が高く、本職の3CBの右で水を得た魚のように活き活きとプレイしていました。ウパメカノももうすぐ復帰間近ではありますが、このパフォーマンスを続けられれば当面はナーゲルスマンのファーストチョイスになるかと思います。左CBも両ウイング(とSH)もできるのは彼の強みになっている事でしょう。


▼クリストファー・ヌクンク(#18)プレー分析

・68:02 ゴール◎
・73:49 ボール奪取○
・73:55 パス成功○
・76:20 デュエル□
・79:51 ビッグチャンス失敗△
・81:24 ドリブル突破成功○
・83:25 デュエル□
・86:45 プレス成功○
・87:51 パス成功○
・89:56 パス成功○

後半65分からの出場でしたが、まさかの交代後1タッチ目でブンデスリーガ初ゴールを記録。ビッグチャンスを2度ほど棒には振りましたが、ボールに関与したプレーはほぼ100点のパフォーマンス。特に73分の技ありのボール奪取、86分の相手のビルドアップルートを阻んだプレッシングは痺れました。もともと個人的にもヌクンクは好きな選手だったのですが、これほどまでにナーゲルスマン・ライプツィヒにフィットするのかと感激しました。今後の活躍にも大きく期待できると思います。

▼まとめ
この試合、一番輝いていたのはやはり何度もカメラに抜かれていたナーゲルスマン監督でしょう。前半の大雨でびしょ濡れになったナイキの白Tシャツを、ハーフタイムに着替えて後半にナイキの黒Tシャツ姿で現れた時は「どんだけお洒落さんやねん!」と思わず声に出してしまいました。あとはピッチ脇でアップしてたアンパドゥの後ろ姿が、毎回でかいクラゲが宙に浮いてるみたいだった(笑)ポウルセン+ヌクンク+アンパドゥのドレッド3人衆が同時にピッチに立つのも時間の問題かと思います。

さて、まだ1試合しか観れていないので何とも言えませんが、ナーゲルスマン・ライプツィヒはなかなかの面白い仕上がりになっている予感です。スカパー入ってる方はぜひブンデスの試合を、そうでない方もご興味があればチャンピオンズ・リーグで試合をご覧になってみてください。今回は弟分のザルツブルクもCL出ますし、レッドブルグループ研究をライフワークとする私としても楽しみで仕方がありません。


▼ウニオンベルリンvsRBライプツィヒ ハイライト動画

プロフィール:河野大地 (Daichi Kawano) デザイナー/アナリスト

宮崎県出身。約10年の広告制作会社勤務ののち、長年趣味で行なっていた映像編集技術やデータ分析、インフォグラフィックに関するスキルを買われスポーツテック業界へ2018年に転籍。現在は株式会社SPLYZAにて試合映像分析アプリの開発・運用にUI設計&デザイナーとして携わる。4児の父。

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