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【プレミアリーグ19/20】第3節 ワトフォードvsウェストハム マッチレポート「ペジェグリーニのスタイルを踏まえた上での、ウェストハムの戦術浸透度を分析。」

2019.08.26 written by Gaku Morita

名将マヌエル・ペジェグリーニが就任して2年目を迎えるウェストハムは、昨季は10位フィニッシュでしたが、今期は戦力も整理されてより上位が期待されるチームです。今回はそんなウェストハムを、過去およそ15年間ペジェグリーニのサッカーを見てきた視点から、ペジェグリーニのスタイルを踏まえての現在の状況について、第3節のワトフォード戦を元に振り返ってみました。


これまで過去に2度、ペジェグリーニ氏に直接弟子入りを志願しました。めげずに3回目も…


▼ペジェグリーニのスタイル
基本的にボール保持を好みます。ボール保持の時は、低い位置からしっかりショートパスを繋ぎ、前線の選手には一定の自由を与えて攻撃を仕掛けていきます。ボール非保持の時は、コンパクトな陣形で引いた守備を行うスタイルで戦います。

≪ボール保持≫
低い位置からパスをつなぎつつも、ボールが収まるセンターフォワードを据えて、2列目に攻撃的な選手を配置し、それらの選手には自由を与え、そこから前進して得点を狙っていきます。2列目の選手で手詰まりしたら、サイドバック、ボランチが攻撃参加を行います。



ペジェグリーニが率いるチームは攻撃時の自由を与えられた2列目の選手が一つの見所です。対戦相手の特徴に応じて、選手や配置を変えます。対戦相手が前がかりの守備をする場合は裏に抜けるスピードを持った選手、引いて守備をするチームにはよりテクニカルな選手を使う傾向があります。

≪ボール非保持≫
4バック+ボランチ+両サイドの4-4でコンパクトな2ラインを作ります。相手陣地で奪いにいくよりも、自陣でしっかり守る傾向が強いです。最終ラインはペナルティエリアの位置で設定されています。



守備の時は4-4-2と4-1-4-1を併用します。失点したくないシチュエーションではより低い位置に人数を割く4-1-4-1となることも多いです。

≪攻撃→守備の隙≫
攻撃では、2列目から前が良い形でボールを持つと勢いを持って前進します。守備では自陣へ引く動きが基本なので、ボールを奪われたら最終ラインは下がります。なので、攻撃時にボールを奪われると、「2列目から前」と「2列目より後」は分断され、その間のスペースを相手に使われてゴールを脅かされる、というシーンが数多く見られます。



この時、2列目に守備的な選手を起用すると、「2列目から前」と「2列目より後」が分断されて、間のスペースを使われるリスクは小さくなります。一方で、守備的な選手を起用すると攻撃の推進力が弱くなります。なので、攻撃と守備のバランスも、2列目の選手起用によって変わり、注目ポイントです。

現在、この2列目に入ることができるウェストハムの所属選手は7人ほど(アントニオ、ランジー二、フィリペ・アンデルソン、スノッドグラス、ウィルシャー、フォルナルス、ノーブル)です。実力があり個性豊かな選手が揃っています。


▼ワトフォード戦のスターティングメンバー
この試合、ウェストハム注目の2列目は、フィリペ・アンデルソン、ランジー二、ヤルモレンコ、攻撃的な選手3人が起用されました。


アグレッシブにリスクを取って前に出ようという意思が感じられます。また、配置はフィリペ・アンデルソンが左、ヤルモレンコが右で、配置されたサイドとは利き足が逆です。その為、サイドで受けて中央に切り込んでいく動きが多くなり、2列目から前の攻撃は中央に集中することがこの時点で想定されます。


▼試合展開


試合は3-1でウェストハム勝利。試合開始早々にPKで先制したものの、前半の内に同点に追いつかれました。後半はヤルモレンコに変わってアントニオが入り、攻勢が強まり、セットプレーをきっかけに新加入のハラーの2得点でスコアを3-1として、今季初勝利を挙げた試合でした。




▼総評
シュート本数39と両チーム共にシュートが多いオープンな展開でした。シュート、クロスの数字はワトフォードが上回っており、どちらが勝ってももおかしくない試合内容でした。パス本数もワトフォードが上回っており、ウェストハムとしてボール保持からゴールを狙う展開を作ることはできておらず、試合に勝利したものの、内容としては十分でないという印象を受けました。ただ、カウンター、セットプレーから決定機を作り3得点、攻撃→守備の隙を突かれて失点したものの、最終スコアは3-1で勝利というのはチームにとって素晴らしい結果でした。


▼ペジェグリーニ試合後のコメント
”非常にエンターテイメント性のあるゲームだった。両チームのファンが来て、見たくなるようなショーだった。スタジアムに足を運びたくなるゲームだったね”


▼まとめ
ペジェグリーニのスタイルがチームに反映されつつあるが、しっかりとしたボール保持からの攻撃という形はまだ多く見られない状況です。ここに関してはシーズンを戦っていく中で、所属選手の連携向上、2列目の組み合わせの模索などを行いながら、進化していく部分だと思います。ウェストハムの現状は、「ペジェグリーニのスタイルは反映されつつある状況、伸び代十分」といったところでしょうか。今後の試合でどうなっていくか楽しみです。

プロフィール:森田岳 (Gaku Morita) エバンジェリスト/アナリスト

自動車業界出身で社会人サッカーチームの運営/監督/選手経験を持つ。サッカーに関するスタッツ・客観的なデータをこよなく愛し、戦術ボードアプリ「Tactical Board」の開発者でもある。尊敬する指導者はマヌエル・ペジェグリーニ。

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