Sports Analytics Lab


[2019シーズン第1-8節]データで見るJ1全18クラブの傾向&チームスタイルまとめ

2019.04.26 written by Daichi Kawano

2019年2月22日(金)に行われた「セレッソ大阪xヴィッセル神戸」の試合より開幕となった明治安田生命J1リーグも先週末までに第8節を終え、今週末は「平成最後のJリーグ」として全国各地で第9節が行われます。私個人としても今年のJ1リーグは各試合のパスマップやボール奪取のログデータを取っていた関係でかなりの試合数をフル観戦(各チーム3試合程度)しており、相当楽しませてもらっているのですが、この記事では「データでの傾向」を、各試合のスタッツをベースにぼんやりと分析していきたいと思います。

最近は「得点期待値に関する指標(xG)」など多くの指標がありますが、所謂「x系」の指標は試合中における大局は読み取れない(のと、自分がよくわかっていない)ため、当記事では扱わないこととします。あとはfootballistaでもプッシュされている今流行の「ゲームモデル」的な考え方はこういったスタッツベースのデータからは読み取ることはおそらく出来ないので、ここではその辺を切り離してお読みいただければと思います。

なおTwitterの方でも投稿しましたが、グラフの中に混ざっている(18-19シーズンの)チャンピオンズリーグにおけるベスト16チームは完全にオマケですので、予備知識というか…賑やかし程度の認識でお願いします。あくまでJ1での傾向と欧州CLでの傾向の簡易的な比較として、本文中でも言及していきます。

この記事の散布図および各試合のスタッツについては世界中のスポーツのスコアが掲載されているサイトとして有名なSofascoreよりデータを引用させていただいております。様々なスポーツのスタッツが掲載されておりますので、「自分もスポーツアナリティクスを研究したり、アウトプットを作りたい!」という方は入門編としても最適かと思いますので、是非活用してみてください。また後半に出てくるボール奪取マップやパスネットワーク図については、私個人で試合中のイベントデータのログを目測で取得しています。みんなでデータ分析によるアプローチを積極的に行いアウトプットすることで、スポーツに関する"数字"に強くなりましょう。やり方が間違ってるだとか数字の見方が云々を指摘するのは野暮なものです。とにかく回数を重ねて新しい発見をし続けることの方がよっぽど大事ですから。強い気持ちで突き進みましょう。


指標となるスタッツ「パス総本数平均」とそれを元にした散布図


この記事内では傾向の分析のベースとなる指標として「パス総本数平均」を用います。「ボールポゼッション」でも問題は無いのですが、パスを400本弱しか出していなくても保持率50%に達するような試合内容やチームの相性の掛け合わせが存在するため、よりチームスタイルを色濃く出すためにもパスの総アテンプト数(試みた回数)を採用することにしています。

これは各チームが保有する選手の能力を示す指数にもなり、1試合でアテンプトするパスが多ければ多いほど、パスをムラなく出せる能力が高い選手がおり、またパスが多く回るスタイルやシステムを採用していることが数字でも証明できるからです。なお、皆さんご存知かとは思いますが、以下のように「パス総本数」と「ボールポゼッション」はほぼ相関関係にあるため、綺麗に右肩上がりのトレンドラインが出来ます。プロの試合ですとパス成功率も7〜8割の確率となるので、「パス成功本数」と「ボールポゼッション」で出しても似た傾向のグラフになります。

▼パス総本数とボールポゼッションの1試合平均


松本山雅とドルトムントのお陰で横軸のレンジが相当広くなったので助かりました。これで各チームの特色がよりハッキリすると思います。おおよその指標としては1試合550本以上パスアテンプト数のあるチームは「ボール保持型」、平均500本前後のチームは「バランス型」、そして450本以下のチームは意図的(もしくは不本意)な「ボール非保持型」と定義して話を進めます。こちらの表より読み取れることとしては、J1においての「ボール保持型」の代表は川崎と神戸、逆に「ボール非保持型」の筆頭は松本山雅ということになります。

このx軸は以降のグラフにおいて固定になりますので、決して近い場所にあるチームが「志向の近いフットボールを展開している!」という訳ではないのでご了承ください。特に真ん中のバランス型のチームでアヤックスやアトレティコのようなプレッシングも兼ね備えるチームは試合によってパスアテンプト数が大きく異なります。試合によってパス数が400本以上違うクラブもJ1にはあったりしますので、それはまた後述します。

それでは今回の傾向分析に使用する4つの項目である「ロングボールアテンプト」「デュエル勝利数」「ボール奪取数」「クリア本数」と、それぞれの散布図を元に話を進めていきます。


▼パス総本数とロングボールアテンプトの1試合平均


ロングパスと聞くとどうしても"パワープレー"であるとか、"持たざる者の選択肢"というイメージが拭えない方もいらっしゃるかもしれませんが、表の中からも判る通りレアル・マドリードやバイエルンなどの名門クラブでも「試合中の有効打」として積極的にロングボールを選択し、試合を優位に進めています。代表的なものはセンターバックから対角線に位置するウイングの選手へ供給されるロングパスでしょう。撤退した相手に対してオフェンシブルートをこじ開けるための常套手段でもあります。あのバルセロナですら、CLに限らず国内リーグにおいても現在は1試合において平均約60本近くの(パス全体の母数の多さを加味する必要は勿論ありますが)ロングパスを選択しています。

J1においては大分が後方から前方に供給するボールを好むスタイルをとっており、かつ毎試合トータルで600本近くのパスをアテンプトしているため戦術的実行度はかなり高いと言えるでしょう。逆に、現時点でのボトム3である磐田・仙台・鳥栖の3チームにおいては、アテンプトこそ多いものの試合の平均が400本前後となっており、あまり計画的なパス供給パターンにはなっていないようです。松本についてはこれが手札として有効であり続けるかどうかは何とも言えませんが、徹底した非保持スタイルとロングボールが相関関係にありスタイルが完成されています。そして極端にロングパスが少ない部類にあたるのが神奈川の2チーム、川崎と横浜FMとなっています。こちらは実際に試合映像をご覧になっている方においてはわかりやすい数字かと思います。


▼パス総本数とデュエル勝利数の1試合平均


続いてデュエルに関する項目です。Sofascore内の定義によると「ボールを保持している相手からフィジカルコンタクトを伴いボールの保有権を奪うこと」そして「ボールがどっちつかずの状態でフィジカルコンタクトを伴った上でマイボールにすること」この2つが定義されています。そのための「球際の意識」であり「1対1の強さ」であるとも言えるでしょう。なおデュエルについては例えば「Squawka」ではまた異なった定義がされていたりするので注意が必要です。個人的に試合のログを普段から計測するにあたり、自分の定義している「デュエル勝利のイベントデータ」との定量データの誤差が最も少ないのがSofascoreであるため、今回はこのデータを採用しています。そしてこれらは地上戦も空中戦も含みます。

なおデュエル勝利数の多いチームには「デュエルに勝利し続けることでボールを保持し大局を優位に進める」というものと、「ひたすら来たボールを跳ね返す」この2つのパターンが挙げられます。前者で代表的な例は名古屋となります。消耗戦を好み、徹底したショートパスでの中央突破で相手の守備組織を破壊するサッカーを展開しています。後者としてはまず湘南・鳥栖が挙げられます。この2チームは「跳ね返す」という意図よりも、うまく前線にボールを運ぶのが困難であるようにも見て取れます。そして松本は守備も攻撃も相当なデュエルを好んで選択する「超オープン型」のチームとなっています。


▼パス総本数とボール奪取数の1試合平均


3番目に「ボール奪取」に関する項目です。こちらはインターセプト(コンタクトを伴わない、パスカットなどのインプレー中の守から攻への切り替え)と、タックル成功(ドリブルなどのアクションを起こしている相手へのスライディングタックルなどでのボール奪取成功)の合算値としています。この項目は個人的なログ計測の仕方として全て「ボール奪取」としていましたが、ここで扱うスコアに関しては、おそらく私の認識とSofascoreのデータとは多少の誤差があると思いますのでその辺はご了承ください。なおこちらのスコアが高い=前線からプレッシングして相手のルートを限定しクリーンにボールを奪うスタイルのチームが該当し、図の中でもドイツ勢のバイエルン、シャルケ、そしてドルトムントは際立っています。

J1ではG大阪が唯一この「クリーンに奪い二次攻撃に繋げる」の部類にギリギリ入ると言っていいでしょう。勝利した第4節の川崎戦では現時点でリーグトップである、1試合42本のボール奪取を記録しています。この後に出てくるクリア本数でもG大阪は少ない部類にあたるので、敵陣に押し込むのを好むスタイルであると言えます。逆に非保持型でボールを奪えていない湘南・磐田・仙台についてはこれが意図的に少ないものである可能性もあるため何とも言えませんが、気になるところです。


▼パス総本数とクリア本数の1試合平均


最後にクリアに関する項目です。多ければ多いほど押し込まれている時間帯が長く、逆に少ないほど押し込んでいる時間が多いということになります。引いている時間帯が多いのにも関わらず全てのチームに対応し首位にいるF東京は、それらのほとんどを意図的に選択していると言えるでしょう。逆に最も押し込んでいる名古屋はリーグ3位ですが、次点のG大阪・神戸は中位以下となっており、評価が難しいところです。松本はド左上にいます。ここでもブレはありません。

そしてものすごく変な位置にいる大分ですが、データ的にはパスの総本数に対してのこのクリア数は異常値であると言えます。ただこれは計測の仕様のバグを突いているだけという認識で、定義上はクリアボールであるものを前線の選手がレシーブしてしまっているためにこうなっていると推測しています。また後述しますが、これは策士である片野坂監督の罠でもあると言えるでしょう。


それでは、上記の図をもとに各チームの第1節から第8節までの各試合のスタッツを振り返りながら、これまでの傾向やチームスタイルの練度、第9節以降のおおよその展望を見立てていくことにします。


J1全18クラブのチームスタイルと第8節までの傾向&以降の展望


▼1位 FC東京 [ボール非保持+万能対応型]


J1で唯一無敗をキープ中のFC東京。大半はボール非保持を選択しているようですが、好調の要因としては「万能性」が挙げられます。開幕戦こそ引き分けましたが、オープンな展開を得意とする鳥栖と湘南には相手をデュエルで圧倒し2連勝。続く名古屋戦では相手にボールを明け渡し、パスアテンプト僅か273本、クリア本数は31本という数字で3連勝。引き分けを挟んだ清水戦は支配率でも相手を上回り、似たタイプの広島に対してはバランス良く戦うことができるなど、変幻自在にスタイルを適応できることが強みであるようです。なお昨シーズンもそうでしたが、気になるのは後半戦もこれを維持できるかどうかが鍵で、こちらが相手に合わせているうちは良いものの、相手にアジャストされると…という塩梅でしょうか。長谷川監督の手腕が問われる今後になりそうです。

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▼2位 サンフレッチェ広島 [ボール非保持+万能対応型]


現在2位と好調の広島。タイプはF東京にかなり近いものがありますが、違いとしてはボール非保持の相手に対してはしっかり主導権を握り、スマートに試合を進めることができる点でしょうか。松本戦とG大阪戦を比べると実に300本ものパスアテンプト差があります。これは相手によって戦い方をアジャストできるという証拠でしょう。また広島の大きな特徴として、デュエルの勝利数が極端に少ないことも挙げられます、これは球際の意識が低いのではなく、なるべくしてそうなっているようです。デュエル勝利数が70本を超える試合もありますが、8試合を通してみれば比較的コントロールされた試合展開を好むようです。そしてこのチームもF東京同様に、相手が合わせてくる2巡目でどう立ち回れるかどうか。勿論、ここまでの戦い方を続けることができれば、上位は安泰かと思います。

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▼3位 名古屋グランパス [ボール保持+ハイテンポ+オープン攻撃型]


J1では他に類を見ない「超オラオラ系」のチームが名古屋です。平均580本以上のパスアテンプトに加えリーグ2位のデュエル勝利数を誇り、平均値ほどのボール奪取力を兼ね備えるのはこのチームだけです。特に札幌戦の前半は圧巻でした。あそこまでのハイパフォーマンスはどのチームが対峙してもアンタッチャブルであったように思います。以下の図のように特に中央で相手からボールを奪い続けた試合に関してはハイスコアゲームになる傾向があるようです。

J1第5節 名古屋vs札幌 両チームのエリア別(デュエル含む)ボール奪取数(-90分)


ただ相当なオープンな戦い方を志向するゆえ、消耗戦がベースとなることが原因での怪我での離脱やカード累積による出場停止などの影響、また中枢を担うブラジリアン・トップチームなみなさんのパフォーマンスに依存していることは懸念すべきでしょう。あとはこのスタイルの最大の敵となる夏場にどう乗り切るのか。このあとガクンと成績が落ちてしまう時期が来るかもしれませんが、その際にどうチームをマネージメントするのか、風間監督がどういった手を施すのかは見物です。

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▼4位 大分トリニータ [ボール保持+低重心+ロングカウンター型(特殊スタイル:釣り野伏)]


今季のJ1で開幕戦からのアップセットでリーグに旋風を巻き起こしている大分。まるでベティスのような低い重心のビルドアップと、相手を引きつけてのロングカウンターの完成度は目を見張るものがあります。散布図においてもほとんどの項目でトレンドラインから離れた位置におり、異端であることがわかります。特にのクリア回数は先にも述べましたがリーグ全体の相対な目線で見ずとも異常な数値です。これは何故か。片野坂監督十八番の高等戦術「釣り野伏」がデータからも顕著となっています。

片野坂監督と軍師・島津義久との多くの共通点がこちら!


つまり、相手が行ける!と思わせるのが釣り野伏であり、疑似カウンターを発動するためのトリガーとなっているのです。特に大分は先制した試合で滅法強いのですが、それもその筈、相手が前がかりになればなろうとするほど大分の思う壺。そのため、意図的に相手にボールを持たされ、オフェンシブルートを埋められ続けた松本戦と広島戦は700本以上のパスアテンプトを行なったのにも関わらずに手詰まりとなり、得点も奪えず敗戦となっています。大分が面白いのは「保持型だが、パスアテンプトが少なければ少ないほど試合を優位に進めることができる」という点に尽きます、そのためまだ相手が対策を練ってこないであろう1巡目でしっかり勝ち点を稼ぎ、アジャストしてくる2巡目でもしっかり応戦できる試合運びができれば、引き続き上位に留まる望みは十分にありそうです。

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▼5位 鹿島アントラーズ [バランス+オープン攻撃型]


鹿島は非保持寄りのバランス型であるとも言えますが、比較的オープンな戦い方を好む前線アイソレーション型、もしくはプログレッション寄りなのは鹿島伝統のブラジルのDNAがそうさせているとも言えるでしょう。言い切ってしまえば、データからは明確な特徴というものは見て取ることは出来ません。特徴がないことが特徴というか、良く言えばチームとしてのスタイルが確立しているとも。全ての項目においてバランスが取れていますので、今の所は大崩れする心配はなさそう。多分。すいませんあんまり書くことがない…

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▼6位 浦和レッズ [バランス+前後分断(アイソレーション)型]


浦和も戦い方は比較的鹿島に似たものがあるかもしれません。ブラジル人であるオリベイラ監督によるものでしょうか。なおここではバランス型と定義はしていますが、浦和はたくさんパスアテンプトすると決めきれずドロー、そして横浜FM戦を除いて、パスアテンプトが400本を切ると勝っていますね。デュエル勝利数は多いものの、クリア回数も平均20本を超えているため、何か明確なプランがあったとしても整備途上であるがゆえにまだうまく実行できていないのか、もしくはそういったものは設定せず、選手個人の能力に任せて行き当たりばったりなサッカーになってしまっているのかはオズのみぞ知る…データから読み取れる特徴というのは鹿島同様、あまり無いです。

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▼7位 川崎フロンターレ [ボール保持+低重心+ゲームコントロール型]


序盤こそ苦戦していたディフェンディングチャンピオンですが、ここ数試合でかなり巻き返してきています。パスアテンプト平均はリーグ2位の668本であり、第2節の鹿島戦で記録した848本は今シーズン現時点でのリーグレコードとなっています。もちろん、パスを多く回せば必ず勝てるわけではありませんが、ここまで1敗しかしていないのは好材料。戦い方は全8試合通して一貫しており、このままパフォーマンスを徐々に上げていければ自ずと上位進出は見えてくるでしょう。懸念すべき要素は少ない印象です。

J1第5節 松本vs川崎 両チームのエリア別(デュエル含む)ボール奪取数(-90分)


こちらの松本戦はSofascoreでもデュエル勝利88本とかなり敵陣を制圧した試合となり、川崎の理想とするゲームコントロールがうまくいった試合かと思います。ボールを保持して陣形を整えながらオフェンスを続けていれば、インプレー中にボールを奪われてもすぐに相手をケアできるため致命的なピンチが発生しずらくなります。実際に、川崎は失点の少なさも広島に次ぐリーグ2番手(5失点)でありますので、その点も評価すべきです。おそらくリーグ戦折り返しの時期にはTOP3に食い込んでくるのではないでしょうか。

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▼8位 コンサドーレ札幌 [バランス+ほどほど対応型]


ボール保持でも非保持でもない札幌ですが、ある試合では大勝、また別の試合では大敗を喫するなど、少し安定さを欠くようです。上にあげた散布図でもほとんどがトレンドラインに近い位置にいますので、ミシャ監督が狙ってバランスを取るようにしているのでしょう。0-4と一方的となった名古屋戦の敗戦を含めた3連敗から、直近の2戦では2連勝とチーム内でのやり方の整理はできているとは思うのですが、データ上どういう相手を得意とし、苦手としているのかがイマイチ見えてこない部分に関しては、戦況によって戦い方を大きく変えているからこそなのかもしれません。このバランス型というのは大化けするポテンシャルを秘めておりますので、昨シーズンの最終盤同様に、TOP5以内でフィニッシュできそうな線も見えてきます。ちなみに開幕カードでの湘南戦で記録したデュエル115本はリーグレコード。

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▼9位 横浜F・マリノス [ボール保持+ハイテンポ型]


さて、おそらく私がここまで一番試合をフルマッチ観戦している横浜FMです。端的に言えば「攻め急ぎすぎている」という印象です。緩急がないというか。ずっと急!みたいな。なので、おそらくパスアテンプトも理想としているラインから1試合平均50本〜100本ほど足りていないはずです。保持型で平均600本を切る場合は名古屋のようにデュエル無双を決められれば一番良いのですが、どうやらそういう志向でもなさそうなので…

J1第3節 横浜FMx川崎 横浜FMのパスネットワーク図


この川崎戦が一番顕著でしたが、少ないタッチ数でガンガン前進していく傾向にありました。より試合をコントロールしたいのであれば、パスのリリース頻度をもう少し抑えたほうがイメージとしては良いのではないでしょうか。そのぐらい現時点ではチグハグなデータ傾向となっています。特に直近の試合、札幌戦でのクリア5本のみで0-3の敗戦というのは相当パニックに陥っている証拠かと。もう少しローテンポにしてみるとどうなるか見てみたいです。個人的には好きなスタイルのチームですし、それらを実現するための選手も揃っていると思いますので、そこまで大幅に修正しなくとも成績は安定するはず。

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▼10位 松本山雅 [ボール非保持+超オープン迎撃+撤退型(特殊スタイル:ソリボール)]


「ソリボール」と聞いて怒る方もいらっしゃるのは重々承知の上で、ここでは明確なチームスタイルとして定義させていただきます。ここまでの試合のスタッツをご覧いただければお判りいただけると思いますが、一切のブレがありません。デュエル勝利数に関してはぶっちぎりの1位、ボール奪取やクリアに関しても平均水準以上と、今回パスアテンプトと掛け合わせた散布図は全て松本山雅のスタイルをより可視化したかったから!と言い切っても過言ではないです。引きつける間も無くリリース!→デュエル勝利で特攻!→拾えなかったらまた奪取してリリース!この繰り返しです。「ボールは速く送れば送るほど速く返ってくる」ということを理解した上で行われているのがソリボールなんですね。この極端なスタイルで既に3勝し、中位に位置しているのは凄いと思います。ただ前回のJ1でも似たようなスタイルを志向していましたが、結果1シーズンで降格の憂き目に遭ってしまったため、今季はどの程度シーズン中に反町監督のソリッドなソリボールがアップデートされていくか、しかと注目していきます。

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▼11位 ヴィッセル神戸 [ボール保持+ローテンポ+ゲームコントロール型]


最も掴めないの神戸です。なにせ監督が変わってしまいましたので…メンツは変わらないといえど、吉田監督になったリーグ戦1試合とカップ戦の1試合で特にビルドアップのアプローチを大きく変えているのではないか?という話も出てきている位ですし。ひとまず、第8節時点までは散布図上はバルセロナに近い位置にこそいますが、リーグの下から数えて2番目の失点数を考慮すると(神戸がバルサ化を目指しているのであるとすれば)まだ整備途上なのかなという見解です。

J1第5節 G大阪vs神戸 両チームのエリア別(デュエル含む)ボール奪取数(-90分)


このようにかなり「ガンガンいこうぜ」タイプのG大阪と対峙した場合でも、ガンバも神戸ペースに巻き込まれる形で自陣でのボール奪取がメインとなっており、また神戸は基本はローテンポで緩急をつけた攻撃が実践できたことで3失点こそしましたが勝利を収めています。ここまで、試合をコントロールするという点では割と実行できているとデータでも出てきていますので、今後の吉田監督の采配にどう変化があるのかにも注目です。

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▼12位 湘南ベルマーレ [ボール非保持+オープン迎撃型]


ボール非保持とオープン志向である点では松本に近い湘南ですが、決定的な違いは「インターセプトやタックルが少ない」という点にあります。全てデュエルで奪いに行くことで消耗戦に持ち込むような狙いが読み取れます。曹監督がおそらく参考しているであろうライプツィヒは、デュエルやタックル、インターセプトのバランスが非常に取れており、CL出場権のあるブンデス3位の位置をほぼ確実なものとしていますので、湘南もそこのバランスが良くなることで成績も安定するかもしれません。またクリア本数もリーグ2番目の数字であるため、夏場を少しセーブして乗り切るためにも、もう少し押し込まれている時間帯を減らすこと(精度の高い連続したショートパスでの前進など)も必要かもしれません。

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▼13位 清水エスパルス [ボール非保持+ローテンポ型]


だいぶ底に沈んでいましたがこの2試合で息を吹き返してきた清水。全ての試合で相手に主導権を渡し、しっかりと中を固めてカウンターという狙いが試合を重ねるごとに明確になってきました。リーグワーストの失点数であった守備も徐々に改善され、各項目も相手に合わせたバランスの良いスコアになっていますので、特に懸念すべき事はなさそうです。頑張ってください!

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▼14位 セレッソ大阪 [バランス+ほどほど対応型]


セレッソですが、全ての項目が平均的(クリア本数だけちょっと多い)であり、相手に合わせることで試合を展開しているようです。広島戦はボールを持たされて800本以上もパスアテンプトした挙句に敗戦しているのが気になります。ここまで2勝のみと、これで少しずつでも勝ち星を積み上げていけている間は良いかもしれませんが、より負けが込んできたときに打開策があるのかどうか。関係ないですがセレッソのU23の試合を2試合ほど観戦しましたが、面白かったのでまた追っかけてみようと思っています。

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▼15位 ガンバ大阪 [ボール保持+ハイテンポ+敵陣制圧したい型]


現在の順位に触れた記事をインターネット上でいくつかお見受けしましたが、確かにここまで2勝、リーグワーストの失点は悲観的になるのも無理はないと思います。が、私としては「狙いは明確であり勝ち筋が見えれば上位進出は十分に有り得る」という見解です。というのもマリノス戦では404本だったパスアテンプトが、広島戦では822本とその差418本、(失点が多いことも加味すれば)あまりにもムラが有りすぎます。そしてその2試合とも敗戦してしまうという、相手に合わせすぎて自らのバランスを崩すという傾向にあるからです。

J1第3節 大阪x名古屋 G大阪のパスネットワーク図


敗れた名古屋戦のパスネットワークでは、短いパス本数でショートパス+ロングパスを織り交ぜ積極的にボールを前進させていました。前線でボール奪取もできているし、押し込んでいる時間も比較的長いのですが、マリノスと似た問題を抱えているようにも思えます。ガンバには舵取りに長けた選手が中盤に多くいること、また「前線でボールキープできるデュオ」としてはJ1屈指のアデミウソン選手+ファンウィジョ選手という役者を擁していますので、ボール保持のところでもう少しムラをなくし、試合をコントロールできる試合が続けば徐々に成績は上向きになるのではないかなと推測します。

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▼16位 ジュビロ磐田 [ボール非保持+オープン歓迎型]


もうかれこれ10年ほど、地元ジュビロの試合を追ってまいりましたが、今季ほど狙いが見えてこないシーズンはないかもしれません。保持/非保持の際の陣形も一向に整備されませんし、90分間フリーダムにずっとバタバタしています。ポジションチェンジを頻繁に行うことでバランスを大きく崩し、積極的に相手にチャンスをプレゼントしているように思います。インプレー中の攻→守の局面なんかは特に。個人的には2017シーズンにかなり割り切ってアダイウトンに放り込んでいた時期は観ていて一番面白かったです。ちょっとどこから手をつけたらわからないぐらいの印象なので、何もしなければこのまま降格まっしぐらでしょう。あとは何も書けません…

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▼17位 ベガルタ仙台 [ボール非保持+前に行きたいけど行けない型]


今シーズンかなり苦戦している仙台。おそらく不本意にパスアテンプト数が少なく、コンタクトやボール奪取数も平均以下となっています。ただ、平均ポジションとパスネットワークは均衡が取れていて非常にコンパクトで綺麗なのです。データ上は。

J1第3節 仙台x神戸 仙台のパスネットワーク図


ガチャガチャしている磐田と比べると、仙台はおそらくやりたいことは実行してはいるけれど、それが相手にとって脅威・致命傷になっておらず、勝ち星を積めない状況にあるのではと予想します。ここから根本的にやり方を変えるのか、いまのやり方を少しずつ修正していくのか。後者な感じはしますがなんとか立ち直ってほしいものです。

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▼18位 サガン鳥栖 [ボール非保持+オープン迎撃したいけどできない型]


最下位に沈むサガン鳥栖。議事録ネタなどで話題にもなっていますが、散布図からはそこまで悪いデータは読み取れません。少し苦し紛れのロングボールが多いというくらいでデュエル勝利数は相当高いし(リーグ4位)、ボール奪取も平均水準より高く、言うほど押し込まれてもいない。。失点も12と極端に多いと言う訳でも…と思ったら得点1ってなんだーー磐田戦のクエンカのゴールだけなんですね。と言う訳で、課題は明確になりました。鳥栖は今のバランスを崩してでも頑張って得点を積極的に狙いに行きましょう!そこまで悲観的になる必要はないと思います。


まとめ


結論としては「データだけ見てもやっぱりぼんやりとしか見えてこない!」です。たまたま多くの試合を見ていたので、そっちの映像の情報でなんとか文章を書きつなぐことができました。やはり「答えはピッチ上に落ちている」ということなんでしょうか。まだまだ修行が必要なようです。という訳で皆さん、引き続きJリーグの試合をしっかり観つつ、サッカーライフを楽しんでいきましょう\(^o^)/それでは良いGWを!!あばよ平成!!

プロフィール:河野大地 (Daichi Kawano) デザイナー/アナリスト

宮崎県出身。約10年の広告制作会社勤務ののち、長年趣味で行なっていた映像編集技術やデータ分析、インフォグラフィックに関するスキルを買われスポーツテック業界へ2018年に転籍。現在は株式会社SPLYZAにて試合映像分析アプリの開発・運用にUI設計&デザイナーとして携わる。4児の父。

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