Sports Analytics LabPowered by SPLYZA Inc.


【2020シーズン第1節-第7節】データで読み取る!J1全18クラブのこれまでの傾向とチームスタイルまとめ

2020.07.30 written by Daichi Kawano(SPLYZA Inc.)

(※アイキャッチ画像にある大量のAJ4はただのモックアップ作品です。)約1ヶ月前より再開したJリーグ。J1は第7節まで日程が進みました。今回は昨年書いた「[2019シーズン第1-8節]データで見るJ1全18クラブの傾向&チームスタイルまとめ」とほぼ同様のフォーマットにて記事の内容を展開して行こうと思います。なお昨シーズンは各試合においてパスマップやボール奪取マップなどを作成するなどかなり時間をかけて分析をしていたのですが、今季はリアルタイムにかいつまんでザッピング観戦こそしているものの、時間がとれずまだ1つの試合をじっくりとフルマッチで観戦はできておりません。逆にこの状況において「スタッツだけでどこまで各クラブの傾向やスタイルを読み取ることができるか?」というチャレンジをしてみます。それでは早速、第7節終了時点の最新の順位表と各ベーシックスタッツを振り返りましょう。

▼第1節-7節までの1試合の平均スタッツ


こちらのスタッツはFBref.comより引用しております。欧州主要リーグとJリーグの違いは何か?という問いもよくありますが、明確な違いは「ボール保持スタイルが必ず上位にくる訳ではない」という点でしょうか。もちろん欧州でも例外はありますが…現状J1で極端な「ボール保持型」とされる横浜F・マリノスや神戸は中位にいます。なお"枠内シュート数"1位であり"与ファウル数"が最も少ない川崎Fが首位に立っていますね。また、スタッツだけみるとほぼ下位グループにるC大阪は5位。"クロス爆撃王"は鹿島。そして"枠内シュート数"だけなら柏と並んで2位タイの清水がボトム3と苦しんでいます。

▼平均スタッツをもとに生成された各クラブのレーダーチャート



先ほどのFBref.comのスタッツを元にレーダーチャートを生成してみました。ちなみに各種スタッツ自体が強さを示すものではないので「グラフが大きければ大きいほど強いorうまくいってる」訳ではないので悪しからず。ちなみに黄色はリーグ平均以上の数値となります。チャート自体が各スタッツの平均値をベースに作成したものなので、リーグ平均は綺麗な8角形になるのですが、ここで最も平均値に近いと言えるのは広島とG大阪ですね。あとは浦和と札幌、仙台と鳥栖はそれぞれ形状が似た傾向にあります。横浜F・マリノスは枠内シュート数こそ少ないですが、チャートからも"フィールドを圧倒してる感"が伝わってきます。FC東京の個性的な形は極端な「ポゼッション率の低さ」と「クロス数の少なさ」から来るものですね。チームの狙いが数値に表れている良い例かと思います。

と、ここまで簡単に各クラブの状況を把握したところで、以降は別のデータサイトから「パス総本数の1試合平均」を指標とし、より詳細に掘り下げていきます。


指標となるスタッツ「パス総本数」とそれを元にした散布図

ここから扱う散布図および各試合のスタッツについてはSofascore.com(データ提供はOpta社)より引用。そして、傾向分析のベースとなる指標としては「パス総本数(1試合平均)」を用います。先にFBrefからの引用した「ボールポゼッション」でも問題は無いのですが、パスを400本弱しか出していなくても保持率50%に達するような試合内容やチーム相性の掛け合わせが存在するため、よりチームスタイルを色濃く出すためにもパスの総アテンプト数(試みた回数)を採用することにしています。後述しますが「ボールポゼッションだと55%だけど、パスの総本数でみるとリーグ平均より少し下」にいる鹿島アントラーズは良い例かもしれません。これらは各チームが保有する選手の能力を示す指標にもなり、1試合でアテンプトするパスが多ければ多いほど、パスをムラなく出せる能力の高い選手がおり、またパスが多く回るスタイルやシステムを意図的に採用していることが数字でも証明できるかと思います。

ちなみに昨シーズンの記事ではなぜか「J1の散布図にチャンピオンズリーグのベスト16のチームを混ぜる」というレベルも大会形式も異なるというなかなかの"混ぜるな危険"を行ってしまい、結果見た目的には面白いけど、実際はJ1のトレンドラインが全然見えない!というやらかしをしておりました。今回はJ1の18クラブのみの散布図になりますので、純粋なデータでもって分析を進めることができるかと思います。また、以降の散布図におけるx軸は固定になりますので、決して近い場所にあるチームが「志向の近いフットボールを展開している!」という訳ではないです。特に中央に位置するチームの場合。"毎試合パスが450本前後"というチームもあれば、"試合によってパス数が300本以上違う"チームもありますので、一概に「特徴がない」とも言い切れないのです。

それでは今回の傾向分析に使用する4つの項目「ロングボール依存度」「デュエル勝利数」「ボール奪取数」「クリア本数」において、それぞれの散布図を元に話を進めていきます。なお散布図についてはサマリーを集計したのが第5節終了時点になっています。

▼パス総本数の1試合平均とロングボール依存度(第1節-5節)


ロングボールもパス本数の中に含まれるスタッツなので散布図にするとほぼ相関関係にあり、ボール保持型のチームはロングボールが少なく、非保持型のチームはロングボールの依存度が高くなる傾向となります。トレンドラインから少し外側にいる湘南はJリーグの平均よりも少し多め、清水は昨シーズンの非保持型から保持型への転換期にあるためか、ロングボールの依存度が8%台と顕著な数字が出ています。なお昨シーズンは大分がかなり外れたところにマッピングされてしまっていたのですが、今季分は"ロングボールの試行回数"から"ロングボール依存度"に変えたのでほぼトレンドライン上に配置されました。

▼パス総本数とデュエル勝利数の1試合平均(第1節-5節)


続いてデュエルに関する項目です。Sofascore(Opta)の定義によると「ボールを保持している相手に対してフィジカルコンタクトを伴うボールの保有権を奪おうとする行為」そして「ボールがどっちつかずの状態でフィジカルコンタクトを伴った上でマイボールにする行為」この2つが定義されており「ボール奪取成功」とは切り離されているようです。なのでこの数値が意味することは「球際の意識」であり「1対1の強さ」であるとも言えるでしょう。個人的に試合のログを普段から計測するにあたり、自分の定義している「デュエル勝利のイベントデータ」との定量データの誤差が最も少ないのがSofascore(Opta)であるため、昨季に引き続き今回もこのデータを採用しています。そしてこれらは地上戦も空中戦も含みます。

なおデュエル勝利数の多いチームには「デュエルに勝利し続けることでボールを保持し大局を優位に進める」というものと、「ひたすらイーブンボールにデュエルする」この2つのパターンが挙げられます。前者で代表的な例は川崎Fと横浜F・マリノスとなります。ボール保持型ながら消耗戦を好み、徹底したショートパスで相手の守備組織を破壊するサッカーを志向していると言えます。また後者としては仙台・浦和・札幌・鹿島が挙げられます。FC東京については「必要以上にボールに食いつかず、ピンポイントでボールを奪う」スタイルと言えるでしょう。大分は保持寄りではあるものの、コンタクト数の少なさが気になることろです。

▼パス総本数とボール奪取数の1試合平均(第1節-5節)


3番目に「ボール奪取」に関する項目です。こちらはインターセプト(コンタクトを伴わない、パスカットなどのインプレー中の守から攻への切り替え)と、タックル成功(ドリブルなどのアクションを起こしている相手へのスライディングタックルなどでのボール奪取成功)の合算値としています。

ボール保持型であればあるほど「相手からボールを奪う」という機会が少なくなるため、デュエル勝利数の散布図よりもパス総本数との相関関係は高くなります。そのためボール非保持型のFC東京・柏・浦和・仙台のボール奪取の数値は高くなっています。FC東京についてはリーグ内でも極端な非保持型でありながら、1試合において最もボールを奪えているチームということで理想的なスタッツかと思います。デュエルの項目でも触れた大分はここでもリーグ最小のスタッツを記録。もちろんチームスタイルにも影響しているとは思いますが、今後も成績が振るわない場合は何か根本的な原因を探る必要も出てくるかもしれません。

▼パス総本数とクリア本数の1試合平均(第1節-5節)


最後にクリアに関する項目です。額面上は「多ければ多いほど押し込まれている時間帯が長く、逆に少ないほど押し込んでいる時間が多い」ということになります。引いている割合が多いと思われるのにも関わらず全てのチームに対応し上位にいるFC東京・浦和については、それらのほとんどを意図的に選択していると言えるでしょう。そして割とパス総本数に相関関係の高い散布図にある中、飛び抜けて高い平均クリア本数を記録している横浜FCは「迷ったらとにかくクリア!」というコンセプトにあり、逆にクリア本数が少ない鹿島は「クリアせずにしっかりつないでいこう!」と徹底されているのではないでしょうか。

それでは、上記の図をもとに各チームの第1節から第7節までの各試合のスタッツと平均値を振り返りながら、これまでの傾向やチームスタイルの練度、第8節以降のおおよその展望を見立てていくことにします。


J1全18クラブのチームスタイルと第8節までの傾向&以降の展望

▼1位 川崎フロンターレ [ボール保持+敵陣制圧+ゲームコントロール型]


ここまで無敗をキープし首位に立っている川崎。スタッツをみても戦い方は一貫しており、平均600本を超えるパスアテンプトの中、毎試合60本前後のデュエルに勝利しているというのはなかなか驚異的な数字であると言えます。またボール奪取に関してもリーグのトレンドラインよりも高い位置にあり、ボールを保持しながらも相手のボールはしっかり奪えていることになります。

■J1第1節-5節 ファイナルサードでのパス成功数ランキング


第5節を終えた時点のサマリーですが、この「ファイナルサード(敵陣の深い位置)」でのパス成功数ランキングにおいて川崎フロンターレから5選手がランクインしているという状況に。川崎Fはチーム単位でも「最も敵陣の深い位置でパスを成功させているチーム」となっています。左右のサイドバックが両名入っているのは興味深いですね。もちろん懸念材料が全く無いかといわれればそうでも無く、これからの本格的な暑さと連戦による、主力選手の筋肉系の怪我は少し怖いかもしれません。ただ川崎はリーグ屈指の選手層を誇るチームですし、現状のローテーションの中でも「どの選手が出場してもチームスタイルは大きく変わっていない」というのはかなりの強みでしょう。

**

▼2位 ガンバ大阪 [バランス+環境適応型]


昨シーズン序盤はリーグ最多失点で下位グループスタートとなっていましたが今季は現在2位。ここまで1試合での最多失点は名古屋戦の2失点。トータルでの失点数も僅か7失点と守備面でも上場の滑り出しと言えます。また昨シーズンは試合によってはパスアテンプトが400本以上も変動することもあり、相手に合わせすぎて自らのバランスを崩し敗戦する傾向にもありましたが、今季は保持型の横浜FM・清水・神戸に対し、パスを300~400本の間で対応し見事勝利。初戦の"クリア47本"はあまりみない数字で現時点のリーグレコードとなっており、特に守備陣への負荷が高い試合となったようですが、中断明けからは守備の数字もバランスよくなっているようです。そこまでロングボールに頼るわけでもなく、パス500本を超えた大分戦と広島戦を挟み現在4連勝中。相性の良い相手との戦いが続いているのかもしれませんが、今後の酷暑の連戦を想定しても理想的な戦い方ができていると思います。

■アデミウソンのキャリア通算ゴール via webSportiva


個人的に注目しているアデミウソン選手。今季は5試合(うち4試合先発)に出場し2ゴール1アシスト。2ゴールという数字自体はチーム内得点王タイではあるものの、直近2試合はベンチ入りもなくここまで平均出場時間は59分、"ストライカー"という視点で個人スタッツをみてもそこまで際立った数値は残せていませんが、今後の連戦の中で大仕事をやってのける場面がきっと出てくると思います。

**

▼3位 名古屋グランパス [バランス+環境適応型]


昨シーズン序盤は「平均600本前後のパスアテンプト+リーグ2位の平均デュエル数」を誇る、リーグ屈指のオラオラ系スタイルで首位を突っ走っていましたが、シーズン途中の監督交代からチームの方針を大きく方向転換。ここまで"極端なボール保持型"のチームと対戦していないので何とも言えないところではありますが、より保持色の強い清水・C大阪にはパス300本台で対応しともに勝利。非保持の仙台・鳥栖に対してはパス500本以上を記録するなど柔軟性の高さが見受けられます。開幕戦で記録したデュエル93本はもともと球際に強い選手が揃っている証拠とも言えますが、再開後は50本前後に落ち着いています。現在、川崎と同様に無敗を継続中でかつリーグ最小失点の4失点、今後の連戦を考えてもそこまで大崩れはしないものと予想します。更なるボール非保持スタイルへの変換期であったとしても、日本の夏を乗り切るには最適な戦い方を選択していると言えるでしょう。

**

▼4位 FC東京 [ボール非保持+撤退+ロングカウンター型]


昨シーズンは最後の最後で惜しくもリーグ優勝を逃してしまいましたが、今季は更にFC東京スタイルに磨きがかかっています。リーグ屈指の"ボール非保持"スタイルもさることながら、それに相反するクリア本数の少なさは守備ブロックの精度の高さを示しています。そしてリーグトップとなるボール奪取数を記録しているのは非保持型の究極系。FBrefのスタッツをみても被ファウル+オフサイド+タックル勝利数が2位ということで「締めるとことでしっかり締めて、ここぞ!というタイミングで奪う」「オフェンスルートは最短距離で一気に仕留める!」という非常に効率の良い戦い方を実践できています。特にパス200本台(!)で1-3で勝利した横浜FM戦はその型が顕著に表れた試合かと。直近2試合はドローが続いているとは言え、夏場にもってこいのスタイルとも言えますね。

■レアンドロ+D・オリヴェイラ+アダイウトンの3選手がJリーグで挙げた全ゴール詳細 via webSportiva


初戦の清水戦こそブラジル人アタッキングトリオ全員がゴールして勝利しましたが、中断明けからは攻撃にウエイトを置くことにより大きくバランスを崩す(守備陣への負荷分散?)ためか、この3選手の同時起用という場面は少なくなっているようです。もっと見たいのに!と思っていたら札幌戦では外国人選手が5人スタメンに並ぶなどの大胆な采配も。連戦を想定してのものかと思いますが、個人的には昨シーズンからずっとFC東京の非保持スタイルの行き着く先(ネオソリボール化)が気になりまくっているので、今後も長谷川監督の采配に注目したいです。

**

▼5位 セレッソ大阪 [バランス+ほどほど対応型]


ロティーナ体制も板につき、昨シーズンよりも更に「スタッツからは何も読み取れない」かなりミステリアスなチームとなっています。ここにはデータはありませんが平均スプリント数も相当少ない部類ですし、先述したFBrefのレーダーチャートも小さめ。昨季序盤は広島戦でボールを持たされてパスを800本以上もつないだ挙句敗戦するという試合もありましたが、今季は対戦相手にもそこまで流されず、よりバランス感が保たれている印象です。

■J1第1節-6節 GK貢献度ランキング(パス成功数/セーブ数/パンチング数)


第6節までのサマリーですが、ゴールキーパーのスタッツを見ると自陣でボールを多く繋ぐスタイルである大分の高木選手、極端なボール保持型である神戸の飯倉選手と横浜FMの梶川選手にほぼパス成功数が同数でC大阪のキムジンヒョン選手が上位にランクインしています。現時点でC大阪がパス平均が500本ちょっとという点からも、より自陣でのボール保持スタイルが強くなっているとも言えるでしょう。

**

▼6位 浦和レッズ [ボール非保持+武闘派+迎撃型]


昨シーズン序盤はボール保持も中央寄りのバランス型でしたが、今季はボール非保持度合い+ボール奪取数+ロングボール依存度がリーグ3位、デュエル勝利数+クリア本数の平均はリーグ2位と、大槻監督のルックスよろしくかなりの武闘派集団な仕上がりに。ボールを持たずに済んだパス400本以下の試合(湘南・横浜FM・鹿島・横浜FC)は今のところ負けなし。逆にパス500本前後を記録した3試合のうち、FC東京・柏との2戦では敗戦とボール非保持型のチームにみられがちな傾向にあります。負けた試合が2試合とも複数失点、得失点差がマイナスになっているのは今後の懸念材料かもしれませんが、現状上位グループに位置すること、またチームとしての狙いが徹底されていることは好材料。武闘派チームあるあるの「夏場の連戦で気づいたら野戦病院に!」状態さえ回避できれば、今後も上位を維持することは可能でしょう。

**

▼7位 柏レイソル [ボール非保持+カウンター型]


平均パス数が常に400本台ということで相対的にみて"非保持型"とカテゴライズしましたが、どのチームを相手にしてもそこまでスタッツに大きく変動がないことから「決して相手の土俵でゲームを進行させない」という特徴が見受けられますので、どちらかといえば試合中、状況によっては保持側に回る"バランス型"寄りと言えます。再開直後に3連敗したのち3連勝。スタッツを見る限りは非保持型のチームを相手にするのが得意なのかもしれません。そしてFBrefのスタッツ上では1試合平均でのボール奪取数が14.43本とリーグトップ。デュエル勝利数やクリア本数がトレンドラインよりも低いことからも、ボールを持っていないときの特徴としてはFC東京に似ているとも言えます。

■J1第1節でのシュート数ランキング上位3選手 via webSportiva


こちらは第1節終了時点のサマリーですが、第7節終了時点だとオルンガ選手がシュート数24本(ゴール数8)で、ゴールコンバージョンは33.3%と驚異的な数字を記録しています。次いで江坂選手が10本、神谷選手が9本、呉屋選手とクリスティアーノ選手(出場は開幕戦の1試合のみ)が8本、と現状はクリスティアーノ選手が復帰するまでは「戦術オルンガ」で引っ張り、オルンガ選手の調子次第でどうにでもなるとも言えます。とはいえ優秀なアタッカーは揃っていますし、FW陣のこのスタッツで枠内シュートがリーグ2位(得点数18もリーグ2位)というのはオフェンスの局面でかなり効率よく攻めることができているのでしょう。クリスティアーノ選手が戻ってきていよいよ完全体となるのか!?引き続き柏には注目していきたいと思います。

**

▼8位 コンサドーレ札幌 [バランス+ほどほど対応型]


ボール保持型でも非保持型でもない札幌ですが、デュエル本数は昨シーズンに比べて少し多めになっています。開幕6戦は全てパス本数400本台、直近の横浜FM戦は相手に主導権を明け渡しての勝利と柔軟性の高さも見受けられます。昨シーズン序盤はある試合では大勝、ある試合では大敗と安定さを欠くイメージでしたが今季はより安定路線に。開幕戦こそ柏に4ゴールを許しましたが、再開後は無敗をキープ。リーグ3位タイとなる得点力も今後の好材料となりそうです。スタイル的には大崩れする様子はないので、地道に勝ち星を積み上げていけばより上位に進出することもできるでしょう。

**

▼9位 ヴィッセル神戸 [ボール保持+ローテンポ+ゲームコントロール型]


開幕から3試合はパス本数が700本以上ありましたが、6節にかけて徐々に500本台へ。直近のG大阪戦では700本近くのパスを繋ぐも敗戦。ここまで2勝、挙げたゴール数も僅か6得点となかなか上位進出の糸口が見えてこない神戸。チームスタイル自体は昨シーズン序盤と大きくは変わらないものの、圧倒的なボール保持に対しての枠内シュートの少なさは気になるところです。ロングパスの少なさやクリア本数の少なさは最終ラインからの繋ぎの賜物とも言えますが、ビッグチャンスの創出がなかなかできていないのではないかと察します。

■J1第1節-3節 パス成功数(率)ランキング


こちらは3節までのサマリーとなり、神戸からはTOP15に実に6選手がランクイン。第7節までで見るとパス成功本数1位は大崎選手の609本、2位は山口選手の489本と神戸の選手がワンツーを決めているのですが、3位の横浜FM畠中選手(パス成功数は481本)が6試合フル出場で平均タッチ数96.7回のところ、大崎選手は7試合フル出場で平均タッチ数103.4回と、神戸のパス本数自体が減りつつあることからもボール回しの重心もだいぶ低くなってしまっているのではないでしょうか。これは今季のプレミアリーグでも起きた「オフェンシブルートが無くいたずらにファンダイクのパス成功数が増え続ける(ダイクはリーグ1位となるシーズン2791本を記録)」という"ファンダイク・エフェクト"(今勝手に名付けた)と似た現象かもしれません。というわけで神戸、むやみやたらにデュエルをする必要がないスタイルで夏場の連戦に適性こそあるものの、まずは枠内シュートを増やすための策をまずは見い出して欲しいところです。

**

▼10位 サンフレッチェ広島 [ボール非保持型]


昨シーズン序盤は上位スタートを切りましたが、今シーズンは第7節を終えて10位。開幕2連勝以降勝ち星なしと苦戦が続いています。昨シーズンと比べると少しバランスに欠き、同シーズンでパス200本台と600本台を記録しているのは現時点で広島のみ。苦手なチームが続いているとも言えますが、FBrefのスタッツをみてもとりわけ目立った数字もなく中位に止まっており、今季のJ1で最も特徴が見出せないチームかもしれません。あくまで「スタッツを見る限り」の話ですが。ただ失点数の少なさはリーグ2位タイであることと、チームスタイル的に消耗戦を好むタイプではなさそうなので、夏場の連戦をうまく乗り切ることができれば一筋の光明が差すかも。

**

▼11位 横浜F・マリノス [ボール保持+ハイテンポ型]


どうしたんだ!ディフェンディングチャンピオン!と言いたいところですが昨シーズンもスタートは出遅れたものの後半で一気に巻き返し優勝を決めた横浜F・マリノス。極端な保持型ではありますが神戸と大きく異なるのがテンポの速さ。ここまでクリア本数が少ない中、14失点もしているチームは他にありません。要は守備の準備ができていない状況でやられている訳です。昨シーズン序盤もクリア数5本で札幌に0-3で敗戦していましたが、今季もFC東京にクリア数7本ながら1-3で敗れています。ここに対する問題への処方箋を見出すのは急務でしょう。選手補強などで解決するものでも無いとは思いますが。また枠内シュート数も極端に少ないように感じますが、実はこちらのスタッツも昨季とほぼ変わってないのです。以下のインフォグラフィックをご覧ください。

■J1 2019 トップスコアラーのシュート内訳(総シュート本数/枠内シュート数/ゴール数/PK成功本数)


こちらを見る限り、上位2選手(横浜FMの仲川選手とマルコス・ジュニオール選手)のシュート数は(枠内シュート含め)他のスコアラーと比べ極端に少ないのです。つまり、決めるべき場面でしっかり得点を挙げていました。今季も平均枠内シュート数に対して12ゴールは悪くない数字であるといえるでしょう。しかしやはり、それを上回る失点数を記録しているのは厳しい現状です。昨季はそこまでやり方を変えずに結果が出たという側面もありますが、今シーズンは何せずっと過密日程。このノーガード戦法がいつまで通用するのか。いくらスロースターターとはいえ、だいぶ心配です。

**

▼12位 大分トリニータ [ボール保持+低重心+ロングカウンター型]


昨季はシーズン序盤から「低い重心でのボール回し+相手を引きつけてのロングカウンター」で相手を刺しまくって上位にいましたが、今季はちょっと苦戦中。直近も3連敗となかなか浮上のきっかけをつかめていません。昨シーズンとの大きな違いはパス本数の平均アテンプトが600本近くから500本ちょっとまで減っていること。その分ロングボールの割合は増えているのですが、デュエル勝利数も平均60本→44本まで減ってしまっており、インテンシティの低さが気になるところ。ボール奪取の数値に関してはリーグ最下位。得失点差-4も保持型のチームとしては少し難しい出だしになったと言えます。

■J1第1節-2節 GKパス成功数(率)+セーブ数ランキング


こちらは第2節のサマリーですが、第7節を終えても高木選手はパス成功数226本で(全GKの中で)リーグ1位。ロングパスを選択することが多いためかパス成功率こそ77.4%ですが、セーブ数26本とパンチング数6回もリーグ1位。CBの鈴木選手もパス成功数462本でリーグ5位+シュートブロック8回(リーグ2位タイ)と、最終ラインの選手で何とか保てているという状況。J1リーグ2年目の難しさもあるとは思いますが、今季は降格がない分、思い切って色々と試してみるのも手かもしれません。あとは高木選手の引き抜きだけはなんとしてでも阻止しなければならないでしょう。

**

▼13位 ベガルタ仙台 [ボール非保持+武闘型]


今季はまだ1勝のみに留まっている仙台。ボール保持については500本をこえた試合が1試合もなく、FBrefのポゼッション率もワースト2位の42%台ということで"非保持型"と言えるでしょう。ただしデュエル勝利数はリーグトップ。にも関わらずイーブンボールを制したあとに自分たちの攻撃の形が作れていないのは課題として挙げられそうです。ただクロス本数とインターセプト数は2位なので、負傷中の選手のカムバック等をきっかけに浮上する可能性は十分ありそう。仙台にはとにかく「戦える」選手は揃っているので、素材を生かしつつ少しずつでも勝ち星を積み上げていける策を木山監督には練って欲しいものです。

**

▼14位 横浜FC [バランス+撤退型]


13年ぶりのJ1復帰となった横浜FC。リーグ最多の16失点はもはや折り込み済みなのかもしれません。押し込まれてもいさぎよくクリアを繰り返し、リーグトップとなる平均クリア本数21.7本を記録。だからといって非保持型という訳でもなく、7試合中4試合はパス本数550本以上。デュエル勝利数やボール奪取数、ロングボール依存度をみてもトレンドラインからは大きくかけはなれていない所からも「攻める時はじっくりと、守備は潔く撤退」というコンセプトにあるのかなとも思います。

■J1第1節-4節 守備貢献度ランキング(DF)


4節終了時点でこのランキング10位に入っていた駒大出身の星キョーワン選手、まだまだ荒削りなところもありますが個人的にかなり注目しています。今季唯一の勝利を収めた柏戦ではオルンガ選手とマッチアップし完封。リーグ戦再開後は6戦連続で先発出場し、第7節終了時点でもシュートブロック8本、タックルとインターセプトが計22本、クリア本数は26本(リーグ10位)と、大卒1年目のCBとしてはなかなかの出来ではないでしょうか。今後も彼を追いかけたいと思います。

なお、星選手の出身校でもある矢板中央高校でゴリゴリ使われている映像分析アプリがこちら!↓↓↓(PR)

※SPLYZA Teamsはチームスポーツ向けの映像分析アプリです。共有された映像に全員でタグ付け、書き込みの編集が可能です。チーム・個人の反省点、改善点を全員で編集する事で、それぞれの考えを確認しながら、チームとしての改善点を共有することができるツールです。

https://products.splyza.com/teams/

**

▼15位 サガン鳥栖 [ボール非保持型]


ここまで唯一未勝利となってしまっている鳥栖。鳥栖はデュエルとボール奪取がリーグ平均より少し低い(インターセプト自体は多いほう)くらい。クリア本数をみても言うほど押し込まれてもいない。失点も6とむしろめっちゃ守備堅いほう…と思ったら得点が2ゴールのみ。咋シーズンは第8節を終えた時点で1ゴールのみだったので何も悲観的になる必要はないと思います。バランスを崩してでもゴールを積極的に狙いに行きましょう!(去年も同じことを書いてた)。勝利時のサンプルが1つでもあればポジティブなことも書けたのですが…ただ「今季の川崎相手に唯一ドローに持ち込んだチーム」というのは誇って良いでしょう。

**

▼16位 湘南ベルマーレ [ボール非保持型]


ボール非保持という点ではFC東京に近しい傾向にありますが、湘南はデュエル数の多さからより"オープン志向"であると言えます。昨季と比べてパス500本超えの試合が2試合ありますので「しっかり攻める時間帯をつくって大事に攻めよう」というコンセプトもあるのかもしれません。パス300本台となった鹿島戦で1勝はできているので、やはり非保持に振り切ったほうが勝ち筋がみえてくるのは湘南らしさでもあると思います。ただ元々消耗戦を好むチームなので、今年の夏の連戦をいかに怪我人なく乗り切れるかが勝負になってくるかも。

**

▼17位 鹿島アントラーズ [バランス+オープン攻撃型]


昨年は非保持寄りのバランス型でしたが、今季はグッとボール保持寄りに舵を切っているようです。クリア本数が大きくトレンドラインから離れているのもその証拠で、できるだけ丁寧につないで前に運ぼうという狙いがあるのかも。その割にはロングボールもかなり活用しているのですが…。なお、唯一勝利した横浜FM戦はパス本数200本台で勝利。これはたまたまかもしれませんが、やはり今までのやり方が勝手が良いというのはあると思います。おそらくザーゴ監督によるチームスタイル転換期の途中であり、今季は降格もないので、新スタイルの浸透までじっくり時間をかけてみても面白いのかなと思います。

**

▼18位 清水エスパルス [バランス+ハイテンポ型]


クラモフスキー監督1年目の清水。こちらも鹿島と同じく、非保持→保持スタイルの転換期にあると言えるでしょう。パス本数が500本を超えた試合は7試合中5試合。特にロングボール依存度が8%台というのはこの平均パス本数にあるチームでは異質であるといえます。あえてロングボールを選択しないことで本来起こり得ない事故も多発しているかもしれませんが、今は我慢の時だと思います。FBrefのスタッツをみても枠内シュート平均5.57本はリーグ2位タイ。ただ同じ本数を放っている柏は18ゴールで清水は9ゴール。リーグでも2番目に多い15失点も含め、改善すべきポイントは多そうです。これは横浜FMの抱える問題と同様の構造かもしれませんが、清水に関しては平均クリア本数が多いため、より深刻であるのは明確。とはいえ今季は色々と試せるシーズンなので、若手の積極起用や新スタイルの確立は引き続き実践し続けて欲しいものです。


まとめ

以上、ろくに試合も観ていないのに偉そうに講釈を垂れてみましたが、昨年の同時期の数字比較ができたこと、またTwitterでちょこちょこサマリー情報のインフォグラフィックをツイートし、各チームのサポーターの皆さんから情報収集していたのである程度は網羅できたかなと思っています。もちろん当てずっぽで書いている部分もあるので「まるで違うよ!」というツッコミなどあれば、当記事のURLも添えてツイートいただけると泣いて喜びます。リーグ戦もまたいつ中断になるかわからないという状況下ではありますが、今季も試合が続く限り、みなさんと一緒に、引き続きJリーグを楽しんでいこうと思います!

プロフィール:河野大地 (Daichi Kawano) デザイナー/アナリスト

宮崎県出身。約10年の広告制作会社勤務ののち、長年趣味で行なっていた映像編集技術やデータ分析、インフォグラフィックに関するスキルを買われスポーツテック業界へ2018年に転籍。現在は株式会社SPLYZAにて試合映像分析アプリの開発・運用にUI設計&デザイナーとして携わる。4児の父。

Twitter
facebook

おすすめの分析入門記事

よく読まれている記事

facebook

twitter