【選手の成長を促す環境とは?】スポーツ指導における「質問」と「尋問」
2021.08.03 written by Sho Sasaki(SPLYZA Inc.)
今回はスポーツ指導者や教育者の方がよく耳にする「質問」というテーマで、選手や学生の成長をいかに促していけるか。そのような視点で考え方を整理していきたいと思います。
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3つの質問の方法
今回のテーマでまず理解しておきたい内容としては、質問には「3つの方法」があるということです。内容としては…
①:YES or NO で解答できる質問
②:選択肢を複数与えて解答できる質問
③:相手の思考を促す質問
上記の3つが挙げられます。例えばトレーニング中に選手に対して質問するという想定であれば、①の場合は「今のプレーは良かった?」となり、③は「今のプレーはどうすれば良かったと思う?」という風になります。
また、普段の何気ない会話の中にも多くの質問が散りばめられています。例えば「今日は何か良い事あった?」と質問する人もいれば、「今日は良かった事、何があった?」と質問する人もいるでしょう。一見同じ質問をしているようにも聞こえますが、この2つの質問による「相手の思考力の成長を促す質問はどれか?」と言われれば後者が当てはまります。要は、質問は”変化”や”気付き”を与えたい(質問する)相手のために行うものだということです。
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質問の効果
ちょっとしたゲームをしましょう。下記写真を3秒だけみて、スクロールして写真を見えない状態にしてみてください。
問題です。今見た写真の中に「黄色に関係するモノ」には何があったでしょうか?
わからなかった方はもう一度、写真を見返してみてください。答えられた方はきっと「黄色」というキーファクターが頭の中に入ってきているからこそ、自ら考え進んで黄色を見つけ出す作業を行なっていたのでしょう。このような形と類似した質問を、映像を用いてスポーツの現場でも応用してもらいたいと思います。
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選手の成長ステージを見極める
質問を行うことによって選手の成長ステージを3つに段階的に考えることも出来ます。これは自主性・主体性についての内容とも関連することでもあります。
■自主性と主体性の違いとは?
https://www.sportsanalyticslab.com/column/subjectivity.html
質問をすることによって「選手の思考」と「選手の行動」が受動的なのか能動的なのか、それらをよく観察することで見えてくる成長のステージが明確になります。そして、上記を整理すると自主性と主体性の違いが明らかになるのです。
①依存状態(受動×受動) → ②自主(受動×能動) → ③主体(能動×能動)
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質問と尋問の違い
一方で質問をしているようで実は尋問を行なってしまっている場面というのも少なくありません。ここで「質問」と「尋問」の違いについて整理しておくことにします。
[尋問]…「どうして?なぜ?」というネガティブな問いに対して「~だから」という選手のネガティブな言い訳を生み出しやすい。(他者ベクトル)
[質問]…「どのようにすれば~?」というポジティブな問いに対して「例えば~する」という選手のポジティブなアイデアや思考を生み出しやすい。(自分ベクトル)
監督と選手、先生と学生、仲間同士など信頼関係はパフォーマンスに大きく寄与するもので
すが、ネガティブな尋問を繰り返される関係と、ポジティブな質問を繰り返される関係を比較するとハイパフォーマンスを出しやすい関係性は一目瞭然ではないでしょうか?
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スポーツ心理学の考え方
スポーツ心理学ではここまで述べた内容について、次のように考えられています。
「結果の質は関係性の質から生まれる=関係性の質→思考の質→行動の質→結果の質」
指導現場や教育現場にて、「結果が伴わないのは行動していないから」という言葉を耳にした事があるかもしれませんが、そもそも行動を伴う為の思考が追いついていないのか、それ以前にネガティブな尋問ばかりを繰り返している結果、良好な関係性を築けていない事が根底に原因があるのかもしれません。
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このように選手や学生たちとの関係性を「質問」を通して良好に築きつつ、考える力(思考力)を養うことで己の行動を見つめ直す事ができ、結果として成長や成果を得る事ができる好循環に入っていくことが可能になるのです。是非、少しずつで良いので実践してみてください。
プロフィール:佐々木翔 (Sho Sasaki)
福岡県福岡市出身。大学在学中に高校の外部指導者として活動をスタート。その後、バルセロナの育成哲学を普及していくサッカースクールを筆頭に、ドルトムントサッカーアカデミー、Jリーグクラブアカデミーなど複数クラブでの指導経験を持つ。生まれ育った福岡を中心として、九州エリアのスポーツ文化を更に発展させていくべく日々楽しみながら活動をしている。