
【ウインターカップ2018】第71回全国高等学校バスケットボール選手権大会マッチレポート:準決勝 桜丘高校 vs 福岡第一
2019.04.05 written by SPLYZAの中の人
ウインターカップ2018の準決勝2試合と決勝、3位決定戦の計4試合の分析をしました。今回は2018年12月28日(金)に行われたウインターカップ準決勝のマッチレポートです。
1回戦から準々決勝の4試合で平均39点を叩き出し、会場を魅了する富永選手(#7)。彼中心のオフェンスを展開し、1つ1つキッチリ勝ち上がってきた桜丘高校。対してインターハイでは世代別代表に主力が召集され、早期敗退と涙を飲んだ福岡第一高校は今大会、優勝候補筆頭。ここまで全て20点差をつけた福岡第一が優勢か。それとも、富永選手(#7)が大暴れし勝利を手にするのか。ウインターカップ2018で最も注目された試合となりました。
※この記事はSPLYZA Teamsのタグ付け機能から割り出されたデータをもとに構成されています。
▼両チームの重要スタッツ比較(4factor/ポゼッション/PPP/シュート成功率)
▼両チームの得点推移とベーシックスタッツ
この試合、前半を2点差つけて桜丘リードで折り返しました。しかし3Q途中から福岡第一の仕掛けにより連続で得点を重ね、後半は24-57と福岡第一がWスコアで圧倒。点差を裏付けるようにほとんどのスタッツで福岡第一が桜丘を上回っています。富永選手(#7)と藤田選手(#8)の2人の力で、3PとFTに関してわずかに桜丘が上回りましたが、スタッツを見ると総合的なチーム力では福岡第一が上回っています。最終的なeFG%で福岡第一が上回っているのは、後半相手にまともにシュートを打たせなかったディフェンスと、そのディフェンスからの速攻でイージーバスケットを展開し、2Pを確率よく多く決めたからです。やはり純粋なシュート力においては桜丘に分があったと考えられます。
▼両チーム登録メンバーとランキング(★:スターティングメンバー)
留学生2人を擁した両チーム。平均身長では3cm福岡第一が上回りました。ちなみに今大会のベスト4の4チームは、留学生2人をメンバー登録しています。その4チームの平均身長は183cm。福岡第一はこの中では平均に最も近かったです。
まず目が行くのは桜丘高校のトップのオレンジです。富永選手(#7)の前半の活躍ぶりを象徴しています。純粋な3Pでは桜丘の方が上回っていたと言えそうです。福岡第一の主な得点はゴール付近で生まれたことが分かりますが、福岡第一の両サイドコーナーからの3Pも見逃せません。実際この3Pはワイドオープンで打てていました。スペースをうまく使えていたことが見えてきます。
以上は、SPLYZA
Teamsを使用し、両チームの全ての攻撃における[局面開始形式][局面終了][シューター][シュートエリア][シュート詳細][アシスト情報][リバウンド情報]をタグ付けし、算出したスタッツです。
また、この記事におけるポゼッションの算出方法は、OFFリバウンド獲得で得たオフェンスも1回と見なしています。(計算式=フィールドゴール試投数+フリースロー 試投数*0.44+TO)
バスケットボールにおいて重要とされている【4Factors】という4指標があります。まだ日本ではあまりメジャーではありません。ぜひこちらをご参考ください。
→「NBAでお馴染みのFour
FactorsをBリーグデータで算出し統計をとって5段階にランク付けしてみた」
●スタッツ用語一覧
2P:2ポイントシュート 3P:3ポイントシュート FT:フリースロー REB:リバウンド合計 DRB:ディフェンスリバウンド ORB:オフェンスリバウンド BLK:ブロックショット AST:アシスト Potential
AST:シュートが成功したらアシストになっていたパス TO:ターンオーバー Live TO:プレーが中断しないターンオーバー POSS.:攻撃回数 PPP:1回の攻撃あたりの得点(Points Per
Possession) eFG%:3Pの価値を2Pの1.5倍として算出したシュートの効率性(Effective Field
Goal) TO%:1回の攻撃でTOする確率 DRB%:ディフェンスリバウンド獲得率 ORB%:オフェンスリバウンド獲得率 TRB%:合計リバウンド獲得率 FTR:フリースロー 獲得率
マッチレビュー
今大会大活躍している富永選手(#7)率いる桜丘高校と、優勝候補筆頭の福岡第一高校がぶつかる今大会屈指の注目の一戦となりました。
〈前半〉~富永選手(#7)中心に機能した桜丘~
福岡第一が安定した守備と、ゴール近くでのスティーブ選手(#60)と松崎選手(#24)の得点で、開始5分で18-8と2桁点差をつけました。しかし富永選手(#7)が徐々に調子を上げていき、福岡第一のハードなディフェンスの上回るオフェンスで得点を重ねてきました。終わってみれば、3P7本を含む31得点です。桜丘全体でも富永選手(#7)に集中したディフェンスの隙を見逃さず、素晴らしいオフェンスを展開しました。1Qでのチーム5連続3P成功は凄いの一言です。
しかしここまでシュートが入っても、桜丘は48-46と福岡第一に2点差しかつけることができませんでした。数字を見ると4factorのeFG%以外は全て福岡第一が上回っています。ここから福岡第一は「確実にDEFリバウンドを取り攻撃権を確保。TOでボールを失わずにシュートに繋げる。シュートが外れたうちの1/3はOFFリバウンドを取り攻撃権を渡さずにシュートに繋ぎ、得点を重ねた。」と考えられます。逆に桜丘は「高確率でシュートを決め効率のオフェンスを展開した」と考えることができます。
〈後半〉~威力抜群のDEFで流れをものにした福岡第一~
開始早々、桜丘はセットオフェンスでリバス選手(#10)に良い状態で持たせ相手のファウルをもらい3点プレーを決めました。5点差にし最高のスタートを切りましたが、ここから福岡第一がディフェンスで仕掛けます。福岡第一は相手のポゼッションになったと同時に、オールコートでプレスをかけ、桜丘に圧力をかけます。この試合ではオールコートのトライアングルツー状態でした。河村選手(#8)、小川選手(#46)が先頭切って相手にプレッシャーを与えます。桜丘はボール運びの時点でTOを重ねます。リバス選手(#10)が中継しボールを運べてもすでにペースが崩され、判断ミスが続き3Qだけで8つのLive
TOを記録しました。もちろんLive TOは相手にそのまま速攻を献上することになります。
また福岡第一は、桜丘の富永選手(#7)には常にボールを持たせないようにディナイし、かつボールを持たれた瞬間Wチームを仕掛け封じ込めていました。前半だったらその瞬間にフリーの味方がシュートを決めていたのですが、3Qはシュートがほとんど入りません。3Qだけで22点もひっくり返された桜丘は57-77で4Qを迎えることとなりました。
4Qも福岡第一はディフェンスの手を緩めずプレッシャーをかけ続けました。3Qで作った流れは4Q残3:46
65-95になり、福岡第一が主力をベンチに下げるまで変わることはありませんでした。桜丘も最後まで気持ちを見せました。しかし少ないプレータイムを全力でプレーする福岡第一のベンチメンバーも高いパフォーマンスを見せ、72-103で試合終了を迎えました。
~福岡第一のプレスをちょっぴり解説~
前述でも少し触れましたが、後半のオールコートでのプレスはオールコートのトライアングルツーでした。フロントコートではマンツーマンでしたので、意図した配置だったかは分かりません。まず河村選手(#8)、小川選手(#46)の2人がFTライン付近にポジションをとります。どちらかボールに近い方が相手ボールマンにプレッシャーを与えます。ボールに遠い選手は周りの様子を見ながら少し距離をとりスペースを潰し、相手のドライブやパスに対応する準備をします。トライアングルの真ん中はスティーブ選手(#60)です。桜丘のリバス選手(#10)が中継するために、バックコートに上がっていましたがそこに付いていくことはなく、ハーフコート付近にポジションを取っていました。
両サイドに松崎選手(#24)と古橋選手(#10)です。3Pラインより外で待機しています。相手がドリブルでハーフラインを超えてくるのを見計らって飛び出し、コフィンコーナーでプレッシャーをかけるプレーも見られました。「全力でプレッシャーをかけるとき」と「牽制しスペースを潰し、ボールを止めさせて考えさせるとき」の使い分けを徹底していました。そしてフロントコートまで運ばれた後のローテーションも見事です。TOを誘うハイリスク・ハイリターンなプレスではなく、流れを変化させるためのあまりリスクを負わないプレスでした。
〈まとめ〉
福岡第一のブレない強さが光った試合となりました。前半の会場の雰囲気や流れは桜丘のモノにしていましたが福岡第一の前半の出来も素晴らしかったです。スタッツを見ると、前半で2桁得点者が3人もいました。
1. #24 松崎 13点(2P:8点/3P:3点/FT:2点)
2. #60 スティーブ 12点(2P:10点/FT:2点)
3. #10 古橋 11点(2P:2点/3P:9点)
また試合を通してゴールにアタックし続けたことも安定して得点できた要因です。そして福岡第一は何よりもディフェンスの良さが際立ちました。3Qのプレスだけでなく、個々の堅実なディフェンスは素晴らしいものであったと言えます。我慢強く守り、なるべくタフショットを打たせようとしていました。他にもブロックやスティールが目立ちましたが、それを狙ったギャンブル性は皆無。映像から感じた堅実さはブロックとTOとリバウンドの数字に結果として出ていた形です。
桜丘は前半は富永選手(#7)にボールが回りシュートも入りましたが、後半は富永に満足にボールを回せずにいました。福岡第一のレベルに対して一度崩れたリズムを立て直すのは容易ではなく、富永選手(#7)も執拗なマークで体力を削られてしまい、後半は流れを変える一発を沈めることが出来ませんでした。
プロフィール:SPLYZAの中の人
SPLYZA広報担当。日々SNSの更新やメールマガジンの作成、お客様のカスタマーサポートなどを行なっています。元バスケ指導者(AC)&アナリストの経験を活かし、コンスタントにバスケットボールの魅力を発信し競技人口を増やしていくことを目標に頑張り中。何かお困りの事が御座いましたらいつでもご相談&お問い合わせください。
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