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【インフォグラフィックで見る】CL決勝での過去20年間のゴール&18-19ファイナルで対戦する両チームのプレビュー

2019.05.24 written by Daichi Kawano

欧州におけるフットボール・マネーゲームの肥大化は、今シーズンのチャンピオンズリーグの決勝とヨーロッパリーグの決勝で顔を合わせる4チーム全てが同国のクラブという事態を招きました。勿論、今回はたまたまかもしれませんが。ただ、更に資金が特定のクラブに集まるような計画立案があることからも、この傾向は今後もより顕著になっていくことでしょう。チャンピオンズリーグにおいてそれが起ったのは1999-2000のレアル・マドリードvsバレンシアに始まります。3年後、今度はイタリアでユベントスがACミランと対戦しました。2007-08には今回と同様にイングランド同士のクラブが、そしてバイエルン・ミュンヘンは2012-13に同じドイツのボルシア・ドルトムントと、2013-14と2015-16にはマドリードという同じ都市からファイナリストが出ています。もはやチャンピオンズリーグにおいて同国クラブの対決は真新しいものではありません。

ただ、今シーズンはその"持たざるものが抗えないルール"に対して揺り戻しに当たるような話題もありました。若手中心で挑み見事準決勝進出を果たしたオランダの雄、アヤックス・アムステルダムです。レギュレーション上、エールディビジのチャンピオンと次点のクラブは、欧州CLの予備予選からの戦いを余儀なくされており、アヤックスも例外なく予備予選2回戦でオーストリアのシュトゥルム・グラーツ、3回戦でベルギーのスタンダール・リエージュ、そして本選出場をかけてウクライナのディナモ・キエフと決して楽ではない相手を下して本戦にエントリー、CL史上初の「予備予選からの準決勝進出」を成し遂げました。紙一重のところで決勝進出を逃した若者達は、今シーズンオフには主力の大量放出が見込まれておりチーム自体もリビルド必須の状況ではあるものの、きっとまたこの晴れ舞台に「プラン・クライフ」の下で育った優秀な選手達を引き連れ、奇跡のチームとして戻ってきてくれることでしょう。

さて、日本時間で2019年6月1日(土)の深夜、明けて日曜日の明朝4:00より、エスタディオ(ワンダ)・メトロポリターノにてキックオフとなるUEFAチャンピオンズリーグ18-19決勝。下馬評では優勝候補筆頭のバルセロナに土をつけて勢いに乗るクロップ・リバプール優勢との専らの噂ですが、相手は国内絶対王者マンチェスター・シティと、伏兵アヤックスとの激闘を制したポチェッティーノ・スパーズです。ただクロップもただでは転びません。1年前の雪辱から学び、アップグレードを必要としていた2つのポジションに、今シーズンPFAプレイヤーオブザイヤーを獲得したフィルジル・ファン・ダイクと、国内リーグでもクリーンシートを連発したアリソン・ベッカーという強力な選手を迎え入れました。ここでビッグイヤーを逃そうものなら、リバプールの失意は相当なものでしょう。逆にスパーズは失うものは何もなく、国内リーグでは何度も対戦し手の内を知り尽くした間柄。揚々と"厄介な挑戦者"として立ちはだかるに違いありません。

それでは今回のCL決勝の見立てを行う前に、この大会の決勝戦の歴史を簡単におさらいすることにしましょう。この記事では最初に過去のチャンピオンズリーグにおける優勝チームと、過去20年間におけるCL決勝でのゴールに関するトピックに触れていきます。


過去のチャンピオンズリーグ決勝を振り返る


▼1955-56(ヨーロピアン・チャンピオン・クラブズ・カップ時代)から2017-18までの歴代優勝チーム

1990年代後半以降はボスマン判決の影響もあり、戦力の均衡が崩れ優勝チームの多様性が失われつつありますが、1993までの各国リーグのチャンピオンのみの「いきなり!ノックアウト方式!」で戦っていた時代は実にカップウィナーがバリエーションに富んでいて面白いです。古豪であり未だ強豪クラブでもあるセルティックやフェイエノールト、現在は国内リーグ2部に留まっているノッティンガム・フォレストやハンブルガーSVに加えて、東欧の名門ステアウア・ブカレスト(現FC FCSB/ルーマニア)やセルビアのレッドスター・ベオグラード(ツルヴェナ・ズヴェズダ)などなど。中でもこの群雄割拠の時代において3連覇を果たしているアヤックスとバイエルン・ミュンヘンの存在感は強烈ですね。

なお今回の決勝はプレミアリーグ勢対決ということで、CLの歴史上は2007-08シーズンのマンチェスター・ユナイテッドvsチェルシー以来、史上2回目となっています。イングランドのクラブがチャンピオンになることは確定している訳ですが、過去を振り返るとイングランドのクラブで連覇しているのはノッティンガム・フォレストとリバプールの2チームのみ(前身のヨーロピアン・チャンピオン・クラブズ・カップ時代ですが)なんですね。トッテナムはクラブの歴史上初のCL決勝進出&ビッグイヤー獲得を目論む形となっています。マンチェスター・シティにリーグ優勝を譲ったばかりのリバプールは当然のことながら、丁度1年前にレアル・マドリードの前に屈した試合の再挑戦権を得た訳ですので、クロップ監督としても是が非でも優勝カップを天に掲げたいことでしょう。


▼歴代でビッグイヤーを3回以上獲得したクラブ一覧

ビッグイヤーを永久保持しているのは現在レアル・マドリード、アヤックス、バイエルン、ACミラン、リバプール、バルセロナの6クラブのみ。なお当大会において「大会3連覇、または5回の優勝」という難易度SSS級の条件を達成すると永久保持が認められます。リバプールは6月頭の決勝戦に勝つことで通算6度目の大耳獲得となり、名目上はバイエルン・ミュンヘンとバルセロナという2つのFCBよりも格上のクラブという扱いに。なお最も決勝で敗れているのがユベントスの6回、次点でバイエルンの5回となっています。国内リーグにおいてはユベントスは前人未到の8連覇、バイエルンも7連覇を達成していますので、そろそろヨーロッパのタイトルが欲しいところでしょう。このイタリアとドイツの王者に関してはオフシーズンの監督の去就にも注目です。どうなる、ニコ・コバチ…


▼過去20年間(1999-2018)のCLファイナルでの61ゴール - 局面開始の詳細

こちらは補足が必要ですが、あくまでゴールシーンの局面開始になるので例えば「FKから」の場合でもゴール付近のFKからヘッドで合わせたものも、自陣でFKのリスタートからパスを多く繋いでビルドアップから得点したものも含みます。今回は「CL決勝のような緊迫した試合では、極端にセットプレー絡みの得点が多いのでは?」と思いデータを採りましたが、実際はそうでも無かったです。ただ傾向としては直近10年間でかなり「インプレー中の得点」が増えていることは確かです。直近10年間とそれ以前では、かなりセットプレー絡みの得点比率が変わってきているようです。

PKでの得点も多い印象でしたが実際は4つのゴールしか該当しませんでした。過去20年間でCL決勝においてPKで得点を決めたのはメンディエタ、エッフェンベルク、ギュンドアン、CR7の4名のみ。シャビ・アロンソはヂダに止められたPKのリバウンドを詰めて得点決めてましたね。なおCLの舞台(決勝に限らず)で最もPKを蹴っているのはCR7の18本(成功15本)、次にメッシの14本(成功11本)、ファン・ニステルローイの13本(成功9本)となっています。ソースはこちら


▼過去20年間(1999-2018)のCLファイナルでの得点 - ゴールになったシュートの座標位置

おまけ程度ですが、こんなものも作ってみました。レアル・マドリードとバルセロナのシュートレンジの広さに目が行きますね。このスペインの2クラブに関しては実際に映像でみてもゴールバリエーションが多彩でした。最も離れた地点から放たれたシュートが16-17決勝のカゼミーロと、17-18決勝のベイル(カリウスのポロリもありましたが…)になります。改めて20年分の映像を確認しましたが、2003-04のモウリーニョ率いたポルトのデコとアレニチェフのカウンターからの得点は、当時のセンセーショナルな記憶が鮮明に蘇りました。2009-10のインテルのミリートの2得点も良かったなぁ。。こちらもモウリーニョが監督でしたね。なんだか選出が地味ですいません…

それでは最後に、来週末に行われる決勝であいまみえる両チームのこれまでの闘いぶりと、今シーズンのCLの振り返りおよびファイナルの展望、プレビューを。


18-19ファイナルにおける両チームの展望


▼トッテナム・ホットスパー - GLから準決勝までの出場選手&得点者

(デザインの尺の関係でチームにはもう居ないムサ・デンベレが入っておりません。)スパーズは怪我人が続出する中、手持ちのカードのみでやりくりし結果を出した監督には脱帽としか言いようがありません。グループリーグではケインが、シティ戦ではソンが、そしてアヤックス戦ではルーカス・モウラがしっかり仕事をやってのけましたが、これも「現有戦力で行くぞ!」と腹を括った監督と選手との信頼関係そのものが現れています。特にシティ戦での采配、試合中のフォーメーション変更を経てムサ・シソコとワニアマの中盤2枚からシソコ怪我→まさかのデレ・アリをその位置に置くという強気の采配には痺れました。ただオーリエとウィンクスは怪我の影響で当日の出場は厳しい見込みで、フェルトンゲン、ケイン、サンチェスの3名も決勝に間に合うかは定かではないため、どうやりくりするかは今季補強0でEPL4位以内確保&CL決勝に到達してしまったポチェッティーノという名将および有能なバックヤードスタッフの皆さんにかかっていると言えるでしょう。


▼リバプール - GLから準決勝までの出場選手&得点者

こちらの赤いチームも「役者がしっかり仕事をする」という印象です。前線3枚のタレントに注目しがちですが、誰が出てもクオリティが落ちない中盤の層の厚さはどのチームも羨むことでしょう。CLにおいては攻守のカギを握るアリソンとマネが皆勤賞なのもポイントが高いです。なおナビ・ケイタが負傷で決勝に間に合わず、ファイナルへの出場が不確定なのがフィルミーノとロバートソンとなっていますが、おそらく用意できる限りのフルメンバーで臨んでくることでしょう。試合自体もプレッシングの強度比べになるのは間違いないので、フィルミーノのコンディションが万全であれば、リバプールが優勢であることに変わりはないかと思います。あとはあのバルセロナとの準決勝2ndLegでうまれたクイックCKを呼び込んだリバプール分析班のロールにも期待です。既に対策をし尽くした相手かもしれませんが、飛び道具の1つや2つ仕込んでおいてくれることを期待します。


▼CL決勝トーナメントを改めて振り返る

この図にはGLの成績はありませんが、スパーズもリバプールもグループリーグでの成績はまさに深淵に臨んで薄氷を踏むが如し。前者はインテルと、後者はナポリとGL最終節が終わった段階で勝ち点も得失点差も同じ。直接対決で上回ったというギリギリの2位通過で決勝T進出となりました。やはりベスト8にイングランド勢が4チーム残ったのが今回の振り返りポイントでしょうか。個人的には国内リーグではボロボロだったシャルケが、まさかのノックアウトステージに進んだところでシティに蜂の巣にされ、ブンデスリーガでも降格圏から脱せず失意のままテデスコが解任されたことが気の毒でなりませんでした。シャルケ自体は残留できて良かったんですが。というわけでドメニコ・テデスコさん、是非ともジュビロ磐田で夢を叶えないか…。


▼チャンピオンズリーグ18-19での両チームのスタッツ(数字は12試合での合計値)

スパーズとリバプールの過去の対戦成績やポチェッティーノとクロップの相性みたいなやつは他所で散々やる(やってる)筈なのでここでは割愛します。でもって今回はWhoScored.comからスタッツを引用したのですが、1試合平均で出すと両チームほとんど差がなかったためトータルの数値を掲載してみました。なお以前にアップした記事「データで見るJ1全18クラブの傾向&チームスタイルまとめ」の中で今季CLのスタッツをもとにベスト16チームの傾向も割り出しているのですが、この2チームは本当に特徴が似通っているというか、特別保持型という訳でもないけどボールを保持できる能力の高い選手を有していて、かつデュエルも強くオープンな戦いにも適応できる。相手に持たせて奪ってカウンターも上手い。あとは怪我やローテーションなどで誰が出てきても活躍できたり、先にも述べたグループリーグをギリギリで通過したというところまで似通っています。

当サイトで扱っているロシアW杯の記事「データで見る2018ロシアW杯 各国のボール保持力・奪取力マップの可視化」や、年始の高校選手権の記事「第97回全国高校サッカー選手権大会:スタッツから見るベスト8チームの特徴」でも言及していますが、ノックアウト形式の大会では1点特化型のチームよりも、相手に合わせて柔軟に対応できるバランスのとれたチーム…つまり状況に応じてオフェンスであれば高い位置でのボール保持(ハイポゼッション)、ウインガーをアイソレーションさせてオフェンスを行うプログレッション、相手の低い位置からのビルドアップに対してのハイプレッシング、あとは自陣に引き篭もってのリトリートブロック(これはスパーズに分がありそうですが)。この4つに無理なくアジャストできるこの2チームが決勝まで進出してきたのは、偶然では無かったのかもしれません。じゃあカラバオカップとFAカップを制したマンチェスター・シティはどう説明すんねんって話ですが、あのチームは別格というか例外ということで…。


まとめ


レギュラーシーズンが終わってからCL決勝が行われるまでにかなり時間が空くことから、試合自体の強度、インテンシティは多少落ちるでしょう。ちなみにこの"インテンシティ"という言葉自体を因数分解するとすれば、オープンな展開により多くのデュエルが発生し、ボールのリリースポイント(タイミング)も速いため、表現がこれで合っているかは判りませんが「匕首(ドス)の刺し合い」のような、観ていて非常にダイナミックでスリリングな展開になることは間違い無いでしょう。暴力vs暴力というか、物理vs物理みたいなわかりやすい試合になること請け合いです。傾向的には私の肌感ですが、パスのトータルアテンプト(総本数)も両チーム400本後半くらいで落ち着くはず。このような試合展開においては得てして得点の出入りが激しいノーガードの殴り合いになるか、もしくはウノゼロ勝負になるものと予想されます。

なんだか胡散臭い占い師みたいな締めになってしまっていますが、準決勝2ndLegで2日連続でビッグ・サプライズを起こしたこの両チームですから、チンタラチンタラとビルドアップをしようとしてはミス…ビルドアップをしようとしてはミス…みたいな、朝方の2度寝コースみたいな試合にはならないことでしょう。「こんな入り方で90分持つのか?」という熱い展開に期待せざるを得ません!個人的にどちらのチームに肩入れしているとかそういうのは今のところありませんが、6/1が待ち遠しくて夜も眠れない日々が当分続きそうですね。ワクワクしながら当日を迎えようと思います。

プロフィール:河野大地 (Daichi Kawano) デザイナー/アナリスト

宮崎県出身。約10年の広告制作会社勤務ののち、長年趣味で行なっていた映像編集技術やデータ分析、インフォグラフィックに関するスキルを買われスポーツテック業界へ2018年に転籍。現在は株式会社SPLYZAにて試合映像分析アプリの開発・運用にUI設計&デザイナーとして携わる。4児の父。

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