第97回全国高校サッカー選手権大会:スタッツから見るベスト8チームの特徴

2019.01.28 written by Gaku Morita(SPLYZA Inc.)

青森山田高校の優勝で幕を下ろした第97回全国高校サッカー選手権大会。全47試合が行われた本大会ですが、準々決勝からの7試合について、ロングパス、タテパス、ドリブル、クロス、シュートを「前進するプレー」として集計してきました。今回はその集計から、ベスト8に進出したチームのデータを比較してそれぞれの特徴を見てみます。


▼使用したデータ(複数試合を行ったチームは、平均値を使って比較)


▼ロングパス


▼タテパス


▼ドリブル


▼クロス


▼シュート


・ロングパスが最も多かったのは瀬戸内。流通経済大との試合でロングボールを多用しており、それが影響して最も高い数字となりました。
・タテパスが最も多かったのは帝京長岡。タテパス数は秋田商業の約7倍の数字で、本大会でもパスをつなぐチームとして活躍しました。
・ドリブルが最も多かったのは青森山田。両サイドのドリブラーが積極的に仕掛けてゴールを狙うサッカーが印象的なチームでした。
・クロスが最も多かったのは日本航空。瀬戸内との試合では、サイドに侵入し、クロスから猛攻を仕掛けていました。
・シュートが最も多かったのは流通経済大柏(平均した値が17.3)。瀬戸内との試合で猛攻を仕掛けていたのがこの数字に反映されています。


▼「前進するプレー」の合計


・最も「前進するプレー」が多かったのは帝京長岡。ゴールへ向かって行く上で、最も細かくプレーしていたチームと言えます。一方、秋田商業は、最もシンプルにゴールに向かっていたチームと言えそうです。


次に、ゾーン1、ゾーン2、ゾーン3のプレー比率を、それぞれのチームで並べてみます。



・相手陣地のゾーン3でのプレー比率は日本航空が最も高かったです。猛烈なプレッシングにより相手陣地でボールを奪い、相手ゴールに迫るシーンが試合の中で数多く見られました。
・中盤のゾーン2でのプレー比率は帝京長岡が最も高かったです。中盤のパス回しにより相手を崩すことにトライし続けていたことが数字に表れています。
・自陣のゾーン1でのプレー比率は瀬戸内が最も高かったです。流通経済大柏との試合では、自陣に押し込まれながも、パスをつないでビルドアップにトライしていたことがこの数字に表れています。

このデータからプレー位置平均を算出すると以下のようになります。



日本航空が最も相手陣地側で、瀬戸内が最も自陣側でプレーしていたことが見えてきます。


最後に「前進するプレー」「プレーの位置平均」のそれぞれ偏差をまとめると以下のような散布図が描けます。



複雑にプレーをするチームは、ボールを扱う時間が長くなるので、ポゼッション率は高くなります。なので「ボール保持型」のチームと言えるでしょう。その逆で、シンプルにプレーするチームは「ボール非保持型」と言えます。高い位置でプレーするためには、相手陣地でボールを奪うことが求められるので、「ハイプレス型」と解釈できます。一方で低い位置からプレーするチームは自陣でしっかり守る「ブロック型」として分類できます。

以上が、準々決勝から先の7試合を集計した結果から見えるそれぞれのチームの特徴です。優勝した青森山田はどちらかというと「ボール保持型」「ハイプレス型」ですが、8チームのちょうど中間くらいに位置しており、バランスのとれたチームと言えそうです。


これらのデータはSPLYZATeamsを使って、前進するプレー(ロングパス、タテパス、ドリブル、クロス、シュート)と、プレーが起きた位置、プレイヤーにタグをつけ、その集計されました。(セットプレーと、クリアボールなど、味方に通す意図が汲み取れないプレーは集計されていません)


【第97回全国高校サッカー選手権大会マッチレポート関連記事】
スタッツから見るベスト8チームの特徴
決勝:青森山田 vs 流通経済大柏
準決勝:尚志 vs 青森山田
準決勝:瀬戸内 vs 流通経済大柏
準々決勝:秋田商業 vs 流通経済大柏
準々決勝:尚志 vs 帝京長岡
準々決勝:瀬戸内 vs 日本航空
準々決勝:青森山田 vs 矢板中央



プロフィール:森田岳 (Gaku Morita) 分析エバンジェリスト

自動車業界出身で社会人サッカーチームの運営/監督/選手経験を持つ。サッカーに関するスタッツ・客観的なデータをこよなく愛し、戦術ボードアプリ「Tactical Board」の開発者でもある。尊敬する指導者はマヌエル・ペジェグリーニ。

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