第24回全国高等学校選抜ラグビーフットボール大会 マッチレポート - 決勝:桐蔭学園 vs 東福岡

2023.05.16 written by Yohei Yamamoto

選抜大会決勝は東西の名門校同士の熱い戦いとなりました。前半、東福岡は持ち前のボールを大きく動かすスタイルと、デザインされたセットプレーからのアタックにより、2TRYを先制します。対する桐蔭学園は、粘り強いDFの接点からミスを誘い、ビハインドで折り返しますが、徐々にペースを握り始めます。後半はボールを終始桐蔭学園が保持し、得点を重ね、34-19で見事優勝を果たしました。

スタッツレポート: 桐蔭学園 vs 東福岡





チーム分析: 桐蔭学園

桐蔭学園のスタッツを見ると、概ね準決勝とスタイルは変わらず、大会を通じて、相手によって変えない普遍的なラグビーを展開していました。ラック数93回、キック1ラック比3.88との数値から、ボールを保持し、継続ラグビーをおこなっていました。ラックパス比は1.41と準決勝から少し下がりましたが、よりシンプルなコンタクトで優位に立ちたい思惑があったと推測できます。キックを見ると、その数は準決勝から2本増えて24本でした。おおよそ同数でしたが、ハイパントの数が5本と増加しており、エリアの取り方に工夫が見られました。



ゲームプランとして、保持する中で無理せず中盤からコンテストキックを蹴ることを考えていたように思います。また、強力な東福岡のランナーを走らせないために、オープンキックを減らし、自由なスペースを与えないことに成功していました。スコアを見ると、ターンオーバー起点が2つあり、DFからATへの切り替えに強さが見られました。平均TRYフェーズは5.25、準決勝5.45と、やはりボールを保持し自分たちのスタイルで取りきる決定力の高さも伺えました。

チーム分析: 東福岡

対する東福岡は、アタック時間が減少し、パス回数、ラック数とも準決勝から低下しました。ラックエリアを見ると、ブラックゾーン(敵陣22m~ゴールライン)が4回と敵陣深くでのプレーができず、苦しい展開でした。パス、ラックの数自体は減少していましたが、キックラック2.60(準決2.33)ラックパス3.08(準決2.57)と増加しており、よりボールを横に動かし、屈指のランナー達にボールを持たせ、スペースを与えたい考えが見受けられました。

数少ないアタック時間の中で、自分たちのスタイルを遂行する姿勢が感じられました。キック数は大きく減り15本(準決24本)で、自分たちのアタック時間を増やし、ペースを持ち込みたかったと推測できます。実際に、アタッキングキックが1本(準決5本)となり、確実にボールをプロテクトしていました。中盤ではハイパントも見られましたが、準決勝から減り、アンストラクチャーでのカウンターラックも、堅い桐蔭学園の壁に阻まれ、不発に終わりました。

スコアからは、平均TRYフェーズ2.33、準決勝2.42と少ないフェーズでのTRYが目立ちました。決勝では、スクラム、ラインアウトからデザインされたサインプレーも特徴的でした。






まとめ

両チームとも、そのスタッツから、素晴らしい最高峰の戦いを見せてくれました。桐蔭学園は大会を通じて一貫した「継続ラグビー」を披露し、決勝の地でもラック数を延ばし、フィジカルで勝る展開でした。自分たちの強みを前面に押し出し、「相手より速く・前に」を徹底的に行える基礎力の高さに驚かされました。東福岡も、世代屈指のランナーや高校生離れしたスキルフルな選手がそろい、広いワイドアタックを展開しましたが、マイボールの時間帯が減少し、取りきるところに苦戦していました。キック数を減らし、パス比率、ラック比率を向上させてきたところからは、対桐蔭学園対策が見られましたが、その牙城を崩すことはできませんでした。

今大会は桐蔭学園の優勝で幕を閉じましたが、夏の7人制、冬の花園ではどのチームが勝ち上がるのでしょうか。楽しみです!



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プロフィール:山本陽平 (Yohei Yamamoto)

2000年生まれ神戸市出身。現在は奈良教育大学在籍中。高校からラグビーをはじめ、現在はプレイヤー・コーチ・アナリスト・ラグビー普及活動と多岐に渡る。ラグビーの素晴らしさをもっと広めたいと考えながら日々活動中。