第24回全国高等学校選抜ラグビーフットボール大会 マッチレポート - 準決勝:桐蔭学園 vs 国学院栃木

2023.05.16 written by Yohei Yamamoto

準決勝第1試合は、関東屈指の実力校同士の一戦になりました。試合は、前半から桐蔭学園の強力FWが躍動し、ボールを保持し続けるアタックで試合を運びます。対する國學院栃木は、自陣・中盤からコンテストキックを多用し、アンストラクチャーDFからプレッシャーをかけるDFスタイルで対抗しました。スコアは、桐蔭学園の縦への突破が何度も見られ、FW、BK合わせて7トライをあげ、圧倒。國學院栃木は後半27分にゴール前からFW一体となり、ラックサイドを付く攻撃で1トライを獲得しますが、桐蔭学園のアタックを止めることができずに敗戦しました。

スタッツレポート: 桐蔭学園 vs 国学院栃木





チーム分析: 桐蔭学園

桐蔭学園の特徴として、圧倒的ラック数が挙げられます。その数は脅威の86回であり、対戦相手の國學院栃木は29回、第二試合の勝者東福岡は56回と、その数の多さが分かります。



ラック数は「ボールポゼッション」を象徴するスタッツであり、強いパワフルなFW中心に「継続ラグビー」を展開していました。さらに、ラック:パス=1:1.65で準決勝4チーム中最も低い割合でした。このことから、9shapeを中心に、強いFW、縦のBKを活かし、ボールを前に前に運ぶ傾向が見受けられます。また、キック数は22本と4チーム比較でも突出した数値ではなく、レッドゾーン(自陣ゴールライン~22mインサイド)ではエリアを挽回する、堅実なラグビースタイルであると言えます。

しかし堅実なだけでは無く、チャンスに対しては一気に運べるスキルの高さが見られます。その例として、オフロードパスが18回は4チーム最多で、継続しながら細かなスキルパスでDFラインを何度も突破しました。



セットプレーも安定し、ラインアウトは14/14と100%の保持率であり、多彩なデザインされたアタックにつながっていました。

チーム分析: 国学院栃木

國學院栃木は、ハイパントキックが4チームNo.1の11本を記録しています。これは、ボールを手放し、コンテストキックを蹴ることでイーブンの状況を生み出し、自チームのペースに持ち込む狙いがあったと推測します。



キッキングゾーン(自陣22メートルライン~ハーフウェイ)では、ハイパントとロングキックを使い分け(19本)、テリトリー重視、DFで優位に立ちたいと考えていたことが読み取れます。キックの数は21本、キック:ラック=1:1.38の数値からも、テリトリー・DFプレッシャー重視思考であることが分かります。さらに、連続フェーズ回数は後半27分まで4回でしたが、ゴール前アタックは重量FWでのラックサイドアタックによりフェーズを7回重ね、トライを獲得しました。ラインアウト成功率は5/7の71%であり、4/5がラインアウト0オプションを使い、ボールを動かすことよりマイボールの獲得を優先した傾向が見られました。






まとめ

両チームのスタッツから、「ポゼッションアタック重視」である桐蔭学園と、「コンテストキック主体のDF重視」である國學院栃木の構図であることが読み取れました。國學院栃木の戦い方は、準々決勝から大きく変えていることから、桐蔭学園対策であることも推測でき、スキルフルな場面が多く見受けられました。桐蔭学園は、ボールをミスなく保持し続け、60分間着実に前にボールを運べる凄まじいフィジカルを武器に決勝進出を決めました。



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プロフィール:山本陽平 (Yohei Yamamoto)

2000年生まれ神戸市出身。現在は奈良教育大学在籍中。高校からラグビーをはじめ、現在はプレイヤー・コーチ・アナリスト・ラグビー普及活動と多岐に渡る。ラグビーの素晴らしさをもっと広めたいと考えながら日々活動中。