第24回全国高等学校選抜ラグビーフットボール大会 マッチレポート - 準決勝:東福岡 vs 常翔学園

2023.05.16 written by Yohei Yamamoto

第2試合は昨年度花園王者東福岡と関西唯一ベスト4常翔学園との一戦になりました。両チームとも高校生離れしたハンドリングスキルを見せ、ボールが縦にも横にも動く展開となりました。東福岡は伝統のグラウンドを広く使うワイドアタックを披露し、コンテストキックでのカウンターラック、アンストラクチャーアタックでペースをにぎります。

対する常翔学園は、集中したセットプレーアタックで、FWBK一体となったアタックを見せました。スコアは東福岡が多彩な攻撃から7トライ、ペナルティーゴール3本を決め、着実にスコアを重ねました。常翔学園は前半セットプレーを起点に3トライをあげましたが、後半に突き放され敗戦しました。

スタッツレポート: 東福岡 vs 常翔学園





チーム分析: 東福岡

東福岡の特徴として、4チームNo.1のパス回数144回が挙げられます。エッジからエッジへのワイドアタックが特徴で、FWの選手でも長短のパスを自由自在に操ります。パスの中でも、スイヴェルパス(9shape FWからバックドアのBKへ繋ぐパス)が11回と他のチームには見られない意図したアタックが見受けられます。



ラック:パス=1:2.57と10shapeを中心とした、ボールを横に広く動かすスタイルです。キック:ラック=1:2.33の数値から、EXITを確実に、中盤ではハイパント・ロングキックを使い、テリトリーとポゼッションをバランス良く展開していました。キックの特徴としては、敵陣に入ってからのアタッキングキックが4本見られ、DFの裏側へのチップ、グラバーキックや、アドバンテージ下でのエッジへのキックパスも象徴的です。まさにボールを縦だけでなく横に大きく動かす、攻撃的スタイルでした。さらに、カウンターラックでのターンオーバー数が13回と、コンテストキック後やエッジでの相手キャリアーの孤立に対してプレッシャーをかけるDFスタイルが炸裂していました。

チーム分析: 常翔学園

常翔学園は圧倒的キックの少なさが特徴でした。キック数は4本であり、敵陣に入ったハーフウェイからは0本で、レッドゾーンEXITのみにロングキックを使用していました。



そのため、キック:ラック=1:6.25と4チームで最も大きく、ボールを保持しながら自チームに流れを呼び込みたい狙いがあったと推測できます。



トライは3本奪いましたが、いずれもセットプレーから1フェーズであり、セットプレーからの集中力の高さが伺えます。ラック:パス=1:3.16であり、東福岡同様に10shape中心とした、ボールを動かし、チャンスを生み出す攻撃的なアタックスタイルと言えます。ラインアウト成功率が42%とプレッシャーを受けてしまい、得点が伸びなかった要因の一つです。






まとめ

両チームとも、第一試合と異なり、ボールを動かすスタイルで、「パス回数」「ターンオーバー」が増える展開でした。東福岡は、ポゼッションとテリトリーの「バランス型」であり、常翔学園はキックを減らした「ポゼッションアタック重視」でした。常翔学園は、アンストラクチャーアタックを得意とする東福岡対策として、ボールを渡さないことを対策としておこなっていたと推測できます。東福岡は、「キック」「パス」「ラン」全て個人個人の卓越したスキルの高さを見せつけ、見事決勝進出を決めました。



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プロフィール:山本陽平 (Yohei Yamamoto)

2000年生まれ神戸市出身。現在は奈良教育大学在籍中。高校からラグビーをはじめ、現在はプレイヤー・コーチ・アナリスト・ラグビー普及活動と多岐に渡る。ラグビーの素晴らしさをもっと広めたいと考えながら日々活動中。