【DFBポカール 2018-19】2回戦 - ライプツィヒ × ホッフェンハイム Vol.3「ホッフェンハイムの攻撃の起点」センターバックからのロングパスを検証

2018.11.14 written by Daichi Kawano(SPLYZA Inc.)

※この記事はSPLYZA Teamsのタグ付け機能から割り出されたデータをもとに構成されています。


ここまで2回に渡ってライプツィヒにフォーカスして分析を行ったが、対戦相手となったホッフェンハイムの方にも焦点を当てたい。ユリアン・ナーゲルスマン率いるホッフェンハイムに関しては特に「バックドア戦術」や「対角線のロングパス」の実行頻度が高いとされているが、この試合でも多く見受けられたスリーセンターバックからの中長距離のパス(直線や対角線含む)に注目して分析していく。おまけとして、成功したパスのパッキングレートも算出してみた。



#22 ケヴィン・フォクト

中長距離のパス 0/5(成功率0%)

・10:39 フォクト→シャライ(失敗)
・11:25 フォクト→ベルフォディル(失敗)
・33:00 フォクト→ベルフォディル(失敗)
・70:19 フォクト→ベルフォディル(失敗)
・86:57 フォクト→ネルソン(失敗)

【パッキングレート算出】
・該当なし

ホッフェンハイムのタッチダウンパス戦術の生命線、いわば舵取り役となりチームの顔でもあるフォクトだが、この試合でのロングパスの成功率は5本中5本全て失敗に終わり0%。ショートパスについては成功数42本(成功率95%)となったが、うち37本は左右の味方へのセーフティーなパスとなったため、オフェンスの起点となったパスをフォクトはこの試合で1本も供給できていないことになる。肝心の対角線のパス自体も70分に右の大外に張り出していたベルフォディルへの1本のみとなった。




#4 エルミン・ビチャクチッチ

中長距離のパス 3/4(成功率75%)

・00:21 ビチャクチッチ→ベルフォディル(成功)
・07:29 ビチャクチッチ→シャライ(成功)
・18:31 ビチャクチッチ→クラマリッチ(失敗)
・30:37 ビチャクチッチ→シャライ(成功)

【パッキングレート算出】
・00:21 6×0.2=1.2pt
・07:29 4×0.2=0.8pt
・30:37 7×0.2=1.4pt
★レート合計:3.4pt

ビチャクチッチから供給されたロングパスは成功率こそ良い数字だが、全て縦方向であり、レシーバーとなったシャライやベルフォディルは前を向けず、ゴールに背を向けた状態でパスを受け、なんとかそこから展開を試みたがうまくはいかなかった。それゆえ、ビチャクチッチは成功する確率の高い中長距離のパスをかなり選んで蹴っていたことが見えてくる。チャレンジは少なく、結果として効果的なものは得られていない。なお彼は後半の早い段階で途中交代となっている。




#4 カシム・アダムス

中長距離のパス 1/8(成功率13%)

・19:31 アダムス→シャライ(失敗)
・25:15 アダムス→ブレネト(失敗)
・37:36 アダムス→ベルフォディル(失敗)
・41:52 アダムス→ビッテンコート(失敗)
・79:51 アダムス→ジョエリントン(成功)
・80:59 アダムス→ジョエリントン(失敗)
・85:58 アダムス→ネルソン(失敗)
・87:45 アダムス→シュルツ(失敗)

【パッキングレート算出】
・79:51 3×0.2=0.6pt
★レート合計:0.6pt

センターバック3人のうち、最もアグレッシブに中長距離のパスを躊躇いもなくチャレンジしていたのがこのカシム・アダムスである。前半は縦方向、後半は対角線気味とはっきりとした狙いの違いが見て取れるため、監督からの指示を忠実に実行していることが伺える。ここには明記されていないがミドルサードの深い位置からファイナルサードへのグラウンダーのロングスルーパスも2本あり、うち1本は右ウイングの選手に繋がりチャンスとなった。トライの多さによる失敗こそ目立つが、戦術上はあくまでそこまで見越しての上だろう。アダムスに関してはショートパスの成功率がなんと100%(全38本のうちうち前方への成功本数は12本にも及ぶ)であることからも、この3名の中では最も戦術実行力と貢献度は高いと言える。残念ながら、結果にはつながらなかったが。

総評として、パッキングレートを算出しても判ったことだが、映像で振り返ってみてもホッフェンハイムの選手はミドル~ロングパスをレシーブしてそのまま前を向くことが1度として無かった。それはライプツィヒの守備が非常にコンパクトで、あえてパスを供給する最終ラインの選手を浮かせて、レシーバーとなる前線の選手の周囲のパス供給先を完全に防いだことが大きく影響している。ラングニック率いるライプツィヒはこの試合で見事にホッフェンハイムのホットラインを断ち切ることに成功し、試合を通してピンチというピンチは作らせなかった。今季リーグ戦でも全チームにおいて最少失点となっているが、それがフロックではないことを証明する結果となった。


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