【ラグビーワールドカップ特集】過去2大会におけるラグビー日本代表を分析 - 第2弾:Kick in fieldにおける変化
2023.08.17 written by Yohei Yamamoto
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第二弾の今回は、2015年・2019年の日本代表における、キックの使い方や種類をSPLYZA
Teamsを使用し、分析・考察を行っていきます。最近のラグビーにおけるkickは、前進するための要素と同時に、得点に直結するようなアタッキングキックが増えており、分析において、必須の項目です。
1. 大会におけるキック数
まず、下記に2大会のすべてのキック数(Kick in field=試合におけるin play時に起きたキック)の合計をみてみます。
2019年では、2015年比較で約1.4倍のキック数になっています。これはアタックの考え方が異なっていることの表れになっています。ボールを保持し続け、FW・BKが縦にアタックを展開していた2015年と、ボールをワイドに動かしながら、フィールドのどこからでも多彩なkickオプションを持っていた2019年との違いだと言えます。
ただ、2大会ともに共通していることとして、対戦相手によってキックの数にばらつきがあることがあげられます。事前のスカウティングによる相手チームの特徴や自チームとの相性などを考慮し、試合ごとにキッキングプランが変わっていたことが分かります。ボールを保持しながら継続するスタイルと言われた2015年ですが、ジャイアントキリングを達成した南アフリカ戦では26回のキックを繰り出し、世界を驚かせました。
2. 大会別にみるキックの種類
次に、キックの種類についても見ていきます。
【Long kick】
long kickについては、2015年が少し多いですが、2大会とも自陣側では確実にEXITしようとする傾向が見られました。long kickについて試合ごとに少し詳しく見ると
long kick後に、タッチラインに達して、プレーが途切れた場合をtouch、long kick後に、ボールがフィールドに残り、プレーが継続された場合をNO-touchと記しています。
long kickに関しても大会によって、普遍的ではなく、対戦相手によって変えていることが分かります。サモア・ロシア相手には、積極的なNO-touchを蹴り、in
play時間を長くしたい狙いがあったと感じます。また、アンストラクチャーのアタックに脅威があるスコットランド・アイルランドに対しては、確実にプレーを切り、ラインアウトからのプレッシャーで優位に立つ狙いがあったと推測します。
long kick一つをみても、このような大きな違いが見つけられました。
【High punt】
一番の大きな2015年2019年との違いに「high punt」は見逃せません。データをみると、2015年は0回、2019年は17回と明らかな変化が分かります。
中盤や自陣から、オープン側へのhigh puntと、9番からのbox high puntを使い分け、エリア取りとボールの再獲得、DFからのプレッシャーを考えていたことが分かりました。他のチームでもhigh
puntは増加しており、この大会の象徴的な戦術であったと感じます。
【9番kick】
また、9番からのキックが増えていることも特徴です。2015年はボールを保持しながら自分たちで継続するスタイルで、9番からのキックはデータ上でも目立っていませんが、2019年ではhigh
puntをはじめとして、9long、9chipを使い分け、DF背後へのプレッシャーをかけていました。
データをみると、9番からのすべてのキック合計は2015年8回、2019年18回であり、9番に求められるスキルが2015年から変化していることも読み取れます。
3. まとめ
今回は、2大会でのkickの使い方をみてきました。2019年では、2015年比較でキック数が1.4倍、新たに「high
punt」によるプレッシャーをかけていること、9番を絡めたキックオプションが増えたこと、などが見られました。
しかしながら、キックに関しては対戦相手によることが多いことも分かり、大会での一貫性ではなく、試合での一貫性を大切にしているように見受けられました。また、キックをあまり使わない試合ではどのスタッツが増えているのか、どこで強みをもち、勝負していたのかなども考えてみるとさらに深くJAPANラグビーが見えてくるように感じました。
2023年大会では、試合ごとにどのようなキッキングプランで挑むのか注目です!
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プロフィール:山本陽平 (Yohei Yamamoto)
2000年生まれ神戸市出身。現在は奈良教育大学在籍中。高校からラグビーをはじめ、現在はプレイヤー・コーチ・アナリスト・ラグビー普及活動と多岐に渡る。ラグビーの素晴らしさをもっと広めたいと考えながら日々活動中。