
【ラグビーW杯2023】今大会のラグビー日本代表総評
2023.11.01 written by Yohei Yamamoto
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ラグビーワールドカップ2023フランス大会が10月29日に閉幕しました。決勝は2連覇を狙う南アフリカとラグビー王国ニュージーランドの戦いとなり、結果南アフリカが勝利し見事2連覇を達成しました。
SPLYZAでは、今大会において、日本戦の戦いぶりを4試合記事にしてまいりました。今回は、前回大会、前々回大会や他チームとのデータを比較し、今大会の日本チームの狙いや特徴をまとめていきます。
1. アタックにおける3大会変化
1-1. パス
上記の図は3大会の予選プール全4試合における、1試合平均パス回数です。データから日本は今大会、3大会中で最もパス回数が少なく、イングランド戦では100回を大きく下回る80回でした。これは、2019年大会のスコットランド戦208回、アイルランド戦196回と比較するとその攻撃スタイルの違いが分かると思います。パスの種類についても、比較的距離のあるロングパスが増え、FW間やFWからBKへのつなぎのショートパスが減少していたことも分かりました。
さらに今大会ですが、パスが行われたエリアについてみてみると、敵陣(ハーフウェイラインを基準)でのパス割合が63%となり、自陣からのパスワークは少ない傾向が見られました。また、下記に詳しく記述しますが、キックを多用した今大会では必然的な結果であると感じました。
1-2. ラック
上記の図は3大会の予選プール全4試合における、1試合平均ラック回数です。パス同様、今大会は3大会中最も少ない回数となりました。2015年大会、2019年大会では120回を超える試合もあり、今大会はおよそ半分のラック数に減少しました。フェーズを重ね、ポゼッションしながら攻撃するスタイルから大きく変更していたことが見えてきました。
しかし、パス・ラック数は減少していましたが、日本が今大会で大きく伸ばしたスタッツがキック数になります。
1-3. キック
上記の図は3大会の予選プール全4試合における、1試合平均キック回数です。キック数は3大会で最も数が多く、4試合で102回を重ね、1試合平均25.5回でした。2019年とそれほど数に差はありませんが、ラック数が大きく減少していたので、攻撃のオプションとしてキックの優先順位が最上位であったと分かります。また、下記にプールDの各チームのキック数と比べてみます。
イングランドは出場全チームで最もキックを使ったチームで、1試合平均30回を超えており、特異的なチームでした。他のチームと比べると、プールD内において、日本は多くキックを使ったことが見えてきました。
ただ、準々決勝4試合の8チーム平均は26.6回であることを考えると、キック数が多かった大会であったとも言えます。いずれにしても、ラック、パスを減らし、キックを多用した今大会であったと分かりました。
さらにキックの種類を詳しく見てみます。大きく変化があったものとして、ロングキックとSHからのキックの数があげられます。ロングキックは今大会減少しましたが、SHから繰り出すハイパントが2015年から4倍、2019年から2倍になり、再獲得や中盤でのDFで自分たちのペースに持ち込みたい狙いがあったと推測します。
2. 直近3大会でのDFの変化
上記の図は直近3大会の予選プール全4試合における、1試合平均タックル回数です。今大会は3大会中で最も多い結果となりました。ラグビーにおいて、ATとDFは裏表の関係なので、AT時間が減ればDF時間が増えることに繋がります。そのため、ATのスタッツであるラック数、パス数が減った日本が、タックル数を伸ばしたことは納得がいきます。ボールを手放しDFからプレッシャーをかけていくプランであったと分かりました。また、サモア戦、チリ戦の勝利を収めた試合においても相手を大きく上回るタックルを継続したことから、今大会で日本はDF主体の運びになっていたと分かりました。
3. まとめ
これまで日本の今大会における狙いを、3大会別、他チームと比較し分析してきました。端的にまとめますと「多様なキックプランとDFプレッシャー」のスタイルであった今大会になりました。2019年でのアタックスタイルと大きく異なっていたことも、データをみることでより顕著に捉えられることができました。優勝した南アフリカをみると、決勝でのタックル数は208回、キック数38回、ラック数51回と、日本のスタッツと似通っていました。
単純に比較し、肯定することは意味を成しませんが、大会の傾向として日本のスタイルは世界と十分に渡り合える可能性を感じさせてくれました。様々な観点からラグビーを見て、これからも発信していきます。
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プロフィール:山本陽平 (Yohei Yamamoto)
2000年生まれ神戸市出身。現在は奈良教育大学在籍中。高校からラグビーをはじめ、現在はプレイヤー・コーチ・アナリスト・ラグビー普及活動と多岐に渡る。ラグビーの素晴らしさをもっと広めたいと考えながら日々活動中。