【ラグビーワールドカップ特集】過去2大会におけるラグビー日本代表を分析 - 第3弾:日本の「TRY」攻防における特徴

2023.09.14 written by Yohei Yamamoto

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第三弾における今回は、日本の「TRY」攻防について分析します。この記事では、2015年・2019年RUGBY WORLD CUPの2大会をSPLYZA Teamsに利用して、日本のTRYにいたった起点、TRYをされた時の起点について分析し、2大会のJAPAN RUGBYについて迫っていきます。



1. 日本のTRYと被TRY

まず、その単純なTRY数ですが、3勝1敗であった2015年はTRY数が敵のTRY数より少なく、4勝0敗であった2019年ではそれが転起していることは、日本の強さを良く表していました。



また、対戦相手別にTRY数をみてみると、TRY数と勝利は完全に比例するわけではないことが分かります。2015年では、南アフリカ、2019年ではアイルランド、いずれのチームにもTRY数は上回られていますが、試合には勝利したことがその理由と言えます。TRY後のconversion kickやペナルティー獲得後のpenalty kickを積み重ねていくことも昨今のnationalレベルの試合では鉄則となっていますが、それを裏付けることが、この2試合からも見えてきました。





2. TRYの「起点」「エリア」「フェーズ数」

次に、各TRYにおける「起点」についてみてみます。

データでは、上記のようにグラウンドを4分割し、色付けを行っています。下記のデータでは、左側の縦軸がTRYに至った際のプレー起点であり、横軸がその起点のグラウンドにおける位置を表しています。数字はTRY数、()内の数値については、TRYに有したフェーズ数を表しています。





2015年の特徴ですが、9本中6本がBLUEゾーンに侵入してから生まれていることが見て取れます。これはラグビーの競技性を考えると必然ではありますが、敵陣でのプレーがスコアに効率よく結びついていたと言えます。ただ、BLUEゾーン突入回数とTRY数を分析することもその効率性を示すために必要であると感じました。

また、ラインアウトモールからのTRYが3つあり、かなりの強みとしていました。エリアを進めながら、敵陣でのモールは1つ大きな武器として躍動しました。

2019年をみてみます。2015年ではBLUEゾーンからのTRY割合が最も大きかったですが、2019年ではYELLOWゾーンが最も多いことが分かります。フェーズ数を詳しく見ると、13フェーズが2回、7フェーズ、5フェーズが1回ずつ、1フェーズが2回と、その数に違いが見られます。長いフェーズを継続し続け、ラン・キャリーによってゴールラインに達している場面、シーケンスと呼ばれる全員の動きをある程度決めた流れで少ないフェーズで取りきるオプションの2つが混在していたと推測します。

また、大きな特徴は、ターンオーバーやキックカウンターからのTRYが増えていることがあげられます。ターンオーバーやキックカウンターはアンストラクチャーと呼ばれる、DFが整っていないカオスな状態であることが多いです。その状態から、2019年ではボールを外に運び、繋ぎながら、一気にトライまで運ぶ形が見られました。まさに、FW・BK一体となり、高いハンドリングスキルを保持していた2019年の象徴であると言えます。

3. 日本の被TRY






このデータは日本がTRYを取られた際の起点と、エリアを表しています。OppTRYは、敵チームの強みや特徴が出やすく、一概に日本の弱みであることは言い難いと感じます。しかしながら、エリアにはその特徴があり、2015年2019年ともREDゾーン、GREENゾーンの起点が90%に迫ります。すなわち、自陣にいるほど被TRYリスクが高まる、ラグビーの原則が見られました。

2015年では、ターンオーバーやキックカウンターのアンストラクチャーでの被TRYが6本ありましたが、2019年では3本に減少したことは、十分な対策がなされ改善されていました。

4. まとめ

日本は2015年では、敵陣でのラインアウトモールを主軸にしていましたが、2019年ではアンストラクチャーからの柔軟なATプランが特徴でした。また、両大会とも TRYに際してのフェーズ数は様々であることが分かり、いずれも継続性と一発で取りきることをバランスよく考えていたのではないでしょうか。

このように、TRYに至るまでに着目することで日本の2大会の得点スタイルがよく見えてきました。TRY以外に、ゴールキックはかなり勝敗に直結していることも興味深く感じました。

2023年では、どのようなTRYが生まれるか注目です!

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プロフィール:山本陽平 (Yohei Yamamoto)

2000年生まれ神戸市出身。現在は奈良教育大学在籍中。高校からラグビーをはじめ、現在はプレイヤー・コーチ・アナリスト・ラグビー普及活動と多岐に渡る。ラグビーの素晴らしさをもっと広めたいと考えながら日々活動中。