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第98回全国高校サッカー選手権大会:スタッツから見るベスト8チームの特徴

2020.01.28 written by Gaku Morita(SPLYZA Inc.)

令和初の選手権となった第98回全国高校サッカー選手権は、青森山田の連覇を阻止し、静岡学園の優勝で幕を閉じました。準決勝には矢板中央、帝京長岡が進出し、準々決勝には昌平、四日市中央工、仙台育英、徳島市立が進出して、それぞれが個性的なスタイルで試合を戦い、大会を大いに盛り上げていました。ここでは、準々決勝に進出したベスト8チームについて、それぞれのスタイルをスタッツからまとめていきます。

▼取得したデータ(前進するプレーとそれらのプレー位置)

スタイルは第97回大会の手法と同様に、プレー数とプレー位置の偏差値から、「ボール保持」or「ボール非保持」、「ハイプレス」or「ブロック」と分類していきます。(第97回大会の手法はこちら)

それぞれのチームが各試合をどのようなスタイルで戦っていたのか?を中心にデータから見られる特徴などについてまとめてみました。

静岡学園

大会を通じて6試合で19得点と圧倒的な攻撃力、決勝まで無失点という高い守備力を誇ったチームでした。決勝、準決勝、準々決勝でも、ボール保持から攻撃を仕掛け続け、相手ゴールを脅かしていました。スタイルの位置付けとしては「ボール保持型」「ハイプレス型」と分類できます。


特に準決勝のvs矢板中央では、ボールを保持して攻め続け、ボールを奪われたらハイプレスでボール回収という展開で試合が行われていました。

準々決勝から3試合を通じて、システムは4-5-1でスタートし、スターティングメンバーはほぼ固定されていましたが、決勝ではそれまで先発していた12番の岩本選手ではなく、9番の加納選手がFWとして先発しました。


18番の藤田選手に替わって19番の草柳選手が入るとシステムが変わります。青森山田、矢板中央との試合で途中投入されていました。草柳選手は試合の流れを変えるためのキーマンであったように思います。

静岡学園はボール保持のスタイルで、過去3試合DFライン全員が積極的に攻撃に絡んでいました。DF陣はボールを持った際にクリアせず、攻撃につなげるプレーを選択していました。


中盤の選手で最も攻撃に絡んでいたのは8番の朝倉選手でした。鹿島に内定している10番の松村選手が今大会注目されていましたが、DFラインの4選手、8番の朝倉選手の貢献度がグラフから読み取れます。

攻撃の両サイドを比較すると、準々決勝(vs徳島市立)、準決勝(vs矢板中央)では右サイド、決勝(vs青森山田)では左サイドの方が割合が大きかったです。


準々決勝、準決勝では10番の松村選手が位置する右サイドにボールが集まる傾向でしたが、決勝は左サイドの方が割合が高かったです。青森山田が松村選手を抑えていたことが数字に現れたのかもしれません。

静岡学園は、決勝まで無失点の守備を支えたのはもちろん、攻撃の起点となってチームに貢献していたのはDFラインに位置した3番の阿部選手、4番の田邊選手、5番の中谷選手、15番の西谷選手でした。6試合で19得点と圧倒的な攻撃力を誇った静岡学園でしたが、このDF陣があってこそだったと言えます。

青森山田

前大会は、檀崎選手、バスケス・バイロン選手の両サイドアタッカーを活かすスタイルで見事に優勝した青森山田でしたが、今大会はスタイルを変えて戦っていました。高い位置からプレスをかけて、よりダイレクトにゴールに向かう戦い方でした。スタイルの位置付けとしては「ボール非保持型」「ハイプレス型」と分類できます。


準々決勝、準決勝では高い位置でプレーできていましたが、決勝では比較的高い位置でプレーできていなかったです。理由は最後までハイプレスを継続できなかったのか、準々決勝(vs昌平)、準決勝(vs帝京長岡)を含めて後半に失点する傾向が見られた3試合でした。

準々決勝から3試合を通じて、システムは4-2-3-1でスターティングメンバーは同じ。


3試合全てで、13番の得能選手が、8番の瀬川選手、11番の後藤選手に替わって途中から入っています。試合状況に応じてどちらかのサイドと交代するのが今大会の青森山田の一つの流れとしてありました。

3試合を通じて多く前進するプレーに関わっていたのは10番でキャプテンの武田選手でした。チャンスを作ったり、シュートを放ったりなど、攻撃の中心にいたことは間違いありません。


決勝(vs静岡学園)、準決勝(vs帝京長岡)では6番の古宿選手も多くプレーに関わっており、攻撃の起点になっていました。準々決勝(vs昌平)ではプレーは多くなかったですが、ボランチより前の高い位置でボールを奪い攻撃につなげる頻度が高めに。

攻撃位置としては、決勝は中央に集中し、準決勝、準々決勝は右サイドが最も割合大でした。


流動的に動く武田選手がどこに位置をとるかによって、攻撃位置の割合が変わるようです。

青森山田は、昨年とは異なるボール非保持でハイプレスと分類できるスタイルでした。浦和レッズ内定の10番でキャプテンの武田選手、横浜FC内定の6番の古宿選手が攻撃にしっかり絡み、強さを見せて決勝に進出しました。 ただ、準々決勝(vs昌平)、準決勝(vs帝京長岡)、決勝(vs静岡学園)で、前半に先制点を奪うも後半は失点を許すなど、前半から後半にかけて失速する傾向はありました。ハイプレスを選手権の過密日程の中で90分やり切るのはフィジカル的に厳しい部分もあったように映りました。

矢板中央

昨年はベスト8に進出し、今年は、初戦2失点、2回戦は1失点、3回戦、4回戦は無失点と守備は徐々に調子を上げベスト4に進出しました。しっかり守りながらも得点を決める能力の高さを見せ、引いて守ってからのカウンター、前でプレスをかけて奪って攻撃につなげるシーンも多くみられました。2試合を平均すると前大会のスタイルを維持した「ボール非保持」「ブロック」として分類できます。


準々決勝はプレスが機能して高い位置でのボール奪取が多くみられました。準決勝は高い位置でプレーする機会は少なかったものの、後半アディショナルタイムまで無失点に抑える守備力の高さを見せていました。

準々決勝、準決勝とシステム4-4-2でスターティングメンバーは2試合同じ。


途中からFWの一角として21番の西村選手に替わり、10番の久永選手が入るという流れがありました。

2試合共に8番の柿崎選手が最も多く前進するプレーに関与。


準決勝(vs静岡学園)では静岡学園に押し込まれ、FWの選手がプレーする機会は少なかったです。一方、準々決勝(vs四日市中央工)ではボランチから前の選手が多くプレー。

攻撃エリアは2試合バラバラで、中央、サイド等どのエリアから攻めるという共通点は見えず。


自陣1/3でのプレーはロングパスが2試合共におよそ5割でした。意図的にロングボールを狙っていたことがグラフに現れています。

矢板中央は、昨年と同様にボール非保持でしっかりとした守備からカウンターを狙うスタイルが継続されていました。この2試合のデータからは、前にプレスをかけて奪う、自陣でブロックを作って守るという2つを上手く使いこなしているように見えました。準決勝では美しい陣形で素晴らしい守備を見せていましたが、この手法ではデータとして表れないのが残念です。一貫して「ボール非保持」でプレー位置は「ブロック」時々「ハイプレス」というスタイルの2試合でした。

帝京長岡

準決勝までの3試合で9得点で無失点、高い攻撃力と守備力を見せて勝ち上がってきたチームでした。昨年は選手達の技術の高さを生かしたスタイルで戦っていましたが、今年も昨年と同様のスタイルで技術や連携に更に磨きがかかっていました。2試合を通じて「ボール保持」「ハイプレス」と分類できます。


準々決勝は数字的には去年とほぼ同じスタイルで、準決勝はより細かくプレーし、ボール保持から攻撃を仕掛けていました。

システムは3バックでスタート、スターティングメンバーは2試合同じでした。


スタートは3バックでしたが、2番の酒匂選手が右サイドバックに入り、3番の吉田選手が左サイドバックに入ることで4バックになるシステム変更が2試合を通じて行われていました。

準決勝(vs青森山田)では3番の吉田選手、7番の田中選手が攻撃に多く関わっていました。準決勝(vs仙台育英)では10番の晴山選手が最多。


準決勝(vs青森山田)では、準々決勝(vs仙台育英)よりもFW陣にボールが渡るシーンは少なめ。

2試合に共通して両サイドよりも中央でのプレーが多く、相手守備陣に対して中央突破するチームとしての狙いが見えてきました。


自陣1/3でのロングパス、タテパス、ドリブルの比率も2試合似通っています。フィールド上でチームとして、どういったプレーをするか?という共通認識があったのかもしれません。

帝京長岡は昨年と同様ボール保持のスタイルで選手権を戦っていました。前大会よりも、タテパスなどのプレー回数は増え、チームとしての技術力に磨きがかかったと言えそうです。また、準々決勝、準決勝の2試合のプレー比率、プレーエリアは似通っており、チームとしてロングパスはあまり使わずに、中央から攻めていく狙いが見えてきました。帝京長岡は「ボール保持」というスタイルを貫き、技術を活かして中央突破を狙うという特徴が見られたチームでした。

準々決勝で敗退した4チームについて

準々決勝の1試合のデータを元にしたスタイルマップです。四日市中央、昌平の技術を活かした攻撃、仙台育英のハイプレス、徳島市立の堅守速攻など自分たちのスタイルを持った個性豊かなチームが揃っていました。


スタイルマップからは、四日市中央工は「ボール保持」「ハイプレス」、昌平は「ボール保持」「ブロック」、仙台育英は「ボール非保持」「ハイプレス」、徳島市立「ボール非保持」「ブロック」として分類できました。

まとめ

第98回全国高校サッカー選手権では、静岡学園、帝京長岡、四日市中央工、昌平などボールを扱う技術の高さを見せていました。青森山田、仙台育英のハイプレスから高い位置でボール奪取を狙う姿勢は素晴らしかったです。また、矢板中央、徳島市立のゴール前での堅守は見事でした。


また、ベスト8チームの平均値を、前大会(第97回)と今大会(第98回)で比較すると「ボール保持」「ハイプレス」という傾向が顕著に。


今大会は優勝校である静岡学園に象徴されるように、ボールを扱う技術を誇るチームの活躍が目立ちました。また、青森山田や仙台育英のように、ボール非保持時は前から奪いに行くハイプレスも大会の傾向としてあったと思います。

これらは近年のサッカーのトレンドが反映されていると言えそうです。果たして今後はこのトレンドが続くのか。今後のサッカーの流行にも注目して見ていこうと思います。


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第98回大会:スタッツから見るベスト8チームの特徴
決勝:静岡学園 vs 青森山田
準決勝:静岡学園 vs 矢板中央
準決勝:青森山田 vs 帝京長岡
準々決勝:矢板中央 vs 四日市中央工
準々決勝:徳島市立 vs 静岡学園
準々決勝:昌平 vs 青森山田
準々決勝:帝京長岡 vs 仙台育英

プロフィール:森田岳 (Gaku Morita) 分析エバンジェリスト

自動車業界出身で社会人サッカーチームの運営/監督/選手経験を持つ。サッカーに関するスタッツ・客観的なデータをこよなく愛し、戦術ボードアプリ「Tactical Board」の開発者でもある。尊敬する指導者はマヌエル・ペジェグリーニ。

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