第99回全国高校サッカー選手権大会:スタッツから見るベスト8チームの特徴

2021.01.15 written by Gaku Morita(SPLYZA Inc.)

応援制限、そして無観客開催など例年と大きく異なる環境の中で執り行われた第99回全国高校サッカー選手権大会。決勝戦は11年前と同じ対戦カード「山梨学院vs青森山田」ということでも注目を集めた。山梨学院の優勝で幕を閉じた今大会、決勝以外でも多くの熱戦が繰り広げられ、出場チームがそれぞれ個性豊かなスタイルを見せてくれた。当記事では準々決勝以降の7試合に絞ってゲーム中のイベントデータをタグ付けにより取得し、山梨学院・青森山田・矢板中央・帝京長岡・富山第一・昌平・堀越・市立船橋の8チームの特徴を分析していく。

▼準決勝以降の7試合のデータおよびマッチレポートは以下
決勝:山梨学院 vs 青森山田
準決勝:矢板中央 vs 青森山田
準決勝:帝京長岡 vs 山梨学院
準々決勝:堀越 vs 青森山田
準々決勝:山梨学院 vs 昌平
準々決勝:矢板中央 vs 富山第一
準々決勝:市立船橋 vs 帝京長岡

▼各試合から取得したデータのサマリー(前進するプレーとそれらのプレー位置)


スタイルは前大会(第98回)、前々大会(第97回)の手法と同様に、プレー数とプレー位置の偏差から「ボール保持」or「ボール非保持」そして「ハイプレス」or「ブロック」と分類していく。

※過去大会の総括記事はこちらから→<第98回大会><第97回大会

山梨学院

今大会優勝を果たした山梨学院。大会6試合のうち1点差での勝利が3回、そして3度のPK戦で勝ち上がるという一発勝負のトーナメント戦で必要不可欠な勝負強さが光った。準々決勝以降の昌平と帝京長岡、青森山田に対しては「ボール非保持」のスタイルを貫く徹底っぷり。なおその3試合のデータから割り出されたチームの平均からは「ボール非保持型」+「ブロック型」として分類される。



強固な守備ブロックをベースに奪ってからの直線的に速いカウンター、FKやCKからの精度の高いセットプレー、それらに加えてロングスローでチャンスメイクを行うのが基本戦術。高い位置でのアグレッシブな守備や、ゴール前での粘り強い守備など、相手や状況に応じて柔軟にやり方を変えることができるのも強みだった。



フォーメーションは4-4-2表記。決勝では4番の板倉が怪我から復帰しメンバー入りしたが、それ以外は同じスタメンで3試合戦っていた。

この3試合全てで、途中から11番の広澤に替わり18番の山口、そして8番の新井に替わり19番の浦田が投入。毎試合、チームスタイル的に消耗が激しくなる両サイドのプレーヤーが優先的に入れ替えられていた。



また、選手別グラフでは8番の新井が3試合全てにおいて前進するプレーに多く関与。ロングスローで注目を集めていたものの、フィールド内でも攻撃の要として機能していた。

4-4-2がスタートポジションであったが、10番の野田は低いポジションを取ったりサイドに流れるなど比較的自由に動き、DFラインや中盤からボールを引き出して、攻撃に繋げる役割を担っていた。



エリア別グラフを見ると自陣1/3ではロングパス主体でボールを配給し前進。攻撃はどちらかといえば右サイドからの攻撃の割合が多め。特に帝京長岡戦では右サイドからの攻撃の割合が多く、この試合ではチームとして意識的に狙っていたとも読み取れる。

総括すると(山梨学院は)相手を抑え込める高い守備力を持ちながら、毎試合得点を奪いきる攻撃力も兼ね備えていた。強固でありながら柔軟な組織を持つ、優勝に相応しいチームだったと言える。

青森山田

青森山田は前大会に続き準優勝に終わったものの、今大会は5試合で17得点と比類なき高い得点力を見せた。堀越戦と矢板中央戦、山梨学院戦の3試合の平均データからは「ボール保持」+「ハイプレス」のスタイルに分類されている。



ハイプレスをベースに高い位置でボール奪取を狙い、奪ってからは早い展開でサイド攻撃、タッチラインからはロングスローという必殺パターンでゴールを量産。なお準優勝に終わった第98回(前大会)、優勝を果たした第97回と比較すると、今大会は以前と異なるスタイルで強さを見せていた。



フォーメーションは4-1-4-1。この3試合全て同じスターティングメンバーで、ゲーム途中から突破力のあるサイドプレイヤーである2選手(11番の藤森+16番の内間)が投入されるのも固定。

選手別グラフでは、7番の安斎が試合全てにおいて「前進するプレー」に最も多く関与。矢板中央戦ではハットトリックを決めるなど、攻撃の中心を担っていた事がグラフに現れている。



また堀越戦と矢板中央戦では5番の藤原が多くボールに関与しているのに対して、山梨学院戦ではほとんど関与できていないことがグラフから読み取れる。これは試合後の山梨学院の監督インタビューでも明らかになっていた事だが「キープレーヤーである藤原にマンマークを付けて青森山田の"ボールの出口"を徹底的に潰す」という狙いが影響したと考えられる。山梨学院側のスカウティングの勝利とも言えるだろう。



エリア別グラフを見ると「自陣1/3でのロングパス割合」が堀越戦と矢板中央戦と比較した場合、山梨学院戦では著しく低下している。これもCB藤原が抑えられ、ロングパスを前線へ供給する量が減ったことが影響していると考えられる。

堀越戦、矢板中央戦ではCB藤原の素早く正確なサイドへのロングパスが得点のきっかけになっていただけに、山梨学院戦では得手を潰され従来の圧倒的な攻撃力は激減。予期せぬ展開にピッチ上でも少なからず混乱が生じていたはずだ。

しかしあの青森山田である。選手個人個人が極めて高い水準の技術とフィジカルを持ちあわせ、さらには全員が息つく間もなくハードワークを繰り返すことでゴールに迫るスタイルで数多のチャンスを演出、下馬評通りの強さを見せていた。惜しくも2年連続の準優勝となってしまったが、次回大会以降も圧倒的な存在感で相手チームに立ちはだかることだろう。

矢板中央

前大会に続き準決勝に進出した矢板中央。得点力はベスト4に残ったチーム中では最も低いものの、初戦から高い守備力をベースに接戦を制し勝ち上がる。富山第一と青森山田の2試合のデータから「ボール非保持」+「ブロック」のスタイルに分類。



第97回(前々大会)、第98回(前大会)と継続してしっかりとした守備から入り、シンプルにゴールを狙う「堅守速攻」。このチームスタイルを貫いて2年連続で選手権ベスト4進出と結果を残している。



フォーメーションは4-4-2。準々決勝と準決勝では2トップの一角と右サイドにスタメン変更あり。また、前半の早いタイミングで9番の星→続いて8番の小川が入るという交代策が2試合続けて行われていた。

選手別グラフでは、FWの一角と右サイドの選手があまりプレーに関与していないようにみえるが、これは前途した早めの交代の影響で当該選手の出場時間が少ないためである。



全体としてはかなり守備的なチーム。FWで10番の多田がボールによく関与。チームとしては青森山田戦で7本、富山第一戦では16本のシュートを放つなど、ボールを前に運んでシュートチャンスを演出。



自陣1/3ではロングパス主体でシンプルに攻め、相手に合わせてポジションチェンジや選手交代を使って狙いのサイドを変えていた。青森山田戦では途中交代で入った8番の小川が位置した左サイドからの攻撃割合が高め。

今大会では3試合で僅か1失点と強固な守備を見せて準決勝まで勝ち上がったものの、青森山田相手に5失点という結果で大会を終えた。今大会で課題となった部分をどう乗り越えるのか、次回以降の大会にも注目したい。

帝京長岡

前大会に続きベスト4となった帝京長岡。流れるようなパスワークからの攻撃を武器に得点を重ね準決勝に進出。市立船橋、山梨学院との2試合のデータの平均から割り出されたスタイルは「ボール保持」+「ハイプレス」に分類。



直近の選手権では第97回はベスト8、第98回ではベスト4という好成績で、チームスタイルは継続して「ボール保持」がベースとなっている。



フォーメーションは4-4-2で、スタメンは2試合とも固定。試合展開に合わせて流動的なポジション変更や選手交代が行われるのが特徴。山梨学院戦ではFWとしてスタメン出場した9番の酒匂が、前半途中から右サイドハーフ→後半から右サイドバックへ変更、そのあと同点に追いつくという展開もあった。

選手別グラフを見るとほぼ全員がボールに絡んでプレーしている事がわかる。試合に出場したメンバーがバランスよくボールに関与しているため、相手としては掴みどころがなく厄介でもある。



この中で特に前進するプレーが多かったのは14番の川上。2試合通じて最も多く、山梨学院戦ではMFながら2得点の活躍でチームを牽引。

エリア別グラフを見ると自陣1/3でのロングパスの割合はあまり高くなく、主にショート〜ミドルレンジの縦パスでボールを前進させていた。



攻撃の傾向は特に偏りはなく、時間帯や相手の状況に合わせてパスやドリブルでスペースに侵入。守備を崩してチャンスを作る攻撃が多く見受けられた。

以上、帝京長岡はパスワークを主軸とした「ボール保持」スタイルで今大会も準決勝まで勝ち進む。そんななか2度の逆転勝利と、山梨学院戦でも勝負強さを見せた。PK戦で惜しくも決勝進出とはならなかったが、大会を重ねるたびに成績が上向いているチームでもあるため、次回以降の大会では念願の決勝進出が期待される。

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準々決勝で敗退した4チーム(富山第一・昌平・堀越・市立船橋)について

準々決勝で行われた計4試合のデータをもとにして割り出した「チームスタイル」のマッピングは以下。



あくまで1試合だけのデータであるため参考程度に。昌平と市立船橋は「ボール保持」+「ブロック」、富山第一は「ボール非保持」+「ハイプレス」、堀越は「ボール非保持」+「ブロック」と分類された。

まとめ

最終的には山梨学院の「ボール非保持型」+「ブロック型」スタイルが制した大会に。



なお"ベスト8チームの平均スタイル"を前大会(第98回)と今大会(第99回)で比較すると、昨今において高校サッカー選手権のトレンドにもなりつつあった「ハイプレス」の傾向は若干弱まる結果に。



今大会では試合経過や時間帯、相手のやり方に合わせて都度、戦い方を調整し結果を得る様子が傾向として色濃く出ていた。現在の"世界のサッカーのトレンド"と同様に、自分たちのスタイルをベースにしつつ、試合の中で柔軟に対応しそれらに順応できるかどうかが、今後はより高いレベルで要求されるのかもしれない。


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決勝:山梨学院 vs 青森山田
準決勝:矢板中央 vs 青森山田
準決勝:帝京長岡 vs 山梨学院
準々決勝:堀越 vs 青森山田
準々決勝:山梨学院 vs 昌平
準々決勝:矢板中央 vs 富山第一
準々決勝:市立船橋 vs 帝京長岡

プロフィール:森田岳 (Gaku Morita) 分析エバンジェリスト

自動車業界出身で社会人サッカーチームの運営/監督/選手経験を持つ。サッカーに関するスタッツ・客観的なデータをこよなく愛し、戦術ボードアプリ「Tactical Board」の開発者でもある。尊敬する指導者はマヌエル・ペジェグリーニ。

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