第100回全国高校サッカー選手権大会:スタッツから見るベスト8チームの特徴
2022.01.18 written by Gaku Morita(SPLYZA Inc.)
新国立競技場で初めて試合が行われ、100回という節目の大会となった第100回全国高校サッカー選手権大会。青森山田が驚異的な強さを見せ優勝した今大会ですが、高川学園の”トルメンタ”、関東第一の準々決勝の劇的勝利、そしてコロナによる準決勝の辞退、など様々な話題が生まれました。当記事では今大会の中で準々決勝以降に行われた6試合に絞ってイベントデータをタグ付けによって取得し、そのデータから、青森山田、大津、高川学園、関東第一、静岡学園、前橋育英、桐光学園、東山の8チームに関して、データから今大会の特徴を見ていきます。
▼準決勝以降の6試合のデータおよびマッチレポートは以下
・決勝:大津 vs 青森山田
・準決勝:高川学園 vs 青森山田
・準々決勝:関東第一 vs 静岡学園
・準々決勝:青森山田 vs 東山
・準々決勝:桐光学園 vs 高川学園
・準々決勝:前橋育英 vs 大津
▼まずは今大会6試合のデータを散布図にまとめました。
スタイルは前大会(第98回)、前々大会(第97回)の手法と同様に、プレー数とプレー位置の偏差から「ボール保持」or「ボール非保持」そして「ハイプレス」or「ブロック」と分類していきます。
※過去大会の総括記事はこちらから→<第99回大会><第98回大会><第97回大会>
青森山田
青森山田は「ボール保持 + ハイプレス」と分類されるスタイルで準々決勝からの3試合を戦ったチームでした。
システムは4-4-2でスタートメンバーは固定、途中から7番の小原選手、18番の小湊選手を投入という流れは3試合に共通していました。
3試合共通してダブルボランチの10番松木選手、6番宇野選手の影響の大きさが目立ちました。決勝、準決勝では両サイドの攻撃割合が高いですが、準々決勝の東山戦では中央の割合が最も高かったです。
3試合で12得点(決勝4得点、準決勝6得点、準々決勝2得点)という凄まじい得点力の青森山田でしたが、そのうちの8得点はセットプレーが起点となっており、一度止まってからのプレーの質の高さを示していました。また、ヘディングから6得点と空中戦の強さも同時に見せていました。
全体として、自陣では比較的シンプルにボールを前に運び、中央の選手を起点に両サイドからサイドバックも攻撃に絡み攻撃を仕掛け、奪われたら強度の高いプレッシングでボール奪取、プレーが切れたら得意のセットプレーで得点を狙うという展開が多かったです。
青森山田の過去3大会のスタイルの比較
今大会(第100回)は前大会(第99回)と同様に「ボール保持+ハイプレス」と分類できますが、4-1-4-1から4-4-2に変更されプレス位置が少し低くなり、攻撃の複雑さは少し高まりました。前大会よりも、バランスをとりながらテクニカルにプレーするスタイルへの変化があったと言えそうです。
前々大会(第98回)は4-2-3-1のシステム、「ボール非保持+ハイプレス」として分類されるスタイルで決勝まで勝ち上がっています。毎大会、強度の高い攻守とセットプレーの強さを備えつつ、選手の個性を生かした柔軟なチーム作りが行われ、スタイルを変えながら結果を出し続けている青森山田の凄さがデータからも見て取れます。
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大津
準々決勝、決勝は「ボール非保持+ブロック」のスタイルで戦ったチームでした。準々決勝はこのスタイルで前橋育英に見事勝利。決勝は青森山田相手にゴール前に侵入することが難しく、シュート0本で試合を終えました。
システムは4-4-2。スタートメンバーは準々決勝から決勝で14番の田原選手から3番の日高選手へ。前線の立ち位置にも変更がありました。
ダブルボランチの10番森田選手と6番薬師田選手は両試合で積極的に攻撃に絡んでいました。前橋育英戦と比較して青森山田戦では特に9番の小林選手がうまくプレーさせてもらえていなかったことがデータから読み取れます。
公立高校ながら質の高い攻守で、中部大第一、東福岡、山梨学院、前橋育英と強豪校を次々と破り決勝までたどり着いた大津でした。準決勝の関東第一戦が中止になってしまったのが残念でしたが、大会を通じて強さを示したチームでした。
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高川学園
準々決勝、準決勝は「ボール非保持+ブロック」のスタイルで戦ったチームでした。準々決勝はこのスタイルで見事勝利。準決勝は青森山田相手にゴール前に侵入することが難しく、得意のセットプレーも見せることができずに試合を終えました。
準々決勝から準決勝にかけて、システムの大幅変更とメンバーの変更(11番の林良真選手 -> 29番の武藤選手)がありました。
準々決勝では10番の林晴己選手が攻撃に最も多く絡んでいましたが、準決勝ではその割合が小さくなっていました。また、両サイドからのクロスも準決勝の青森山田戦では抑えられていたことがデータから見られます。
接戦を制して準決勝まで勝ち上がった高川学園ですが、今大会はセットプレー時に手を繋いで旋回してからゴール前に入っていく”トルメンタ”が話題となりました。奇抜なだけでなく、しっかり得点に繋げるこのセットプレーで大会を盛り上げてくれました。
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関東第一
静岡学園を相手に「ボール非保持+ブロック」の試合運びでした。押し込まれながらも1失点に抑え、一瞬の隙を逃さずに同点に追いつき最後はPK戦を制して、準決勝に進む見事な試合を見せてくれました。アクシデントにより準決勝は辞退となってしまいましたが素晴らしい試合を見せてくれたチームでした。
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静岡学園
関東第一に対して、「ボール保持+ハイプレス」で静岡学園伝統のスタイルを貫いていました。テクニックを駆使しながら猛攻を仕掛け1得点を奪いましたが、最後にカウンターで失点しPKにより敗退という結果でしたが、プレイヤーのテクニックを活かしたドリブルやパス交換はワクワクさせられました。
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東山
青森山田戦では「ボール非保持+ブロック」の戦いでした。押し込まれながらも相手ゴールを脅かすチャンスを作っており、ロングスロー先制ゴールを奪うなど今大会最も青森山田を苦しめたチームでした。青森山田の両サイドの攻撃をうまく抑え、ストライカーの名須川選手にプレーをさせない守備が効果的だったように見えましたが、PKとロングスローによって失点し、惜しくも準決勝進出を逃しました。
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桐光学園
高川学園を相手に「ボール非保持+ハイプレス」の試合運びでした。10番の三原選手が流動的に動きながら左サイドを中心にアグレッシブな攻撃で10本以上のシュートを放ちゴールに迫りましたが、あと一歩届かずという試合展開でした。最後まで足を止めずにゴールに向かう姿勢が印象的でした。
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前橋育英
大津に対して「ボール保持+ハイプレス」と分類される戦いでした。ただプレー位置は平均値に非常に近く「ボール保持+バランス」と言ったほうが正しいスタイルです。試合を通じて10番の笠柳選手を中心に攻撃を仕掛け、フィールドの幅を使って攻め立てるも最後ゴールを破れずという試合展開でした。
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まとめ
今大会は5試合で21得点、2失点という圧倒的なスコアで優勝した青森山田が強烈なインパクトを残しました。対戦相手が青森山田対策をとってくる中でもしっかり得点し、相手を抑えて失点しない戦いに驚かされました。大会ごとにスタイルを変えながらも結果を残しているこのチームが、世代交代により選手が入れ替わる中で、今後どんなスタイルに変わっていくのか、また今大会を受けて各チームがどんなことに取り組むのか、次回の第101回大会がどんな大会になるか楽しみです。
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プロフィール:森田岳 (Gaku Morita) エバンジェリスト/アナリスト
自動車業界出身で社会人サッカーチームの運営/監督/選手経験を持つ。サッカーに関するスタッツ・客観的なデータをこよなく愛し、戦術ボードアプリ「Tacbo」の開発者でもある。尊敬する指導者はマヌエル・ペジェグリーニ。
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